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鬼の棲む部屋
【ホラー 官能小説】

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鬼娘かわいい-8

鬼っ子様が入浴しているところを1回だけでいいから、思いっきり扉を開けてみたい。鬼っ子をびっくりさせてみたい。
そして、トイレや浴室の扉を正人が使用中に開けたり、のぞいたりしないように教えこみたいと思っていた。

「鬼っ子様、いいですね。残業とかで疲れた日とかお風呂入らないでそのまま眠りたい時、ありますから」

史奈はそう言って笑っている。
鬼っ子は身の穢れが溜まると眠くなる。眠らなければ、穢れを鎮められない。
穢れを鎮めて、自然の力で浄化する。それが鬼っ子の存在理由である。
愛情あふれるまぐわいの淫らな感情は、鎮めや浄化がいらず、鬼っ子にも気持ち良さを感じさせてくれる。

(人にはわからぬことじゃろう。にしても、このふたりは、いつまぐわうつもりかの?)

竹野滋の事件と逮捕、すっかりジャンキーに成り果てた片倉泰子の逮捕のあと、正人と史奈は鬼っ子様は女の子の姿なので、もともと人間だったのではないかと思い、鬼っ子様に小さな神様になる前のことをおぼえていないか聞き出してみることにした。
結婚したら、事故物件で駅が近く防音もよし、かなり家賃の安いこの部屋は鬼っ子様がついてくるので、正人のなかでは史奈と一緒に暮らしたい物件ランキングトップだが、新婚夫婦で暮らすには少し窮屈である。

「鬼っ子様って、一緒に引っ越しさせられないのかなぁ」
「神主さんが事故物件とかをお祓いしてるのは、ネット動画で見たよ。お引っ越しもできるんじゃない。神社とかだってお引っ越しするでしょう?」

正人と史奈はまだセックスをしたりはしていないが、史奈が毎週、休日に通って来ていて通い妻のような雰囲気となりつつあった。

「スヤブ湖というそれは大きな湖があっての、とても澄んだ水にきらきらと光がきらめいて美しいの湖なのじゃ」

しかし、その湖に7歳となった巫女の女の子を生きたまま沈めて捧げなければ、おそろしい祟りがあるという。
鬼っ子様の母親が、神官で水の神の祟りを鎮める儀式を行っていた。鬼っ子様は神官の跡継ぎとして修行していた。

「腹違いの妹がおっての。それはかわいい子てあったよ。水神の蛇神様の贄の巫女に選ばれてしまったのじゃ」

妹を助けるために鬼っ子様は、贄の巫女のふりをしてスヤブ湖に、縄で縛られて重しの大石もつけられ、湖の真ん中で舟から飛び込んだらしい。
父親がその隙に妹を湖のある村から、双子の山に連れて逃げて隠れることになっていた。

「妹がどうなったかはわからぬ。妹は巫女様と呼ばれて名前もなかったのじゃ」

その時の白装束の湖に身投げした時の姿のまま、鬼っ子様としてここに気づいたらいたらしい。これは正人の想像だが、鬼っ子様が見た光景の話から、空襲で焼かれたあたりの時代に鬼っ子様としてあらわれたと思われる。

「人がたくさん死んでおった。穢れを鎮め清めるために呼ばれたのかもしれぬ」

鬼っ子様のいた土地にアパートが建てられたということらしかった。

「引っ越しさせられるかな?」
「ん〜、この土地の土を植木鉢に入れて持って行くとか、ダメかな?」

鬼っ子様が寝袋で眠ったあと、正人と史奈は小さなかわいい神様のお引っ越しについて、まじめに話し合っていた。

「ええ、人柱といって、祟り神を鎮めるために生け贄を捧げる悲しい風習がございました」

正人は神社に行って、鬼っ子様の引っ越しができそうな人を探すことにした。
神社の人から、歴史に詳しい大学教授、大学教授から、お寺の住職というぐあいに、正人と史奈はいろんな人に話を聞いてまわった。
お祓いをお願いしたい人はいるが、一緒に連れて引っ越しをしたい人はめずらしい。さらに、鬼ではなく、人柱の風習で生け贄にされた巫女が神となったものではないかと思われる。
アパートの建つ土地には、終戦直前の時期に大空襲はあった記録が残っていた。
しかし、人柱の風習があった記録はないので、どうして鬼っ子様があの部屋にいるのか、どうも話がつながらない。

(引っ越しをしてきた神様ってことだったら、また引っ越しできそうだ!)

鬼っ子様の引っ越しに対して、正人はかなり前向きな考えだった。

「もしも、その土地をお護りいただいている神様でしたら、動かしたりなさるとその土地を護る神様がいなくなられてしまわれるのでは。それに神様の姿は人が見ることは、神様のお力がかなり強すぎると思われますので、あまりよろしくないかと」
「あのですね、毎日、部屋で見てるんですけど、俺、すごく元気にすごしてますよ!」

史奈も不動産関係から、家を建てる時にお祓いを依頼する神主さんなどに連絡を取って、正人が会って話が聞けるように積極的に準備してくれた。

祟りを鎮めるために神社などを建て、怨霊から神様になってもらうことや、多くの人が亡くなった慰霊のために神社を建てる風習について、正人は話を聞かせてもらうことができた。だから、神様を引っ越しさせたいと相談された相手は、不謹慎な、とんでもない話だと、驚くのであった。

正人が出かけて聞いてきた話を、鬼っ子様が楽しみに待っていてくれるようになった。八百万の神様がいると聞いて他の仲間がいるかもしれないと、とてもよろこんでくれたり、神話のヤマタノオロチの話をすれば、初めて鬼っ子様が少し怖がる表情が見せてくれたので、正人は苦労したが、なんとなく救われた気持ちになった。

御神体というものがあって、神鏡であったり仏像だったり、刀剣であることもあると史奈と一緒に図書館で調べてわかった正人は、鬼っ子様には御神体がないから引っ越しできないのかもしれないと考えた。

「鬼っ子様そっくりの市松人形とかどうかな?」
「私たちがそのお人形を見て、鬼っ子様をなつかしむことはできるかもしれないけど、引っ越しできるのかしら?」
「御神体って壊れたりしたらどうしてるんだろう。メンテナンスが定期的に必要かも」


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