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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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賢者の石の錬成-1

ガルドを卵で産んだルーシーは、美しい湖と森の異界で、傷痕だらけのオークと何年たっても若く美しい容姿のまま、のんびりと暮らしている。

旅立ったガルドの幼い頃の思い出をたまに夢にみて、懐かしさとさみしさに泣きそうになっていると、夫のオークとガルドの思い出を話す。
夫のオークはガルドの旅立ちのために、仲間のオークたちも失っていて、自分よりさみしいだろうと思い、ルーシーは優しいオークにもたれかかったまま「一緒にいてくれて、ありがとう」と言う。
どんなにここが美しくのどかで素晴らしいところでも、一人だったら耐えられないとルーシーは思う。

蛇神の錫杖を抱えたドワーフ族の細工師ロエルは、涼しい風に頬を撫でられながら、柔らかい草を踏んで歩いていた。
この美しい光景を、恋人のセストにも見せてあげられないのが残念と思っていると、錫杖の中の僧侶リーナが話しかけてきた。

(ロエルさん、ここで見たもの、感じたものを、覚えておけば、あとでさわったら、セストさんに伝えられるかもしれないですよ)

錫杖にロエルとセストがふれて、リーナの記憶が共有できたのを思い出した。
「うん。賢者の石になっても、リーナにさわったら記憶が伝わるといい」
ロエルは、錫杖の中のリーナに話しかけながら、湖のほとりにやって来た。

湖の水に手をひたしてみる。とてもきれいな水で、気持ちいい冷たさがある。
「リーナ、わかる?」
(気持ちいいですね。杖を水につけてみてもらえませんか?)
ロエルが杖の先を水にひたしてみた。美しい波紋が広がる。
(残念、ロエルさんがお水にさわったみたいな感じは、わからないです)

風、水、土、光、どれも錫杖に魔石を融合するのには適している感じがわかる。ロエルが着ているセストの仕立てた羽衣も、ロエルに力を与えてくれている、

「ここは空の上?」
(山の上みたいに息が苦しくなったりしませんね)

神聖教団の神殿は、山の上でかなり空気が薄い。リーナは神殿や蛇神の異界にも行ったことがある。

「一人しかいないのに、ふたりの声が聞こえたから、こわかったわ」

ルーシーによると、子供が迷いこんできて、いきなり帰ってしまうことがあるらしい。また、迷子かと思ってルーシーが近づいてみると、ロエルが錫杖を持って水辺に立っていた。

「あなたたち、変わってない。でも、男の子がいない」

「ロエル……タシカ、ソンナ名前ノ子ガ来タ事アッタ」

オークがうなずいて言った。

「ガルドは、外の世界に旅立ってしまったから。もう、ここにはいない」

リーナは声に出さなかったが、ガルドという名前を聞いて考える。
傭兵ガルド。辺境の村を焼き討ちにした人物と、ロエルが子供の時に遊んだルーシーの子供は、同じ人物なのだろうか。

「ユニコーンを見かけたことは?」

ロエルに聞かれて、ルーシーとオークが聞き慣れない言葉に、顔を見合せた。

(ツノが生えた馬らしいです)

リーナも、傷痕だらけのオークとルーシーに聞いてみた。

「見タ事ガナイ」

オークが答えると、その隣にいるルーシーがうなずいた。
草の上に3人が座り、というべきか、リーナをふくめると4人で話している。

「リーナ、俺ガ怖クナイカ?」
(とても、優しい感じがします。こわくありません)

リーナは錫杖になってから、相手の見た目の雰囲気ではなく、感情や気持ちを感じ取れるようになっていた。

「ここは、天空の島ではないのかも。でも、ここは、かなり良い感じ」

ロエルは、果実をかじり、シャリシャリとよく噛んで飲み込むと、ニッコリと笑って錫杖の中のリーナに話しかけた。

「ロエル、もっと食べますか?」
「お腹いっぱい、ありがとう」

ルーシーも思い出した。
もっと幼児だった頃の面影が、ロエルの顔立ちに残っている。

「また遊びに来てくれるなんて、思わなかった。うれしいわ」
「ルーシー、遊びじゃなくて、私、仕事しに来た」

仕事という言葉を、久しぶりにルーシーは聞いた。

「仕事ッテ何ダ?」
オークがルーシーに説明を聞いてはいるが、よくわからないらしく首をかしげている。
たしかに、ふたりしかいないで、お金も必要なく、果実を食べて暮らしているなら、仕事と言われても意味がわからないかもしれないと、ロエルは思う。

ルーシーの手が届かない高いところに実った果実をオークがもいでくれる。他の人ができないことや、一人では大変なことを頼まれてすること。
そこまではルーシーの説明でオークは理解できたようだ。

「ダンジョンノト同ジダナ」
(えっ、ここにもダンジョンがあるんですか?)

ロエルが魔石を見せると、オークが言ったので、リーナが質問した。
ダンジョンが外にあることや、今はなぜか外への扉が現れないとオークは言う。

「匂イガシナイ。見ツカラナイ」

むこう側で蛇神の異界の門が開いている影響で、オークとルーシーが暮らしている異界の門がつながらないとは、僧侶リーナにはわからない。

「ソノ石アルゾ。欲シイカ?」

オークはダンジョンで拾ってきたが、ガルドがキラキラしていなかったので興味を示さなかった渋く黒みかかった色合いの琥珀色の魔石がかなり入った小袋を洞窟から持ってきて、ロエルに手渡した。
その中でも、漆黒に近い足の小指の爪ぐらい小粒の一粒を見つけた。
ロエルはこの一粒だけ欲しいと、オークに言った。

「ソレダケデ、イイノカ?」
「これはすごく珍しい石。本当にもらっていい?」
「イイゾ、ロエル、ヤル」

オークがロエルのうれしそうに目を輝かせている表情を見て、目を細めて笑う。

「リーナ、これがあれば失敗しない」

ロエルは漆黒の魔石を、他の魔石の入った自分の小袋に、そっと入れた。
静寂を纏う漆黒。
この一粒の効果は大きい。


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