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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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カルヴィーノの恋人-8

カルヴィーノは、なぜ手紙をミランダがすぐに燃やして隠蔽したか、すぐに事情を察した。バーデルの都では領主が不在の状況で、今までの法律を無断で破って商品の取引が行われている。
違法な取引をしている情報を王都へ知らせる者がいないか、かなり警戒されている。ミランダでも疑われたら、危険な目に合う。

「あんたたち、今、バーデルの都に来たのは、まずかったと思うよ」
「ミランダ、人を探しているんだ」

カルヴィーノは、盗賊オレステが盗賊の親分トーラスに引き渡した女性を探していると、ミランダに話した。

「それはともかく、シナをどうして連れて来たんだい。盗賊から女を奪うなんて危ない話に、私の妹みたいな子を巻き込むなんて」
「ミランダさん、私が幌馬車に隠れて勝手について来ちゃったの」
「あんたは少し黙ってな。私は隣の男に聞いてるんだ」
「シナエルは、ミランダに会いたいからついて来た。今回は確認だけで、相手が多すぎれば奪わずに、シナエルを無事に連れて帰るつもりだった。だけど、ミランダも連れて帰る必要がありそうだな。サンドロが待ってる」
「オレステから話を聞いてみな。あと、あんたたちは、私のところに泊まりな。余所者が宿屋に泊まれば、身ぐるみ剥がされかねないからね。あんたたちは、私の身内ってことにする」

盗賊オレステは、トーラスの手下として働いていた。シナエルの顔を見て、気まずそうにぎょっとしていた。

「ノーラとの約束のことは、他の奴らには黙っておいてくれねぇか。ここで物が高く売れる話を女に話したのがバレるのは、ちょっとまずいんだよ」
「え〜っ、どうしようかなぁ」
「あんたからも、シナエルに言ってやってくれよ。この話は本当にヤバいんだ」
「シナエル、オレステの言う通りだ。シナエルのことを心配して言ってくれてるんだから」
「しょうがないなぁ、カル君がそう言うなら、内緒にしてあげる」

ミランダの妹がシナエルで、カルヴィーノはオレステとは親友ということにしてもらい、ふたりはうまくバーデルの都に潜入した。
バルテッド伯爵が捕縛されて商業ギルドが閉鎖されたことや、警備隊が治安維持を行っているが、盗賊の親分たちと手を結ぶことで、バーデルの都に食糧や品物が供給されている状況を、カルヴィーノはミランダとオレステから話を聞いて把握した。
盗賊の親分トーラスを斬り殺して、人妻フリーデを奪えばいいという単純な話ではない。盗賊がいなくなれば、バーデルの都への物資の入荷が止まる。

(盗賊団がどこの誰から物資を調達してるのか。オレステも、それはわからないと言っているのがやっかいだな。勝手に盗賊たちに物資を値上げさせて売ることで、儲けている伯爵がいるんだろう)

違法で物資を横流しをして儲けていたロンダール伯爵とフェルベーク伯爵は、証拠隠滅のために、女伯爵シャンリーに自領の衛兵隊を与え、暴徒鎮圧という名目で行われた虐殺に協力した。

人妻フリーデを置き去りにして、盗賊団の親分トーラスは逃げ出そうとしたが、バーデルの都の警備隊へ投降の条件として4人の親分を引き渡すように、シャンリーはひそかに伯爵たちから伝えさせていたのでトーラスは捕らえられた。
トーラスの護衛をしていたオレステは、深手の傷を負って、酒場へ逃げ込んできた。オレステは、シナエルに金貨の入った袋を渡すと息を引き取った。
警備隊も女伯爵シャンリーの衛兵隊と戦い、殲滅された。

盗賊団の親分トーラスの館から、カルヴィーノは、館に乗り込んで残されていた盗賊を斬り、人妻フリーデを連れ出し、都の混乱の中を幌馬車を走らせた。
フリーデ、ミランダ、シナエルを乗せ、あちこちで火の手が上がる都の中を突っ切ってバーデルの都から脱出した。
都で暮らしていた住人たちが、盗賊の親分たちが暮らして元商館やバルテッド伯爵の邸宅を襲撃して火を放った。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

盗賊や警備隊だけでなく暴徒化した住人たちを虐殺する混乱の中を、幌馬車の中で、シナエルは泣きながら謝っていた。
幼い子供が火傷を負って歩いているのを見かけた。幌馬車に乗り込んで一緒に逃げ出そうとしがみつこうとした者たちをはね飛ばしながら幌馬車は走り抜けた。
馭者をしていたカルヴィーノも、唇を噛みしめて馬を走らせていた。

「バカだね、命を落としちまったらおしまいじゃないか……うぅっ」

シナエルからオレステの金貨袋を受け取ったノーラが、金貨袋を抱きしめて酒場で泣き崩れた。
オレステのことを失って、ノーラは自分が思っていた以上に、オレステに惚れていたことに気づいた。

(ザイフェルトは生きている!)

人妻フリーデは、カルヴィーノと一緒にリヒター伯爵領へ逃亡することにした。ベルツ伯爵領からバーデルの都へ連れて行かれる時に、ザイフェルトが死んだと聞かされていた。しかし、カルヴィーノはパルタの都でザイベルトと会っていることや、ベルツ伯爵に命じられた役目を果たしたらリヒター伯爵領へ来るという約束になっていると、カルヴィーノが話したからである。
どんな役目なのかは、カルヴィーノは教えなかった。学者モンテサンドの護衛だとカルヴィーノはフリーデに教えた。
人妻フリーデが、ザイベルトのことを離れていても慕い続けているのがわかってカルヴィーノは本当に困ってしまった。
ベルツ伯爵領の後継者である子爵シュレーゲルと手を結ぶには、人妻フリーデを子爵シュレーゲルに引き渡すのが確実な方法なのはわかっている。
しかし、カルヴィーノはザイベルトが、妻のフリーデの命を守るために命がけでモルガン男爵の暗殺を実行しようとしていたのも知っている。
子爵リーフェンシュタールにカルヴィーノは報告し、どうするべきか話し合うことにした。

「私を置いて行くつもりだったら、絶対に許さないからね」

シナエルを連れて、カルヴィーノはしばらく旅を続けることになった。


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