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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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ザイフェルトの修行と厄祓い(前編)-6

ザイフェルトも体をフリーデのしなやかな手で撫で洗いされて、不覚にも勃起してしまった。
フリーデも、アルテリスの指摘したように、なんとなくどきどきしていたが、抱き合ってキスをしただけで、また夫婦で仲良くしているのを見られたら気まずいので、温泉から上がることにした。

(危なかったです。もたもたしていたらもっと恥ずかしいところを、アルテリスさんだけじゃなくテスティーノ様にも見られてしまうところでした)

「伯爵様、ザイフェルトとあたしが手合わせしているの見て、少し妬けた?」
「なんだアルテリス、私に妬いて欲しかったのか?」
「あたしが手合わせしていて、すごく楽しそうなのは、伯爵様も感じてたよね」
「まだまだザイフェルトは、手合わせしながら、心がつながっていない。でも、そうなったら妬くかもしれないな」
「ふ〜ん、そうか。でも、すぐそうなると思うよ」
「どうしてそう思った?」
「ザイフェルトとフリーデは仲良し夫婦だから。気持ちが通じあってる感じがするよ」
「ふふふ、命のやりとりと交わりも、心のつながりでは同じかもしれん」

テスティーノ伯爵は、お湯に肩までつかりながら言った。アルテリスが隣に来てテスティーノ伯爵の腕をぎゅっと抱きしめた。テスティーノ伯爵の腕に、アルテリスのふくよかな美乳が密着する。
テスティーノ伯爵と見上げるアルテリスの目が合った。アルテリスが少し色っぽい微笑を浮かべていた。

食事を終えて、ストラウク伯爵はスヤブ湖は、水神として蛇神を崇められていたという昔話をザイフェルトに語った。

「だから湖の近くの村の土の中から、蛇神の石像が見つかったりするのだよ」

晩酌の乳酒を呑みながら、ストラウク伯爵は語っている。
継子いじめをする神官の継母の物語に、ついフリーデはジャクリーヌ婦人と自分の関係を重ねて考えてしまった。

「この家の温泉やスヤブ湖だけでなく、パルタの井戸やターレン王国の辺境の森まで、双子の山から地下を流れる水はつながっておる。水神として蛇神が崇拝されていた。降る雨も水。私たちの体の中に流れる血さえ、水といえる。人が生きるには欠かせぬものといえる」
「スト様、お酒はちがいますけどね」
「ベルツ伯爵領では、地に酒を撒いた。酒もまた、水神の信仰にまつわるものとして考えられていたのだろう。呑み過ぎるのは良くないものだが」

ストラウク伯爵はそう言って笑った。マリカに、晩酌分だけ入れてもらっておいた、からっぽの小壺を渡した。

「スヤブ湖の蛇神の神官の呪詛は、子を根絶やしにするものだった。ここからが君たちの厄祓いに関係する話だ」

ストラウク伯爵は呪詛が、人の怨念の込められた願いを叶えてもらうための儀式ということを語り始めた。

「ザイフェルトとフリーデの身に降りかかる災いは、自分の行動や他人の行動によって引き起こされている。それだけ多くの人々が同じ呪詛の影響を受けて行動しているということだ」

先住民の血統の末裔が滅びようと、末代まで移住して虐げた者たちの末裔までも滅ぼして欲しい。
その怨念の呪詛は移住してきた者の末裔だけでなく、先住民の血統の末裔まで贄として蛇神へ捧げる契約として、多くのどちらの血統の者たちにも影響を与えているのではないか。
それがストラウク伯爵が考えた祟りについての考察である。

「ザイフェルトやフリーデは、移住者の貴族階級の血統と先住民の平民階級の血統のどちらも継いでいる。ヘレーネは婚姻によって貴族階級と平民階級の心にある恐怖を緩和する方法を実行した。怨念の元にあるおたがいが持つ恐怖を緩和できれば、この先、強い怨念で呪詛する者がいなくなると考えたのだろう。では、今、呪詛の影響があらわれてしまっている者たちは、どのようにして生き残ることができるか。それが君たちやこの王国で生きている者たちが直面している問題というわけだ。選択のひとつとして、心に、いにしえの呪詛とつながりの恐怖を持つ者が死に絶える方法がある。しかしこれは不可能だろう」
「兄者、この土地の者たちや私の受け継いだ伯爵領の者たちは、貴族階級と平民階級の血統であることに、強いこだわりを持たないようになっているではありませんか」
「怨念の元の恐怖というものは、人が群れをつくり生き始めた頃から続いているものなのだ。身分階級というものや、国というものができあがる前からある」

人は群れをつくり協力して生き残る方法を選択してきた。群れを存続するため危険と判断した者を、選別して排斥することで群れは国となるほど繁栄した。

「群れを存続するために適していない者を排斥するのは、危険と判断する恐怖からだ。毒蛇に咬まれて死んだ者がいたとしよう。毒蛇と知らなければ、捕らえて食べていたかもしれぬ。毒蛇という存在が危険だと恐怖を感じることで、さわらぬようにするのは知恵というもの。生きるための知恵と危険に対する恐怖はひとつのものではないか。毒蛇に対する知恵と恐怖が切り離されるには他の蛇についても知り、毒のある部分を取り除き焼き薬とすることや、酒に漬けて薬酒にすることを思いつく変わり者があらわれるまで続く」
「スト様、毒蛇からどんな薬ができるかあたいは知ってるよ。男の人の股間のものを勃たせる薬になるんだ」
「アルテリスも兄者と同じでとても博学だな。なんで毒蛇を黒焼きにしたり、酒に漬けて飲んでみたのか……咬まれて死ぬ危険よりも、勃たないほうが危険で恐ろしかったのかな」

テスティーノ伯爵が冗談めかして言うとストラウク伯爵か静かにうなずいた。

「テスティーノ、ザイフェルト、もし交わりがなくなれば、群れの中で子が生まれぬ以外で何が起きると思う?」

テスティーノ伯爵とザイフェルトは顔を見合せ、それぞれの伴侶のアルテリスとフリーデの顔をまじまじと見つめた。

「危険かもしれぬ」
「それはどうでしょう?」

ふたりが小声で意見交換をしていた。


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