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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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カルヴィーノの恋人-4

フェルベーク伯爵やロンダール伯爵は闇市の情報を知り、自領の作物をまとめて闇市に横流しをしている。
領主のバルテット伯爵が不在の間に、市場の価格の取り決めを勝手に変え取引している。

(食糧も値上がりしているとしたら、バーデルの都で住人たちはまともに生活できないんじゃないか?)

カルヴィーノの予想通り、住人たちが暴動を起こして、貴族の邸宅や商館が火をかけられ、盗んだ品物を闇市で売った。カルヴィーノが追っていたベルツ伯爵領へ訪れていた盗賊オレステはこの暴動に巻き込まれてしまい、死ぬ前に金貨62枚と銀貨4枚が入った袋をシナエルに手渡した。

「これをノーラに……渡し……て……ああ、眠い」

これが盗賊オレステの最後の言葉となった。ノーラとの約束を、盗賊オレステは守ってバーデルの都で死んだ。

ノーラの家から朝帰りしたカルヴィーノが部屋で眠っていると、夕方になってシナエルが宿屋の部屋を訪ねてきた。

「カルヴィーノ、おなか空いてない?」
「空いてるな。もう夕方か」
「ねぇ、露店に行こう。私もおなかぺこぺこだから」

カルヴィーノは、レルンブラエの街の露店通りをシナエルに案内されて露店でいくつか料理を買い、シナエルの家にふたりで持ち帰った。テーブルの上には、いろいろな料理が並んだ。
シナエルと一緒に同じような料理でも店ごとに値段と量を比べてみたり、買う時もシナエルが値切ってくれたりした。カルヴィーノは、露店通りのやりとりや買い物をシナエルと楽しんだ。

「シナエルは、本当に料理が得意なんだな。このスープ、うまい」
「ふふん、まいったか!」

食事をしながら、シナエルはカルヴィーノから、人妻フリーデがトーラスという盗賊の親分に気に入られてしまい、バーデルの都にいるらしいことを聞いた。

「そうか、カルヴィーノ、バーデルの都に行くのね?」
「行くよ。バーデルの都にどうやって入るか、まだ考えがまとまらない」
「う〜ん、バーデルの都へこれから行くって人を、酒場で見つければいいんじゃない?」
「誰か心あたりでもあるのか?」
「あ、そうそう、カルヴィーノ、お酒あるけど一緒に少し飲む?」
「いただこう」

カップにシナエルが瓶から果実酒を注いでくれる。果実酒は辺境で作られていることなどや、作りかたをシナエルは説明した。

「これはすっきり口当たりがいい。酒場でも、これを注文すればよかったな」
「酒場じゃ、これは飲めないよ。だって私が作ったお酒だもん」

これは半年ほど果実と砂糖と強い酒を一緒に甕に入れて、日に当てずにしまっておいたものだとカルヴィーノは教えてもらった。

「カルヴィーノ、これをバーデルの都に売りに行くのはどう?」
「どういうことだ?」
「商人のふりをして、バーデルの都に届けに来たってことにすれば、中に入れるんじゃない?」
「商人のふりをするのは?」
「あなたと私で」

ほんのりと頬を染めたシナエルはそう言うと、カップの中の果実酒をぐいっと飲み干すと、椅子から立ち上がってカルヴィーノのそばに来た。
シナエルは胸を高鳴らせながら、カルヴィーノに思いきってキスをした。

「カルヴィーノ、子供っぽい私とするのは、嫌?」
「酔ったのか?」
「昨日の夜、ノーラとしたから、もう今夜は勃たないとかなら、私と一緒に寝てほしいの」
「やれやれ、困ったお嬢さんだ」

甘えられたのと、昨夜はノーラとしたのを指摘されて、カルヴィーノは深いため息をついたあと、笑顔を見せてから、幼い子供をなだめるように、シナエルの頭を撫でた。

翌朝からは「カルヴィーノ」ではなく、シナエルから「カル君」と呼ばれることになった。シナエルに甘えられ、腕を組まれた状況で、宿屋の女主人の老婆ペトラに挨拶に行った。

「おやおや、シナエルがそんなに男の人に甘えるなんてねぇ」
「お世話になりました」
「シナエル、いい男だからって、他の近づいた女に妬いて、せっかく見つけた恋人をあまり困らせるんじゃないよ」

宿屋から出て、準備が整うまでシナエルの家でカルヴィーノはしばらく暮らすことになった。シナエルの働いていた酒場の主人にカルヴィーノは相談すると、酒場の主人サンドロは、バーデルの都で酒場をやっている友人に酒を届ける仕事をカルヴィーノに頼んだ。

「気にはなってるんだが、様子を見て来てくれないか。最近は手紙もよこさないから」

シナエルから家に帰ってから聞くと、友人ではなく別居中の奥さんらしい。サンドロが若い店の店員とも浮気してつきあっているのが発覚して、激怒した奥さんのミランダは、開業資金をサンドロに出させると、バーデルの都で酒場を経営を始めて戻って来ない。どうやら、サンドロからカルヴィーノに店主に手渡すように頼まれた手紙は、戻って来てという懇願の手紙とシナエルは予想していた。

「カル君、これ開けて読んじゃう?」
「かわいそうだから、止めろ」
「えーっ、気になるよぉ」

カルヴィーノは、さっとサンドロの手紙をシナエルから取り上げた。
カルヴィーノは、人のつながりで助けられながら旅をするのはおもしろいと、シナエルにベッドの上で話した。

「そうやって、カル君は、あっちこっちで女の人として、困ったら助けてもらってるんでしょ?」
「そうだって言ったら、どうする?」
「ん、妬いてほしいの?」
「まあ、少しぐらいは」

カルヴィーノもシナエルの天真爛漫なところが気に入った。ただし、自分が貴族で子爵だとはカルヴィーノはシナエルを驚かせないように伝えていない。
シナエルは、カルヴィーノの股間のものが立派なので貴族の血統だと察した。酒場ではお姉さんたちから平民階級か貴族かは、アレの大きさで、すぐわかると聞かされていた。
カルヴィーノが身分を隠しているのは、彼なりに何か言いたくない理由があるのだろうと、あえて詮索しないでおいた。


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