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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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ザイフェルトの修行と厄祓い(前編)-4

フリーデがふたりのじゃれあっている様子を見てクスッと笑っていた。

3人が温泉から上がってくると、起き出した男性の3人が入れちがいで廊下に立っていた。

「おはよう、なんだ、みんな一緒に入ればよかったのに!」

全員が一斉に、アルテリスの顔を見つめた。男性3人は中から艶かしい声が聞こえてきたので、踏み込むのを躊躇した。それをマリカとフリーデは察して、少し困った顔をしていた。

「私たちは朝ごはんの支度をしますね、フリーデさん、こっちです」
「はい!」

マリカが手を引いて、その場からフリーデを連れて逃げた。

「いい湯だったよ。じゃ、3人とも、ごゆっくり!」

アルテリスが寝室へ戻っていく。

「兄者、たまにアルテリスが羨ましいと思う時がある」
「そんなアルテリスの天真爛漫なところに惚れたのだろう?」
「まあな。ザイフェルト、フリーデにはうまく謝っておいてくれ」
「テスティーノ様は、本当にカルヴィーノの御父上だと思います。よく似ていらっしゃいます」
「ん〜、じゃあ、湯にのんびりつかりながら、そこを詳しく聞かせてもらうとしようか」

朝食後、ザイフェルト夫妻は客室に戻って、フリーデと温泉の感想や中で何があったのかを聞いて、ザイフェルトのほうが恥ずかしくなってしまった。

「ザイフェルト、男性も体を洗い合ったりするのですか?」
「いや、私たちはそんなイタズラはしなかったよ」
「女性だけの習慣なのでしょうか?」
「さて、どうだろう。アルテリスがイタズラ好きなだけかもしれない」
「マリカさんから聞いたのですが、夫妻で入浴したりもするそうですよ」
「そ、そうなのか。恥ずかしくないのだろうか?」
「ふふっ、どうでしょうね。ザイフェルトは一緒に入浴したいですか?」
「……入浴してみたい」

ザイフェルトが恥ずかしがって小声で返事をしたので、フリーデも恥ずかしくなってしまった。
ザイフェルトからキスされて、フリーデがうっとりと目を開ける。フリーデが甘えて抱きつき、頭を撫でられていた。

「いやぁ、新婚ほやほやだね。伯爵様もザイフェルトぐらい甘えさせてくれたらいいんだけど」

さっそく修行の前に、昼食までに軽く手合わせするため、テスティーノ伯爵に言われて、ザイフェルトを客室に呼びに来たアルテリスに、フリーデと仲良くしているところを見られてしまった。

「そんなに照れなくても、フリーデはいい体してるし、そりゃ、昼間だって仲良くしたくなるよね」

アルテリスなりに気を使って話しかけるほど、ザイフェルトが落ち込んでいく。
テスティーノ伯爵は、アルテリスを手招きして呼び、自分の隣を歩かせることにした。肩を落としながらザイフェルトがふたりのあとについて行った。

「ザイフェルト、この空き地から出なければ好きに使って動いていい。アルテリスを地面に1度でも倒せれば君の勝ちということにしようか」

森の中の空き地まで3人でやって来た。家のそばでテスティーノ伯爵とアルテリスが修行して暴れていると、マリカがどちらかケガをしそうで、心配してしまい落ち着かないらしい。

「先に言っておく、アルテリスを女だと思って手加減は無用。殴ろうが蹴ろうがアルテリスは返してくるぞ。おーい、アルテリス、骨を折ったりするなよ」
「うん、わかった!」
「では、よろしくお願いします」

ザイフェルトは、アルテリスに頭を下げたあと、軽く腰を落として身構えた。

「ずいぶん力が入ってるね。いくよ!」

テスティーノ伯爵はザイフェルトがアルテリスをつかんでおき、足払いをかけて転倒させる気なのが、身構えた姿からわかった。
ザイフェルトが、素早く進み出たアルテリスの両腕をつかみ引き寄せた。
思いがけず人は体を引っ張られると、その反対方向へ逃げるために、脚に力を入れて踏ん張りをかけようとする。

アルテリスは両腕をつかまれ、引き寄せられたまま、抵抗せずに体をザイフェルトにぶつけてきた。そのまま、脚を絡めて、ザイフェルトは押し倒された。
飛び込んできたアルテリスの体を受け止めるために、ザイフェルトの脚に力が入って踏みしめた。その脚を絡みつかれ体勢が崩れた。
アルテリスの両腕を離し、ザイフェルトは仰向けに倒れた。ザイフェルトの胸板のあたりに手をついて、ニヤリと笑ったアルテリスが起き上がる。

「胸に飛び込んでくる女を受け止めきれずに、逆に女に押し倒された気分はどうだい?」

脚を絡まれても押し倒されるとは思ってなかったザイフェルトが、ゆっくりと身を起こした。
ザイフェルトは、倒れた時に後頭部を地面に打たないように脚ではなく背筋でわずかに身を前に丸めている。

「そうこなくっちゃね。伯爵様、ザイフェルトはいいもの持ってるよ!」
「ザイフェルト、やるかね?」
「はい、お願いします!」

距離をおいたアルテリスに、ザイフェルトは再び身構えて対峙した。

「よし……始めっ!」

テスティーノ伯爵の掛け声と同時に、ザイフェルトが腕を立てるように左腕、右腕と逃げずに払う。
アルテリスが距離をつめて右脚、左脚とで頭を狙って蹴りを入れていた。
連続で蹴りを入れてきた動きは素早いのに、受け止めた腕が痺れるほど蹴りが重い。体重移動と腰を使った強い蹴りのために必要な体勢の安定感が抜群である。

つかまれない距離から蹴りが当たる距離を、1度つかまれたことでザイフェルトとの間合いを、すでにアルテリスはつかんだということである。

左右に連続で蹴り込んだあと、体勢が整うまでの一瞬を狙い、ザイフェルトはアルテリスの体までのまでの距離を一気につめた。

ザイフェルトは咄嗟に蹴りがくると見極め防いだ。
両腕を蹴られた痛みと痺れに意識が向いていて動けないはずが、ザイフェルトはそれに耐えて踏み込んで来た。
アルテリスがうれしそうに、笑い声を上げた。


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