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ある熟女の日々
【熟女/人妻 官能小説】

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巨根の男-1

 ある日の朝、夫を送り出して食卓を片付けているときに、小指をテーブルの脚にぶつけてしまった。

 「イタっ!」

 思わず声を上げてしまう。持っていた食器をテーブルに何とか着地させて、自分はソファーに倒れ込む。いつもはスリッパをはいているのに、今日に限っては裸足だった。ズボラな振る舞いに罰が当たったのだろうか。

 誰がいるとでもないのに、わざわざ痛いと声に出した自分が滑稽ではあるが、滑稽ではあっても、ウソ偽りのない叫びでもある。なんだか久しぶりに本心から声を出したような気がする。ソファーで小指を慰めながらそんなことを想っている。

 夫と会話するときは、猫なで声というほどの声色を使ったりしているつもりはないが、どこかよそよそしい感じで話してしまっているのは自分でも否めない。

 夫とはそんなもの…と割り切っていても、出会い系で男とセックスするときも、本心から…というか、飾ることなしに話をしたり、声を出したりしたこともなかったように思う。

 男と女が互いに裸になってまぐわうというのに、いつも頭の中は冷静で、決して羽目を外すこともなく、相手が描いていたイメージに沿うように…そう、演じていただけではなかったか…。

 裸にまでなっていて何の遠慮が必要というのか。何もかも忘れて、思いのままに、本能の赴くままに、喘ぎ、叫び…狂いたい。そんなことを想ってしまう。

 今まで出逢ったことのないような男に身も心も狂ってみたい。何のしがらみもなく、気にすることもなく、ただただ、男と女…オスとメスとして交わる…まぐわう…。いい加減、いい歳ではあるけれど、この歳になってようやくたどり着いた心持ち…境地。そんな境地を誰かと共有してみたい…。

 わたしはいつもの出会い系サイトにアクセスする。アクセスはしてみたが、いつも使っているハンドルネームやメッセージは使わないで、新しく書き込むことにした。なにも飾らずに…ありのままに…。

 『50歳ですが、何もかも忘れさせてくれるようなセックスを経験したいと思っています…。身も心もリセットできるような…。この歳ですから、大きさだけがすべてではないことはよくわかっていますが、今は、経験したことのないような感覚を味わってみたい…そんな気持ちなんです。それなりに緩くなっているので、受け容れることはできると思っています。使用しているディルドは、スーパーマグナムマダムキラーです。よろしくお願いいたします』

 いつもは、何か書き込みをすると、すぐに何十件も書き込みが殺到し、それを一つ一つ吟味していくのが楽しいのだけれど、今回はさすがにすぐには返信が来ない。30分待っても落書きのような書き込みがあるだけで、まともな書き込みはない。…やっぱり、ここまで書いてしまっては、誰も相手はしてくれないのか…。

 諦めかけたとき1件のかきこみが入った。

 『はじめまして。書き込みを拝見いたしました。わたくし55歳になります。以前からわたくしのサイズを受け容れてくださる女性に恵まれず悩んでおりました。妻とは最小限の生殖のための役割を果たしてからはほとんど相手をしてもらえることもなく、仕方なく風俗で紛らわせたりしておりましたが、客商売ではない血の通ったお付き合いがいたしたく…。『SMMK』をたしなまれている同世代の女性がいらっしゃるとわかって夢のようです。是非お手合わせをお願いいたします』

 すぐに連絡を取り合い、3日後に逢うこととなった。

 待ち合わせの喫茶店に現れたのは、痩身長躯のロマンスグレー。お互い書き込みの内容が内容なだけにこちらも含めて嬉し恥ずかしの風情。でもそこは五十路の男女。

 「よろしくお願いします」
 「こちらこそお願いいたします」
 「どこにしましょうか」
 「お任せします」

 『では…』と喫茶店を出て男が先導していく。


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