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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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ザイフェルトの修行と厄祓い(前編)-5

ザイフェルトは踏み込んで、近づきながら腕がのばす。アルテリスの腕をつかもうとした右腕を、アルテリスが逃げずにとらえ両手で内側へひねった。
肘は生理的に身体の本体につながっていて、相手の腕を内側にひねるとその本体は前に崩れる。逆に外側に捻ると後ろに崩れる。
すっとひねった動きを使い、アルテリスは前のめりになったザイフェルトの体を避けた。
そのままザイフェルトは地面にべたんと倒れてしまった。

踏み込んで前に出た勢いを、アルテリスに利用されたのはわかった。
しかし、無様に前のめりに倒れるには、強い力で背中を押されるか、肩を押されでもしない限り倒れないはずだった。
それがあっさり倒された。
正面にいたはずのアルテリスが避けている。それでも倒れるはずがない。
困惑しながら、ゆっくりとザイフェルトが立ち上がる。

「惜しかったね、ザイフェルト。でも、あたしに抱きつくにはもっと踏み込まないとね。腕をつかもうとしたから、逆にあたしに腕をつかまれたんだよ」

アルテリスが再び距離を置いて立ち、ザイフェルトに少し教えた。
まだ2回目なのに避けさせられたので、アルテリスはわくわくしていた。
絶対にザイフェルトは強くなる。アルテリスは手合わせをして確信した。

(そうだ、俺は腕をつかまれた。でも、腕を引っ張られたわけじゃない。どういうことなんだ?)

「よし、始めっ!」

テスティーノ伯爵が、再びふたりに掛け声をかけた。

ザイフェルトとアルテリスは、続けて8回ほど手合わせをした。
ザイフェルトはアルテリスを殴ろうとはしなかった。膝を崩すつもりで脚を狙い低い蹴りは使った。
それを見ていたテスティーノ伯爵が、ザイフェルトに声をかけた。

「ザイフェルト、少し休んで見ていなさい。アルテリス、私はザイフェルトよりもえげつないぞ」

テスティーノ伯爵は、少し腰を落とし、足は肩幅ぐらい開いて、ザイフェルトと同じ構えを真似して見せた。

「伯爵様、ザイフェルトと同じ身構えかただね。いつもの構えじゃないの?」
「ザイフェルトに私の真似をさせても、ザイフェルトの良さが失われてしまう。ふふふ、これも悪くない。さあ、ザイフェルト、掛け声を頼む!」

ザイフェルトはテスティーノ伯爵とアルテリスの手合わせを見た。
テスティーノ伯爵はアルテリスの顔面に真っ直ぐ拳を撃ち、アルテリスは首を傾け、ギリギリで避ける。
アルテリスもテスティーノ伯爵の股間を狙い蹴り上げようとして、テスティーノ伯爵はアルテリスの蹴り上げる脚に手をついて、しなやかな後方転回して蹴り返しつつ後退し、アルテリスもあご下を蹴り上げられかけるギリギリで後方転回して避けた。
アルテリスがテスティーノ伯爵の背後から腕で首を締めようとすれば、テスティーノ伯爵は容赦なく肘打ちで脇腹を狙いアルテリスが腕をほどいた一瞬で、腕を取り背中に乗せるようにして、地面に叩きつけられたアルテリスが、仰向けに倒れていた。

「ザイフェルト、私たちは感じ取り、できるだけ無駄なく避ける。あえて受けると、全身あざだらけになってしまう、まあ、温泉につかって7日もすればあざは消えるが、私やアルテリスは痛いのは嫌いでね」

ザイフェルトは相手の隙を狙うために、あえてアルテリスの攻撃を受けていた。

「我慢強さも必要だけど、武器を使われたら、受けるわけにはいかない一撃もあるからね!」
「アルテリス、準備はいいか。よし、ではザイフェルト、掛け声を頼む!」

(羽交い締めにしても、相手がナイフを隠し持っていて脇を刺されたら危ないということか。なるほど、これを家の前でやられたら、マリカが心配するのもよくわかる)

「あらザイフェルト、子供みたいに服が泥だらけ、それに顔まで」

フリーデが、笑顔のザイフェルトの顔を撫でる。
昼食休憩に戻ってきたザイフェルトとアルテリスは、すでにたっぷり服を汚して戻ってきた。
マリカが泥だらけのふたりを見て、ため息をついた。
テスティーノ伯爵だけは、汗はかいているが、泥だらけになっていない。

「まだ着替えないなら、庭でみんなで食べますか?」

マリカは庭に敷物を広げた。
昼食後に、また出かけていくザイフェルトにストラウク伯爵が声をかけた。

「ザイフェルト、手をさし出してみよ」

ストラウク伯爵は、ザイフェルトの手首をつかんでみせた。小指をしっかり相手の手首にかける。また、相手の親指のつけ根をしっかり押さえ込んでいた。

「あっ、これは!」
「ザイフェルト、このふたりはやらないが、中指をつかんで、私がおぬしの手の甲の向きへ、腕を思いっきり振ればどうなるかな?」
「指が折れます」
「そうだ。曲がらない方向に力をかけられると、弱いところは痛める。強いところなら、体が相手に動かされる。その様子だと、かなりアルテリスに転がされたのだろう?」
「はい、そうです」
「体のすべてはつながっておるよ。しなやかな動きでも、限界はある」

日暮れ頃、先にザイフェルトが山の家に帰されてきた。フリーデは、テスティーノ伯爵とアルテリスから昼食の時にザイフェルトだけ先に帰すから、風呂で洗ってやれと言われて待っていた。

「私たちのあとに、テスティーノ様やアルテリスも入浴するそうです」

ザイフェルトたちが風呂から上がって廊下を歩いていると、テスティーノ伯爵とアルテリスが帰って来た。

「ザイフェルト、がんばったね。フリーデに洗ってもらって、さっぱりした?」
「はい、いいお湯でした」
「あたしたちもさっぱりしてくるよ!」

アルテリスはフリーデにも小声で話しかけた。フリーデは少しもじもじとしてザイフェルトのそばに戻ってきた。

「フリーデ、なんか、汗かいた男って、色気があっていいよな」

泥だらけになって汗をたっぷりかいて帰ったザイフェルトの体を、フリーデは手洗いした。


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