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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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レナードの覚醒(後編)-10

アルテリスとマリカとレナード。この3人は、まるで3姉妹のような雰囲気である。長女のアルテリス、次女のマリカ、三女のレナードという関係性がすでにもうできていた。

「アルテリス、目に見えない蜂なのが困ったところだがな。公爵様、異界の門が開くとすれば集落でしょうか?」
「いや、たぶん地図を見て予想するならスヤブ湖全体が、異界の門になると思います」
「それは大きいですな、見えない蜂の巣は」

異界の門が開いた時は、命がけでも祓う覚悟があるテスティーノ伯爵である。

「テスティーノ、聖騎士ミレイユ様が祓った異界の門が開いた村では、村人たちが奇妙な淫らな夢をみたという。そして満月の夜に、眠ったままて肉親や家族であろうが興奮して疲れ果てるまで交わっていたらしい」
「兄者、見えない蜂に刺されるとそうなるわけですか」
「そういうことであろうな。村人たちに兆候があらわれたら、ここにいる女性たちは人の心を感じ取る力が強い、おそらく村人たちと同じ悪夢をみるだろう」
「そして満月の夜にレナードを連れ去ろうと、僧侶リーナを連れ去ったように何かが襲ってくるわけですか」
「スヤブ湖から離れていても、この山にある家まで湖から来るだろうよ」

ストラウク伯爵はスヤブ湖に関する伝承を書庫の古文書から調べ上げていた。

「人ほどの大きさのある歩くカエルがあらわれて、レナードを湖まで連れて行くだろう」
「スト様、カエルですか?」

マリカが思い浮かべたのは、雨上がりの朝などによく見かける、葉の上にちょこんと乗っかっている緑色で小さなアマガエルだった。

「スト様、カエルはやばいね。茸と一緒で猛毒があるやつがいる」

アルテリスはそう言って眉をしかめた。

「レナードを拐われないように呪術で罠を仕掛けておく。しかし、罠を越えてきたものを撃退するには人手不足。ザイフェルトか、カルヴィーノを呼んだとして間に合うかどうか」

ストラウク伯爵とマリカ。
テスティーノ伯爵とアルテリス。
賢者マキシミリアンとセレスティーヌ。
この6人はスヤブ湖とストラウク伯爵領全体を浄化する儀式に挑まなければならない。

「公爵様、あたいたちの儀式が成功すれば、そのカエル人みたいのはいなくなるんだよな?」
「ああ、スヤブ湖に逃げていく」
「あたいたちの儀式が失敗したら、異界の門は開きっぱなしか?」
「そうなるだろう。そうなったら山からも来たカエルどもに、レナード以外は全員殺されるだろうな」
「ふうん、じゃあ、レナードを儀式の日までに鍛えないとだね!」

アルテリスがレナードをニヤリと笑って見つめた。

「アルテリス、それはレナードが危険なんじゃないですか?」
「マリカ、見た目はこんな可愛くなっちゃったけど、レナードの心はスト様や伯爵様や公爵様と同じ男なんだぞ。こっちだと女を男ががんばって守るんだろ。獣人族は女が戦うもんだけど。甘やかしたら、リーナを守れないじゃないか!」

テスティーノ伯爵はレナードをカエル人に拐われたら、儀式に成功してストラウク伯爵領を浄化できたとしても、その先で手詰まりになるとアルテリスに言いかけた時、レナードが言った。

「みんなが儀式に集中できるように、俺がこの家を守ります。アルテリス、俺を鍛えてくれ!」

レナードの発言に、賢者マキシミリアンは、親友のいかつい顔立ちと熊のような体つきを思い浮かべていた。

(そうだった、レナードはクリフトフの子だった。おとなしく守られるぐらいなら戦って死ぬほうがかっこいいとクリフトフなら言うところだな)

「レナード、特訓で骨の一本や二本折れても、私とマキシミリアンが治癒してあげます」

セレスティーヌは、マキシミリアンの親友クリフトフの性格はわかっている。レナードが、クリフトフが鍛えて育て上げた子なら、負けず嫌いも親譲りだろうと思った。

「レナード、君もクリフトフからハンターだと聞いたんだけど、ダンジョンは何階層まで行ったことがある?」
「36階層で魔犬オルトロスに勝てませんでした。だから、35階層までしか制覇していません」
「ああ、そうか。クリフトフがオルトロスは巨大な黒犬と言ってたのは、レナードが見つけたってことだったんだな」
「レナード、ダンジョンを35階層まで制覇したのかい?」

アルテリスは、ニアキス丘陵で賭けで魔石を巻き上げたハンターたちとレナードが同じか、もう少し強い腕前だと思っていたので、35階層まで制覇していると聞いてわくわくと興奮していた。

「でも今の体は、前の俺の体より筋力がないので、36階層まで行けないかもしれないですね」
「ふふふっ、レナード、いい話を聞かせてやるよ。筋力を使わない戦い方があるんだよ。それに普通に走るよりもっと素早く動けるようになるんだよ!」

アルテリスはどうやら先日に、賢者マキシミリアンから見せてもらった魔力の使い方を、レナードと一緒に習得する気なのがテスティーノ伯爵にはわかった。

(やれやれ、アルテリスの向上心はすごいものがある。私より強くなる日も来るかもしれないな)

祓いの儀式の満月の夜まで、レナードとアルテリスは一緒に修行することになった。マリカはストラウク伯爵と一緒に、奇門遁甲の陣という呪術の罠の準備をすることになった。敵を呪いの死地へ誘い込み、迷わせる呪術の罠を家を中心に張り巡らした。夜明けまでに家にカエル人が来られないようにできれば、レナードが拐われる心配はなくなる。
賢者マキシミリアンとセレスティーヌはさらに古文書を調べ、スヤブ湖に行ってみたりして調査していた。
また、途中にある村や集落に立ち寄り村人たちから変わったことはないか噂を聞き、村人たちがこれ以上、障気の影響を受けないように、結界の術を施した。

満月の夜が来るのを、王都では法務官レギーネが待っていた。

(王の力が増す満月の夜なら、きっと)


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