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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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賢者の石の錬成-4

ロエルの意識の記憶の全てのふれた物、見た物、すべての物を構成する極小の光に置き換えていく。
ここが細工師にとって一番危険な状態。ロエルはまず、自分という存在を再構成しなければならない。

セストは世界で一番柔らかい物として、ロエルの体の手ざわり、揉み心地を思い浮かべた。これはロエルにとって、思いがけない発想だった。ロエルは自分の存在と、自分の知る世界のあらゆる存在を分ける時に、快感をたよりに自分の存在を確かめた。ロエルと愛し合い、交わった時に全身で同調した快感の記憶から、自分の存在を導き出していく。

セストと重ねた唇。セストがふれた肌。セストの舌が絡みつく舌。揉みまわされる乳房。吸われ、甘噛みされる乳首。舐められる耳。唇が這う首筋。撫でる髪。それからゆっくりとセストを愛撫して、快感を共有した感覚をたどる。セストの背中を撫でれば、自分の背中に快感が起きる。見つめ合う瞳にうつる自分の顔。深淵を見つめる者は、深淵から見つめられている。セストの乱れた息づかいと自分の息の乱れ。溢れてくる愛蜜。共有できる感覚とできない感覚。波を流す目と涙が伝う頬。セストとは違う喘ぎ声。
体の芯がぼんやりと輝くように甘美にうずく。生あたたかい波に揺られながら、快感が高揚していく、汗ばむほどの体の火照り。頭の芯が甘く痺れていく感覚。セストが射精した瞬間の、感じているのが、柔肌なのか、内臓なのか、器官なのか、全身に走る快感の奔流。
ロエルはゆっくりと目を開いた。消滅せずに存在している。全身で快感を感じていたから、しっかりと自分の存在を導き出すことができた。

「リーナ、魔石を融合する」

ロエルが最初に摘まみ錫杖に乗せ、ゆっくりと押し込んだのは、漆黒の小粒の魔石の一粒。小粒の魔石は、錫杖に埋め込まれ、ロエルの繊細な指先で撫でられると、錫杖の中に姿を消した。

(んあっ、あぁっ、体が熱いっ、はぅ、ああぁぁっ、あんっ!!)

ロエルは目を閉じて、魔石にふれた感触で、次に融合する魔石を選ぶ。全ての魔石を錫杖に沈み込ませると、深く息を吐いてから、ロエルは淡く沈み込ませた魔石の色に明滅する淡い光を放ち始めた錫杖の形を、こねて変えていく。こねて、こねて、こね続け、錫杖は鈍色の光沢を帯びた丸みのある柔らかな塊となった。

「リーナ、混ぜていく」

祈る気持ちで撫で球体に整えていくと、また存在の変わっていくのをロエルは感じた。目を閉じているのに、洞窟の煌めく星のような輝きが、塊の中に吸い込まれていくのが、ロエルには視えた。

「リーナ、私の声が聞こえる?」

目を開けたロエルの両手に包まれて、寒暖を合わせ持つ複雑な輝きの無色透明の硬い卵型の魔石があった。ロエルの手のひらに、ぬくもりと氷のような冷たさが
息づくように変化を繰り返しているのが伝わってくる。

リーナの返事がない。ロエルは必死に呼びかけ続けた。

(あ、ふ……あ、あ……ロエル、さん……)

リーナの意識を消滅させずに、錫杖を魔石に錬成したのを確認できた。
ロエルは緊張から解放され、口元に微笑を浮かべると、そっとすべすべとした魔石の表面を撫でた。

「リーナ、賢者の石になった感じは?」
(あの、恥ずかしいです……みんなには内緒にして下さい)
「わかった。リーナ、そのまま、ゆっくり眠って。起きる時は、みんなのところについてるから」
(……はい、おやすみなさい)

ロエルは、リーナの意識が変化する錫杖に取り込まれないように、自分の快感の記憶を、リーナに全力で流し込んだ。

(恥ずかしいのは、私も同じ。これは、セストには絶対に言えない)

ロエルは、洞窟の中を見渡した。小さな煌めきが、卵型の賢者の石を抱えたロエルを包み込んでいた。

「ありがとうございました!」

ロエルが言って頭を下げた。ロエルの実力では賢者の石は錬成できなかった。リーナの意識を守ってくれたのは、ドワーフ族の残してくれた力だった。

ロエルも一生を終えたら、この煌めきの中の小さなひとつになる。弟子として細工師の技を習得したセストも同じ。
死さえも、ロエルとセストを分かつことはできない。
たとえ、ドワーフ族が滅びても、細工師の作った物は使われ、他の種族でも細工師の技を極めようとする者は、この洞窟に導かれるだろう。

ロエルが扉を開いて、工房に姿をあらわした。人の気配に振り返ったセストは、ロエルを見つめると、何も言わずにいきなり抱きついてきた。

「ただいま、セスト」
「うん……お師匠様……おかえりなさい」

セストの声は涙声になっていた。作業台の上には、セストが鉱石から金属を取り分けて、銅の小さな塊が取り出されてあった。

それを見たロエルは、セストに思わずキスをせがんだ。セストは鉱石を細工師の技で柔らかくする時には、ロエルのことを思い浮かべている。さみしさや不安を細工師の修行して、まぎらわせていたのだろう。

「これが、賢者の石なのね。まるで生きているみたいだわ」

工房で、セレスティーヌが、マキシミリアンから賢者の石を手渡されて言った。

「マキシミリアン、賢者の石はできた。この後は、どうする?」

ロエルに聞かれたマキシミリアンが、リーナの意識が宿った魔石を、じっと見つめて答えた。

「リーナの宿った賢者の石を、ダンジョンに生成させる」

呪物である蛇神の錫杖をダンジョンが生成すれば、ラミアとなる可能性が高く、危険だった。

「ロエルが異界へ行って出会ったオークのことは、少し思い当たることがある。それは、おそらくニアキス丘陵のオークだろう」

賢者マキシミリアンは、古代エルフ族が大陸各地で、跳梁跋扈していた魔獣を駆逐するために、魔法の武器などを使っていた以外にも、魔獣を使役して戦っていたと思われることをロエルに話した。
ニアキス丘陵のオークは、使役されたオークの末裔であるらしい。


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