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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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ザイフェルトの修行と厄祓い(中編)-7

「ふむ。跡継ぎにしようと厳しく育てたのであろう。その分だけ母親に甘えられていれば良いのだが。厳しく育てられすぎると、自分の立場を認めてもらうために、他人よりも上の立場だと示そうとする癖がついてしまう。フリーデは溺愛された分だけ、苦労したようだが、お嬢様の小娘から、どうやらやっと大人の女性になれたようだ。ふふふ、芋虫が蝶になるようなものかな。マリカもテスティーノとアカネが溺愛して育てた娘で、なかなか甘えが抜けないところがある。今はさなぎといったところでな。ところで、アルテリスはアゲハ蝶みたいな娘だと思わんか?」
「ふふっ、元気いっぱいの大きな翅のアゲハ蝶ですね。スト様、私はどんな蝶でしょう?」
「今夜にでも、修行から帰ったザイフェルトに聞いてみたらいい。どんな蝶だと答えるかで、フリーデにザイフェルトが持っている印象がわかるだろう」

夫婦の交わりの話をしても生々しく卑猥な雰囲気にはならず、いろいろなことに気づかせてくれるストラウク伯爵との対話は、フリーデにとって、とても心が安らぐ時間となった。

アルテリスがアゲハ蝶なら、フリーデはどんな蝶かと聞かれたザイフェルトは、しばらく考えてから答えた。

「フリーデは、蝶というよりも蜜蜂のような気がする」
「ふふっ、私は蜜蜂ですか?」

ずいぶん可愛いらしい印象をザイフェルトは持ってくれているらしいことがわかり、フリーデは思わず笑ってしまった。
修行でとても疲れているらしいザイフェルトが、あくびを噛み殺して隠しながらフリーデと会話しているのに気づいた。軽いキスをしてから、手をつなぐとザイフェルトの隣で目を閉じた。

(おつかれさま、私の優しいザイフェルト。明日はアルテリスさんに勝てるといいですね、おやすみなさい)

ブラウエル伯爵がある密談のために、自分の伯爵領から離れていた。内政に関しては母親のジャクリーヌ婦人に任せておくほうが、ブラウエル伯爵にとっては都合が良い。自分から波風を立てる必要は
ないという考えであった。祖父の代から進められているターレン王国を強国として、ゼルキス王国を侵略する計画は、ジャクリーヌ婦人も有力な賛同者である。
父親のケストナー伯爵はバルテット伯爵と手を組んで、ターレン王国の軍部強化と実権の掌握を狙っていたのは、ジャクリーヌ婦人から聞かされていた。
52歳のジャクリーヌ婦人は、年齢より5歳は若く見える。貴族暮らしで畑仕事など一切無縁で、手指や肌は同年代の村人に比べたらかなり若々しく保たれていた。34歳のブラウエル伯爵に伴侶や子
がいないのは、ジャクリーヌ婦人からみて文句をつけようがない高貴な女性が見つからないからだというのが、伯爵領内で囁かれている噂である。これは間違ってはいない。今までの縁談は、すべてジャクリーヌ婦人に花嫁候補の女性たちが気に入られずに破談している。
ブラウエル伯爵は、男色家であることを隠していた。ジャクリーヌ婦人の選り好みの厳しさのおかげで、うまく隠すことができていた。腹違いの妹フリーデを父親のケストナー伯爵はブラウエルと婚約させるつもりだったことは、ジャクリーヌ婦人は知らないことだが、ブラウエルは父親のケストナー伯爵から、亡くなる直前にひそかに聞かされていた。
ブラウエル伯爵が、フェルベーク伯爵との逢瀬のために自領を留守にしている間に、リヒター伯爵領からベルツ伯爵領を通り抜けて、牡のリングを装着された呪われたロイドがジャクリーヌ婦人の暮らす豪華な邸宅を襲撃する仲間を連れて、レルンブラエの街へ帰って来ていた。
バーデルの都にいた盗賊団に入れなかった小悪党の連中が、ロイドが単独で女性が留守番をている民家に侵入して強姦する手口でベルツ伯爵領の村を荒らしているのに便乗した。ベルツ伯爵領を通過するまでに7人ほど逃げそびれて捕まり、数を減らしたが、まだロイドの他に14人の手下たちがレルンブラエの街までついて来ていた。ロイド窃盗団といったところだが、ロイド自身には首領という自覚はなかった。

(かなり胡散臭い連中だねぇ)

酒場で夫と和解して女店主になっているミランダは、ロイド窃盗団の手下たちを警戒しながら、働いている小娘たちに、奴らと絶対に寝るんじゃないよと裏方で指示を出していた。
バーデルの都で盗賊相手に商売していたミランダには、まともな客とクズの客の見分けがつくようになっていた。
ロイド窃盗団の手下たちは、レルンブラエの街よりも、目立たない村のほうがやりやすいと安酒をちびちび飲みながらぼやいていた。
ロイドはジャクリーヌ婦人を強姦して、言いなりにするように調教するのは単独では無理と判断した。
ベルツ伯爵領には、伯爵に傭われていた盗賊団があったのだが、フリーデをバーデルの都に運び、そのまま闇市が儲かるとベルツ伯爵領へ帰らずに暴徒鎮圧の混乱で殺害された。その儲け話に乗れない下っぱの連中が、ロイドを兄貴と呼び、おこぼれにあずかりながら流れてきたのである。
蛇神のしもべに心の弱い者は支配され利用される。ロイドはヘレーネによって死の運命から逃れた。下っぱの手下の者たちはバーデルの都で贄にならなかった。ロイドに出会わなければ、喧嘩早いベルツ伯爵領の村人たちに叩きのめされて、行き倒れになっていただろう。
ジャクリーヌ婦人の邸宅襲撃は、領主のブラウエル伯爵が自領を留守にしてなければ3倍の人数を集めても成功しない。
酒場の娘でも買って噂を集めて来いと、ロイドは手下たちに金を渡していた。
元商人のロイドだけならミランダに警戒されなかっただろう。
窃盗して得た金で、悪さをしなかった村で商品の仕入れをして、商人のふりをしながらロイドは旅をした。手下たちは護衛や荷物の積み降ろしの雑用人夫に見せかけていた。
ベルツ伯爵領から窃盗団の噂がレルンブラエの街まで伝わっていれば、すでにジャクリーヌ婦人に警戒されている可能性がある。衛兵が待機していたら14人の手下と一緒に牢屋送りにされる。


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