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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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伴侶の選択-7

誰が何が目的で、生徒たちを自死させているのか。
自死した生徒たちの親が何者かに恨まれていたか、殺されていない生徒の親を脅すために見せしめとして殺害されたのではないか。働きながら学院に通っている生徒たちは、寄宿舎に暮らしていない。学院に寄付をして、我が子を学院にあずけている子供の知らない親たちの事情が関係しているのではないかとセレーネは考えた。
グラウベリー学院や街の評判を下げてまで、生徒を集めようとする他の学院かある可能性は考えにくい。
グラウベリー学院は、神聖教団の支部のようなものである。グラウベリー学院を卒業できれば、そのまま聖職者として神聖教団の僧侶となる認可が受けられる。他の学院というのは、訓練として体を鍛え上げ、学問だけでなく、衛兵に必要な剣術や馬術などの習得させる訓練所でもあり、聖職者を目指す者を募集して育成しているグラウベリー学院は、平原地帯でも異例の学院といえる。
女子だけが通う学院ということで、婚前の娘に、教養や礼儀作法などを身につけさせる目的でグラウベリー学院に入学させる者も多くいる。
また娘を聖職者にする目的ではなく、信者として教団に金銭を寄付する目的の者や、神聖教団の信仰している女神ラーナの教えを娘に学ばせるためだけに通わせている者もいる。
神聖教団本部の神殿がある北方の大山脈の古都ハユウは、平原からかなり離れているため、グラウベリーの街は、神聖教団の信者が集まる観光地の街でもある。
平原地帯各地の王国は連邦国で、各国の連邦議会によって自治されている。王族や貴族の階級は、政治的な特権を意味していない。実権は連邦国議員となっている資産家たちが握っている。貴族の爵位を持つ家系が、資産家とは限らない。
平原の王国の中心には、大樹海の中にエルフの王国がある。エルフの王国は、平原各地の王国を統治や支配しているわけではない。どの王国に対してもエルフの王国は中立なのである。平原の王国のどこかひとつの国が利権を奪うために戦を始めた場合、他の連邦国は中立国であるエルフの王国に協力して和平交渉や連邦連合軍として軍事介入をして平原全体の治安維持を行うという法律が、平原のどの王国でも共通して定められている。
そのため、平原の国々からグラウベリーの街には旅行者が訪れる。学院長ナタリーナも、連邦議員のひとりである。
グラウベリー学院を卒業して僧侶の資格を得た女性たちは、さらに神官を目指すなら故郷の平原地帯を離れ、北方の古都ハユウで修行することになる。
参謀官マルティナのように物心がついた時には古都ハユウにいて、親の顔を知らず、血のつながりはない者と姉妹として育てられて神官となる者と、僧侶の資格を取得して神官となる修行をする者たちがいる。
神聖教団の信者である連邦議員と資産家で地元の有力者であるの連邦議員との対立は少なからずある。
各国の議会では議員の協議と多数決で方針が決定されるが、議席数では、神聖教団派の議員のほうが上回っているのが現状である。
ただし、グラウベリーの街がある乙女座のヴァーゴ王国では、この神聖教団派と無教派の対立は、利害が一致しているために友好的な関係にある。グラウベリー学院や街の評判を下げるために画策する無教派議員はいない。
セレーネは、学院長ナタリーナに個人的に恨みがある人物はいないか考えてみたが、グラウベリーの街の名士の未亡人で神聖教団の元僧侶であるナタリーナは街での評判は良いことがよくわかる。
生徒が街でナタリーナの親戚だとセレーネが街の住人に紹介すると、ナタリーナが僧侶として、どれだけ街の住人の治療などを行ってきて感謝されているかを、住人たちからセレーネは聞かされた。僧侶は出産の手伝いも行うこともある。ナタリーナは、かなり街の住人から慕われていることがわかった。
個人的な恨みだとしたら、学院内の寄宿舎の生徒だけを標的に呪殺するよりも、評判になりやすい街暮らしの生徒を殺害するほうがたやすく効果的だとセレーネは考えた。街に呪いをかけた者が潜んでいるという捜査の考えは消した。
寄宿舎の生徒たちは死亡した生徒は、急な事情で帰ったと思っていた。実際に急に挨拶もなく学院から去る生徒はいないわけではない。婚約が急に決まった場合は、荷物なども寄宿舎に残したまま本人だけ故郷へ帰らされることもある。
自分が誰と婚約の予定かあるのかという話題は、自慢話のようになりかねないので親しくても生徒たちは話さないのが普通らしい。
また、学院長ナタリーナも生徒の婚約に関する個人的な事情は、親から結婚の問題に巻き込まれないように、あえて聞かないないため把握していない。
紫の蜂の呪いの話を、生徒たちは知らない。変死した生徒の遺体をこっそりと親元へ帰す手伝いをした僧侶の女教師たちは、紫の蜂の呪いに怯えていた。
セレーネは危険は承知で寄宿舎の管理も任されている女教師に、生徒の自殺について大叔母様から聞いて知っていると明かした。もちろんセレーネが、神聖騎士団の騎士であることは、しっかり隠しておいた。
生徒の自殺は紫の蜂の呪いと教師たちの間で呼ばれていて、1年間に10人も犠牲者がいることを女教師ニコラはセレーネに話した。犠牲者の人数や名前などは
事前に学院長から聞いてセレーネは把握していた。夜、寄宿舎の宿直室でニコラとセレーネが話している。宿直室で寄宿舎で暮らす生徒の相談事を、ニコラが聞くのはよくあることなので目立つ行動ではない。

「今まで学院でこんなことは……あっ!」

ニコラが左耳を急に手で押さえ、椅子から立ち上がると、そのまま気を失い床に倒れた。耳の穴から手に、耳の穴から出てきた血が流れ出していた。
ニコラの手には、血まみれの紫色の小さな蜂の死骸があった。
セレーネは、敵からこれ以上余計な詮索はするなと警告されたと気づいた。ニコラの耳の中には、蜂が仕込まれていた。
寄宿舎暮らしの生徒と関わる機会が多い教師のニコラに探りを入れて確信した。
敵は学院の中にいる。


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