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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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カルヴィーノの恋人-7

シナエルは、ミランダと会えるのが楽しみだと、幌馬車の馭者をしているカルヴィーノの隣にいて話していた。

街の酒場も経営は順調だった。若い小娘の店員と夫のサンドロの浮気ぐらい許してやればいいのにと、シナエルに酒場の店員の先輩ノーラは家に遊びに来て言っていた。ノーラは、店長のサンドロが仕事で店員に信頼されているから小娘に誘われたのだと言った。

「わざと店長に、他の店員よりちやほやされたくて手を出す癖の悪い娘もいるのよね。あと、他の店員が手なずけて、焦らしている裕福そうな客とかを横取りしてみたりね。シナエル、わかる?」

シナエルの家に持ち込んだ酒を飲みながら、ノーラがぼやいていたらしい。

「酒場の店員っていうのも、客にわからないところで、いろいろなかけひきをしてるんだな」
「うん、そうなのよ。女の人ばっかりの仕事場だからね〜」
「で、サンドロ店長に手を出した小娘の店員はそのあと、どうなったんだ?」
「酒場を辞めて街から出て行ったらしいよ。ミランダさんは、街の人たちの相談を聞いたりして顔が広い人だから。ミランダさんに失礼なことをした娘だって街の人たちに思われたみたいで、急にいなくなっちゃった」

シナエルはとても親切にしてもらったので、ミランダと一緒にバーデルの都について行きたがった。すると、ミランダはこう答えた。

「シナちゃん、サンドロが私との約束を守って浮気しないか、ノーラと見張っていてちょうだい。頼んだわよ」

ミランダはバーデルの都でも人気があって、警備隊の隊員や商人たちの自慢話を聞いてやっていた。また愚痴や相談などを聞いても、他人に話したりして噂を流すこともなかった。
バルテッド伯爵の愛人と噂がある美人のいる酒場ということで、客が絶えることがなかった。

子爵オーギャストが館からこっそりと抜け出して、ミランダにあれこれ相談していた時期があった。バルテッド伯爵は、ミランダに子爵オーギャストの一夜の相手を頼むために、邸宅へミランダを呼んだことがある。
ミランダはきっぱりと断った。子爵オーギャストは、父親の再婚相手の貴婦人アリアンヌに恋い焦がれていて、妹の美少女ミリアから兄でなく男性として慕われているというややこしい状況に悩んでいるのを知っていたからである。
そこで子爵オーギャストとミランダが関係を持ったところで解決するとは思えなかったからである。
バルテッド伯爵が何を心配しているのかミランダはすぐにわかった。若妻のアリアンヌと子爵オーギャストが自分に知られないように、関係を持ってしまうのではないかと心配している。
奥様のことをもっと信じてあげてほしいと、バルテッド伯爵に対してミランダは言った。
すると、バルテッド伯爵は、もう若くないので夫婦の営みがうまくいかない夜もある事を、ソファーで隣に腰を下ろしているアリアンヌの手を握りながら、ミランダに相談した。
バルテッド伯爵と子爵オーギャストは、とても似ている親子だと、ミランダは思った。
若妻のアリアンヌとミランダは親しくなり、邸宅に呼ばれてアリアンヌとお菓子とお茶を楽しみながら過ごすようになった。バルテッド伯爵はアリアンヌも自分には言えない思いをミランダになら話せるのだろうと、ミランダを妻の親友として歓迎した。
そのため、バルテッド伯爵の愛人という噂をミランダはされるようになった。

バーデルの都の広場で、領民にも祝福されながら、子爵オーギャストの結婚式が行われているところへ、衛兵を連れたランベール王がやって来て、踏みにじるようにバルテッド伯爵の家族を王都へ連行したのは、ミランダにとっては衝撃的な出来事だった。
それでも、ミランダは酒場の営業を続けた。商人たちが逃げるように立ち去り、商業ギルドが閉鎖され、見慣れない新しい客が酒場に訪れるようになった。
フェルベーク伯爵領とロンダール伯爵領の盗賊たちだった。本人たちは商人と言っているが、ミランダには胡散臭い客だとすぐにわかった。
それから、しばらく酒場に来なかった警備隊の隊員たちが、酒場に顔を出すようになった。自称商人の胡散臭い客たちとひそひそと話し合っていた。
酒や料理の食材を胡散臭い客とは思いながらも、ミランダは仕入れなければならなかった。
そのうち市場で胡散臭い商人たちが商売を始めたが、商品の価格は急激に値上がりしていった。
市場からではなく、毎晩やって来る常連客になった自称商人の胡散臭い客たちから、ミランダは直接交渉して、仕入れをした。

「市場で仕入れをして、店の酒と料理の値段を値上げしてもいいんだけどね。その方がこっちとしては儲かるけど」
「度胸が据わった女だな、あんた……わかったよ。この酒場しか、びびって誰も開けてねぇからな」

盗賊たちからも度胸がある女と認められたミランダの酒場には、盗賊の親分たちが日替わりで訪れ、手下からの報告を受けている。
親分の小太りのトーラスが、きれいな顔立ちの若い女性を酒場に連れて来るようになった。トーラスは酒を飲みながら、その女性の太もものあたりを、酒場が薄暗いのをいいことに、鼻の下をのばして撫でまわしていた。

バルテッド伯爵が連行されて半月後あたりには、騒ぎを知らない他の伯爵領からの商人がたまに来るようになっていた。警備隊から3倍の価格で商品が買い取ってもらえたが、商業ギルドも商館も閉まっていて誰もいない、何があったのかとミランダは聞かれて、子爵の結婚式が中断された騒ぎを商人に教えてやった。
商人は青ざめて会計を済ますと、慌てて酒場から出て行った。翌日の夜にはもう酒場に来なかった。

「ミランダさ〜ん!」
「シナちゃん?!」

夕方になり店を開けようとしていた頃、酒場の前で、幌馬車から降りて全力で走ってきたシナエルに、ミランダは抱きつかれた。

「サンドロは元気にしてるみたいね」

ミランダは手紙を読み終えると、他の客が来る前に、すぐに燃やしてしまった。


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