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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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伴侶の選択-6

マキシミリアンによれば、冬眠しているような状態で、数年間は治療に耐えられるぐらいまで、体が成長するのを待つということだった。
15歳で冬眠から目覚めセレーネは古都ハユウで呪いの進行を抑制する法術の処置を受けながら祓魔師となるための修行をした。
17歳で故郷へ戻り、ロゼ遺跡のダンジョンへ単独で、妖獣ヘルの討伐のための探索を開始した。あと1年間、自分の体が呪いに耐えきれるかわからない。もし妖獣ヘルを討伐できれば、呪いから解放される。やれることはやってからでないと、死にきれないとセレーネは思った。
また、因縁のあるセレーネを誘き寄せるために、無関係のハンターたちが妖獣ヘルに凍死させられ続けていたのが許せなかった。
ダンジョンの探索にセレーネは、あえてパーティーを組まなかった。妖獣ヘルとの戦いに他のハンターたちを誰も巻き添えにしたくなかった。妖獣ヘルには地下10階層まで逃げられたが、どうにか討伐できた。18歳の誕生日の前日で、祟り殺されるギリギリのところだった。
怨霊がダンジョンで生成された魔獣と同化していたので討伐して滅ぼせたが、人間に憑依していたり、障気となっている状態だったら逃げられて、セレーネは呪いで死んでいただろう。セレーネが祟り殺されたとしても、妖獣ヘルは無関係なハンターを襲い続けていたはずだと、マキシミリアンは言った。
呪いから解放されたセレーネは、ゼルギス王国の神聖騎士団に入隊した。
12歳の頃に初めてのダンジョンの探索で、パーティーを組んでくれた親切な優しい護衛のハンターたちが、セレーネを狙う妖獣ヘルの巻き添えとなって目の前で凍死させられたのを何もできなかった経験から、今でもセレーネは、任務の魔獣討伐を他人と組んで行うことに抵抗がある。
現在は22歳のセレーネは、誰にも恋をしたことがない。因縁の妖獣ヘルの討伐や、その後の任務の魔獣討伐に、情熱のすべてをぶつけてきた。

マキシミリアンが、人と同じような意識を持つ魔物娘について調べ、そして僧侶リーナの自意識を保持した魔物娘の生成に挑めたのには、妖獣ヘルについての研究から得た知識があったからである。

セレーネは、蜂の王と自ら名乗った呪術師を討伐したことがある。グラウベリー学院で、女子生徒の変死か続く異変が起きた。その潜入調査のため、セレーネは転入生として、グラウベリー学院に入学したことがある。潜入時はセレーネは20歳だったが、制服を着て生徒の中にいれば、17歳から18歳の生徒と見た目の違和感はなかった。
古代エルフ族の使っていた肉体だけを眠らせておく魔法の石棺で冬眠して、ゆっくりと保護されて成長したことも、セレーネの見た目の若さに影響しているのかもしれない。
変死した生徒の遺体の手に握られていたり、口の中に入り込んでいたり、室内の足元などに、必ず蜂の死骸がある。その蜂は紫色の蜂で、普段の生活していて見慣れている蜜蜂や刺されると厄介なスズメバチなどではない。蜜蜂よりも小ぶりの大きさである。
これは異変の兆候ではないかと、学院長の老嬢、元僧侶のナタリーナが神聖教団へ調査を依頼した。
ナタリーナは神聖教団で学んだ知識を、平原地帯の女子たちに教育する学院を設立した人物である。貴族や裕福な商人の家庭の跡継ぎの男子は、それなりに教育を受けさせてもらえることが多い。女子は政略結婚のために嫁ぐものという考えの家庭では、跡継ぎとなる男子との教育の格差があった。その教育の機会の格差がある風潮の改善をナタリーナは目指している。
飛び降り、首吊り、服毒、自刃。死因と遺体の発見された場所も野外や室外とまちまちである。共通しているのは、残されている紫色の蜂の死骸だけであった。
このまま生徒の変死がさらに続けば、学院の評判が悪くなって学院の経営にも影響が出てしまう。

「亡くなった生徒に共通しているしている人間関係などは?」
「寄宿舎で、故郷から離れて暮らしている生徒ということぐらいです。年齢も一緒ではありません」
「わかりました。私も寄宿舎を利用させていただけますか?」
「ええ、それはかまいませんが、亡くなった生徒の部屋しか空きがありません」
「そのほうが好都合です。奇妙な蜂について、生きている蜂を学院の敷地内や街で見かけたなどの噂は?」
「特に今のところ、街では噂にはなっていないようです。遺体を発見した教師には、街でこの騒ぎについて口外しないことや、街で蜂の噂を聞いた場合も、私のところへ報告するように言い含めてあります。学院の敷地内で紫色の蜂を探してみましたが見つけられませんでした」

グラウベリー学院では寄宿舎で暮らしている生徒と、街で借家や宿屋の部屋を貸りて通学している生徒がいる。
街の名前はグラウベリー。街の資産家だったナタリーナの夫が、妻に学院創立の資金を提供する条件として出したのは、街と同じ名前を学院につけることだけだった。学院の評判が落ちれば、グラウベリーの街へ訪れる者も減り、街へ落ちてくる収入も減る。
学院は街はずれにあった神聖教団の教会を中心として、校舎や寄宿舎などが建てられている。生徒の1日に一度の礼拝などの慣習は、古都ハユウで修行したセレーネには、懐かしさを感じさせるものであった。

教師や生徒には、セレーネは学院長ナタリーナの親戚ということで、シャーアン王国のグラード財閥の学院から転入してきたということで、学院長と話を合わせた。シャーアン王国のグラード財閥令嬢が9番隊の隊長ルディアナである。グラード財閥は、神聖教団との強いつながりがある。
セレーネは潜入調査を開始した直後は、教師の中に生徒を呪殺している者がいるのではないかと疑っていた。

寄宿舎では16歳から18歳の生徒たちが暮らしている。当時マノンは16歳、フェルリスは17歳、レヴィアは18歳で寄宿舎で暮らしていた。
グラウベリー学院の蜂の王の事件をきっかけに、この3人は卒業すると、すぐにゼルギス王国へ移住し、神聖騎士団に入隊した。


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