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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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カルヴィーノの恋人-6

獣人族の行商人も例外ではなく、ギルドの規則に違反すれば罰金を払わせた。
耕作地を持たない伯爵領であり、定住する者たちも、宿屋、食堂と酒場など年間契約でギルドから許可を受けて商売をしていた。
極端なほど来訪者たちがバーデルの都に落としていく収益に、バルテッド伯爵領は頼りきっていた。

バルテッド伯爵がランベール王に捕縛され、王命により女伯爵シャンリーが赴任するまで、商業ギルドが閉鎖されてしまった。短期間で商業ギルドが再開するのか、それともずっと閉鎖されて再開のめどはないのか。バルテッド伯爵が捕縛されて王都へ連行された時点では誰にもわからなかった。
治安維持のための警備隊は、同時に伯爵領の規則違反を取り締まりを行う組織であり、商業ギルドに組み込まれていた。
つまり、治安維持のための組織が失われた上に、商売するための場所の管理、持ち込まれて売買される品物の管理、価格の管理も同時に失われた。
バルテッド伯爵と子爵オーギャストという統治者が失われたことや、パルタの都にある伯爵官邸と商業ギルドが閉鎖されたことを通達して、ランベール王は王都へ帰ってしまった。
バルテッド伯爵の捕縛の情報をバーデルの都を利用していた商人たちは知ると、このランベール王とバルテッド伯爵の騒動に巻き込まれないように訪れることを自粛した。
バルテッド伯爵領は、耕作地を持たず、全ての食糧の供給を市場の仕入れにより行っていた。パルタの都のような食糧の備蓄がなく、さらに他の伯爵領へ逃げ出すにも、食糧が足りない。
バーデルの都の周辺の土壌がきわめて耕作に適していなくとも、王の直轄領のように、都の近くでわずかでも耕作を行っていれば、急激な食糧不足に悩まされることはなかったはずだが、完全に来訪者に依存した政策を施行していたので、バーデルの都では食糧不足が起きた。

暴動はランベール王が去ってから1ヶ月後の満月の夜に始まった。蛇神のしもべをランベール王はその身に宿して持ち込んでいた。蛇神のしもべは、不安を抱いていた者たちに対して絶大な効果を及ぼしたのである。また、この土地には戦で殺害された者たちを人が訪れ、踏むことで封じていたので、それが絶たれた状況で蛇神のしもべの影響力を増大させた。ストラウク伯爵領へ地に宿る穢れは逃がされていたので、バーデルの都に残された人たちがまとめて、辺境で起きたように完全自我崩壊を起こした魔物と化したりはしなかった。
感応力と同様に、魔力の資質を持つ者は興奮状態にならなかった。のちに女伯爵シャンリーのメイドとなる少女エステルは、穢れと蛇神のしもべに心を支配されなかった。エステルの両親は、パルタの都から移住した小貴族で、バーデルの都から家族全員で逃げ出す予定だったが、間に合わなかった。
1ヶ月間、統治者のいない状態に目をつけたフェルベーク伯爵とロンダール伯爵は、盗賊団に市場をこの隙に奪うことを提案した。
暴動は商業ギルドで警備隊として働いていた者たちの先導で行われた。裕福な小貴族の邸宅は標的にされた。
夫の浮気に激怒して別居して酒場を経営していたミランダの店によく来ていた警備隊の者たちは、酒場へ来なくなり、盗賊たちか利用するようになっていた。
盗賊団は商人のふりをして都に来て、酒場を経営するミランダや食堂や宿屋を経営する者たちに、フェルベーク伯爵領とロンダール伯爵領の横流し品の食糧や酒を売って、滞在しながら様子をうかがっていた。暴動の直前には、酒場で元警備隊の者たちと盗賊たちがひそひそと打ち合わせていた。
酒場や宿屋や食堂などは暴徒の襲撃から除外されたのは、それらの施設を暴徒と盗賊たちが利用しなければならなかったからである。
元警備隊の隊員たちがバーデルの都を占拠したあと、横流し品が入荷されることで食糧の流通が再開される。その密約のもとに暴動が行われた。元警備隊の隊員たちは、どこの伯爵領からの横流し品なのかを知らなかった。
決起した元警備隊の隊員たちによって、バルテッド伯爵邸は焼き討ちされた。商業ギルドで働いていた小貴族の家族が狙われたのは、決起に賛同しなかった小貴族の家族が他の伯爵領に逃げ状況を伝えた場合、バーデルの都の外部から鎮圧のために兵士が派遣されてくる可能性を警戒したからである。
他の領地からの商人を迎え入れられるように市場を復旧するという目標を掲げてバルテッド伯爵の配下であることを捨て決起した元警備隊の隊員たちだったが、暴動を煽動したとして新たな統治者である女伯爵シャンリーは、衛兵隊に殲滅を命じた。
元警備隊の隊員たちは、新たな領主が赴任してくる情報と、再び警備隊として仕えられるという情報に安堵した。盗賊団から元警備隊の隊員たちに与えられた情報のうち、決起した者たちの帰順が許されるというのは偽情報である。盗賊団もフェルベーク伯爵とロンダール伯爵からの情報だったので疑わなかった。
市場を占拠して闇市を開いていた盗賊団と、決起した元警備隊をまとめて始末するために女伯爵シャンリーが仕掛けた罠であった。
王国という大組織に所属しており、安定した収入が約束されていたが、バルテッド伯爵が捕縛されたことで、安定した職を失ったと感じて不安になり、盗賊と手を組み食糧や収入を得られることを選び決起した。しかし、再び王国という大組織に帰順が許されると聞き安定を求めて投降を選んだ。
経済的な余裕や、大組織に所属していることに安心を求めて、元警備隊の隊員たちは行動してしまった。そして、生きのびる機会を失った。
女伯爵シャンリーが赴任してくる前に、バーデルの都から逃げ出すことを選んでいれば、生贄として殲滅されることはなかったはずである。

盗賊たちも自分だけが生きるために、何でもやってやるという考えから、ひとりではなく組織になることで安定や安心を求めた。盗賊たちは、伯爵たちに利用され、必要がなくなると始末された。

夫のサンドロの浮気に激怒したミランダは、別居してバーデルの都で酒場を営んでいた。


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