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ある熟女の日々
【熟女/人妻 官能小説】

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内臓まで-1

 相手の男の性器が、夫では届かないところまで入ってくるとうれしいし、夫では得られないところまで拡げられるとうれしい。その男は長さも太さも一回りいや二回りは…と言ったらいいのだろうか、とにかく夫とは違ったし、それまで逢った男とも違った。

 男もそのことは自覚しているようで、前戯にたっぷりと時間をかけ…ているのは間違いないにしても、どちらかというと、指を何度もわたしの割れ目に添わせては、こちらが十分に潤っていて挿入できるかどうかを確かめているようだった。

 いざ入ってくるときも、ひたすらゆっくり、ゆっくりと腰を進めてくる。相手がいい歳をした年増だからか、さすがに「痛くない?」と口に出して訊くようなことはされなかったけれど。正常位でつながったけれど、これが騎乗位だったら、途中で立ち往生してしまったかもしれない。

 中を押し拡げられながら男が侵入してくる。とっくにわたしのいちばん奥まで届いているけれど、お互いの陰毛を擦り合わせるまでには至っていない。男が根元まで埋めにかかれば、ここからは言うなれば未知の領域ということになる。

 身体の中の感触はよくわからないけれど、男の先端はおそらく子宮の入り口にまで届いているのだろう。男がゆっくりと腰を進めてくると、子宮というか内臓がせり上げられていくような感覚が沸き起こってくる。ただただ相手を受け容れ、体内に納めることに専心するしかない…。

 下腹部に男の恥骨が押し付けられた気配がしたから根元まで入ったのだろう。ひとまず安堵感に包まれて、男の背中に回していた両手で肌を撫でさする。あたかも(ちゃんと全部まで入れられたわね…よしよし…)といった風情だが、そんな余裕などあるはずもなく、内臓を持ち上げられている新鮮な感覚に、わたしはひとりで興奮している。

 このまま突き動かされてはたまらないから、男にキスを求めて、舌を絡め合いながら身体はじっとしている。男は舌も肉厚で、肉の塊を上下の口で塞がれたままじっと繋がっている。両手は男の尻に回して、腰を動かし始めたりしないように制止している。

 静止しているつもりだったが、男はわたしがもっと深くつながりたいというサインを送ったものと誤解してしまったようだ。大きく開いたままのわたしの股間に腰を強く押し付けては立派な道具をさらに奥まで捻じ込もうとしてきた。内臓が喉元までせり上げられたような感じに襲われて、わたしは眉間に皴を寄せて瞼をきつく閉じている。

 男が唇を離す。鼻息の気配からわたしの表情でもまじまじと観察でもしているようだ。痛みに耐える処女のような貌をしていては興醒めだろうから…と余計な気を回して、顔の筋肉を無理に緩めてみる。男が呟く。

 「…よかった。慣れていらっしゃる」

 下腹部から食道まで男のものに埋め尽くされているような感触に(慣れてなんかいないです…)と言う声も出てこない。ただ、曖昧な笑みを浮かべるだけ。

 笑みの意味もおそらく誤解して、ついに男が腰を動かし始めた。膣の辺りが痛いことは痛いが耐えられないほどではない。それよりも内臓を上下に動かされる…というか、揺さぶられる感覚のインパクトの方がずっと大きかった。

 『かき回される』とか『かき混ぜられる』という表現の方が合っているかもしれない。

 「ヒィアっ! アヒィっ!」

 自分でもこんな声が出るとは意外に思うような、鳥の鳴き声のような声が出た。まさに思わず出た…という感じ。わたしにとっては悲鳴のはずだったが、男には喜悦の声と聞こえたようだ。腰の動きを増していく。

 「オォォォゥ…オホオオォ…」

 またしても自分でも意外な声が出てしまった。口はもはや閉じていることができずに開いているが『ア』の形ではなく『オ』の形なのだ。そして、その口の形で内臓を突き上げられるから、地の底から湧き上がってくるような、おぞましい呻き声を発してしまう。

 「いいですよ…奥さん。だからオトナの女性に限るんです」

 わたしは慣れてもいないし、だから男が思っているような『オトナの女性』でもない。未知の領域でさえずっている小鳥のつもりなのだが…。その証拠に、男に腰を動かされると声が出るのを止められない。ただ漏れ出る声がおよそ乙女の呻き声とかけ離れているだけ…。

 「オォォォゥ…オホオオォ…」

 地の底ではないけれど、お腹の中をかき混ぜられて出てくる腹の底からの声。中学生のときに、合唱の練習で音楽の女の先生がよく言っていたものだ。

 『もっとお腹で歌いなさい。お腹の底から声を出しなさい…』

 そんな記憶が頭によみがえる。何十年も前のことなのに。未知の領域の感覚は眠っていた記憶の扉も開けてくれるのだろうか…。あの頃は正真正銘のバージンだったから心に響くこともなかったけれど、今では意味もよくわかって言う通りにできるような気もする…。当時は、ほとんどおばあちゃんのように思っていた先生だったけれど、自分もほとんどその世代になってしまった。

 やがて、男が射精して動きは止まった。わたしは大の字のようになってほとんど気を喪っている。両腕は真横には広げていないからきれいな『大』の字ではないけれど…。

 …その日は時間もあったから、結局、2回も延長に応じてしまった。お昼時を挟んで…でも食事もとらずに6時間近くもホテルにいたことになる。ホテルを出るときは日もすっかり傾いていた。はじめこそ処女を気取っても、最後は騎乗位で自分が腰を振っていたのだから、我ながら浅ましいとは思うけど、『アソコ』だけではなく内臓までたっぷり愛してもらったような幸福感は癖になりそうだと思った。

 帰途に就くのが予定よりもずいぶん遅い時間になってしまったが、帰りの電車では、ついうとうとして駅を5つも乗り過ごしてしまった。


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