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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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カルヴィーノの恋人-5


シナエルは快男児のカルヴィーノに恋してしまい、すっかり心は隷属してしまっていた。金の切れ目が縁の切れ目の裏家業で、酒場の店員と娼婦をかけ持ちしていたシナエルは、カルヴィーノに出会うまでは、惚れてくる客の男性を、めんどうな客だと思っていた。

カルヴィーノの心の中は、前世の記憶があるため、少しややこしいことになっていた。さらに子爵リーフェンシュタールと両想いなのである。前世の名前で呼ばれて抱きしめられ、唇を重ねるたびに、それだけで蕩けるような快感がある。
ただし、どちらも子爵で後継者を残さないといけない事情がある。
カルヴィーノは交わっても相手も魔力を強く持つ女性でなければ孕ませられないことを、父親のテスティーノ伯爵から聞かされて知っている。

レルンブラエの街から、酒場の主人サンドロが用意した幌馬車に、酒樽やシナエル自家製の果実酒の甕を積み込み、カルヴィーノは、どうしても一緒について行くと譲らないシナエルを連れて、バーデルの都へ出発した。

この時、ブラウエル伯爵はすでに軍備増強の方針で、ランベール王に捕縛されたバルテッド伯爵の考えとして、ベルツ伯爵と共通の、宮廷議会の名門貴族の独占を解放させるという考えには賛同していなかった。
ローマン王が宮廷議会に国政を任せているのは、ヴィンデル男爵が王が宮廷議会に任せておけば国政の舵を取る必要がない体制を作ったためだと考えていた。名門貴族から伯爵たちに宮廷議会の官僚が変わろうと、国王を宮廷議会が国政に関わるのを遠ざけておく体制が変わらない限り、どちらが宮廷議会の官僚でも同じことだと考えていた。
それは、リヒター伯爵を擁立するか、皇子ランベールを世襲させるかということに対しても、ブラウエル伯爵にはどちらが傀儡として宮廷議会の決定に従う国王かということの差でしかないとしか思えなかった。
ブラウエル伯爵が考えているのは国王、宮廷議会、そしてゼルキス王国に対抗する軍部組織という3つの権力がある新しい国政の体制を確立させるということだった。
そのため、ランベール王が遠征軍を出兵するために志願兵を募った政策に賛同したのがブラウエル伯爵だった。
伯爵領の内政による開発の限界が来る前に、新たな国土の獲得が必要と考えている人物である。
ヴィンデル男爵亡きあと宮廷議会の重鎮となったモルガン男爵や伯爵領の中でバーデルの都という財源を持つバルテッド伯爵とは、軍国主義のブラウエル伯爵とはまったく考えや意見が合わなかった。
ランベール王がバルテッド伯爵を捕縛したことも、ブラウエル伯爵は、ターレン王国の新たなる国土獲得のための軍組織を作るために協力的ではないバルテッド伯爵が、ランベール王自身によって排除されたと解釈した。
ブラウエル伯爵はのちの「パルタ事変」や、不正に対してモルガン男爵を誅殺した騎士ガルドと遠征軍の残留部隊こそがターレン王国の軍組織の礎となるだろうと考えた。
そのため、ブラウエル伯爵は、領主を失ったバーデルの都に介入しようと考えたりはしなかった。

子爵カルヴィーノが自領へ訪れていると知っていれば、訓練された兵や武器や装備などを見せ、ターレン王国にゼルキス王国へ侵攻することがいかに必要かを、ブラウエル伯爵が、自らカルヴィーノに語って聞かせたはずである。

ベルツ伯爵が、宮廷議会に子爵たちを参加させる計画のために、名門貴族の重鎮モルガン男爵を暗殺する強行手段を進めた。平民階級のザイベルトが暗殺しようとすることで、平民階級から貴族に成り上がった騎士ガルドが、国政に関与してくるのを牽制する効果も期待していた。
それはランベール王、正確には先代国王亡者のローマン王が、宮廷議会を掌握して、自分が思うように国中の女性たちを蹂躙することができるように、宮廷議会に妨害されないように威圧する議会参加によって粉砕されることになった。ベルツ伯爵はランベール王の権威の行使に対して恐怖を感じた。

国王の意に逆らえば爵位は剥奪され、投獄されると宮廷議会の貴族官僚たちに理解させるために、バーデルの都の領主バルテッド伯爵は犠牲にされた。
ラローマン王の崩御後に国王の座を世襲するのを妨害しようとした政敵のバルテッド伯爵を、ランベール王が自ら排斥したと、宮廷議会の官僚たちは考えた。
保身を考える官僚たちを、不安と恐怖によって国王に隷属させるための儀式だったともいえる。

フェルベーク伯爵とロンダール伯爵は、ブラウエル伯爵のように王政のありかたやターレン王国の繁栄について何をすべきかと考えたり、ベルツ伯爵のように国政に参加することで自らの地位や領土を維持する考えなどもない。
このふたりの伯爵は、自らの肉欲に忠実に生きているといえる。フェルベーク伯爵は好みの男性と、ロンダール伯爵は好みの少女と、どうすれば淫らに戯れて生きられるかしか考えていない。
それぞれの伯爵領に代々こつこつと貯め込まれた資産を散財するだけでなく、領民から多めに徴収した農作物などの余剰を換金するため、領主なきバーデルの都の混乱を利用した。
のちにこのふたりの伯爵たちは、女伯爵シャンリーに見透かされて、フェルベーク伯爵にはバーデル親衛隊ギレスを、ロンダール伯爵には美少女のメイドのエステルを、それぞれあてがわれて、シャンリーの奴隷売買の普及に協力することになった。

バーデルの都は大伯爵領各地から商人たちが、商業ギルドの規則を遵守して商売に励んでいた。
バルテッド伯爵の定めた法定価格で、商品は売買すること。これを違反すれば、バーデルの都では懲罰の対象となる。
露店を開くための場所を利用するには、ギルドの許可が必要であること。1日あたり銀貨1枚、人通りの多い中心部の広場や大通りは銀貨3枚の利用料をギルドに収めることで利用許可証が発行した。商人の無許可の取引を禁じた。
経済的に領民の統制を、バルテッド伯爵は行ってきた。また、自領を訪れる他の領民にも自領の規則を遵守させてきたのだった。


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