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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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禁忌の呪術-5


(お嬢ちゃん、なかなかやるな)

兵士たちの腕前を確認するために、木刀を手にソフィアは一人ずつ相手にしているのだが、動きに無駄がない。
ほとんど、手元のあたりを強く打たれ、兵士たちは手が痺れ、木刀を落とす。
木刀の切っ先を喉元に突きつけられて降参させられたり、木刀を頭に振り下ろされかけて悲鳴を上げてへたれこむのは、まだましな兵士である。

ガルドの戦い方とはちがう。
頑丈なオークたちと殴ったり蹴ったりしながら、遊んで鍛えた動きは、下手に攻撃を避けたら、次は詰むので、積極的に攻める。
ソフィアの戦い方は、捨て身になる強さはないが、できるだけ疲れないように、相手の隙を突く。

「うおおおっ!」
「くっ!」

ガルドはソフィアの頭上に激しい一撃を振り下ろした。ソフィアが避けきれないと判断して、一撃を受けた木刀が折れてしまった。
周りから歓声が上がる。
ソフィアに軽くあしらわれて、悔しがっていた兵士たちは、ガルドの勝利に興奮していた。

(ソフィアぐらいの腕前の奴らが王の警護でたくさんいたら、全滅する。遠征軍に使える奴は派遣してないってことだ)

「立てるか?」

ガルドが手を差し出して、転倒したソフィアを引き起こしてやろうとした。すると、ソフィアが顔を上げるとガルドを睨みつけて、その手を払った。

衛兵にしては強すぎる。だとしたら、目の前にいるブルーノは、誰なのか。
ソフィアは、目の前にいるのが騎士ガルドだと気がついた。
だが、この場で正体を聞き出したところで、ソフィアは兵士たちに囲まれていて逃げることもできない。

(木刀でも、ガルドはこの場で私を撲殺できた。女だから、情けをかけられたのか?)

それが悔しくて、ソフィアは思わずガルドの手を払いのけてしまった。
ゆっくりと立ち上がり、ソフィアは深く息を吐き、気持ちを落ち着けた。

「降参です。貴方は強いですね」

ソフィアはそう言って、ガルドに軽く頭を下げた。ソフィアが休憩を全員に言い渡し、その場を離れようとしたガルドに兵士たちの訓練の教官を一緒にしてほしいとソフィアは頼んだ。
命令する口調ではなく、頼まれたので、ガルドも正体がばれたのを察した。

ソフィアは1ヶ月間、訓練をして見込みがある者を衛兵にしようと考えていた。しかし、最初に衛兵候補にしようと見込んだブルーノが、敵の騎士ガルドだとわかってしまった。
どうしてこの場で撲殺しなかったのか、いずれは殺されるとしても、ソフィアはガルドが何を考えているのか、知っておきたかった。

「ソフィアは俺の女にする。そのかわり牝狐の娼館に行く金は俺がおごってやるから、遊んでこい」
「へへっ、お嬢様は乱暴で、俺らもやるなら指ぐらい折られかねないなんて話してたところだったんで、助かりますぜ」

騎士に叙任され、鎧や剣と一緒に、王都に館を建て使用人を雇うぐらいの大金も渡されたが、使わずに持っていた。正確には、シャンリーに預けておいた。
シャンリーはガルドが出兵すれば、寄せ集めの素人の兵士しかいないとわかっていたので、いずれ死ぬと判断して、横取りする気で預かっていたのである。

シャンリーは宿場街の娼館にガルドの兵士たちが、毎晩やって来ているのを、離れた領地で手紙で店から知らされて、ようやく、ガルドがゼルキス王国に寝返った情報が嘘だとわかった。

シャンリーは女伯爵として、街に奴隷市場を作る準備に忙しく、領地から動けなかった。
王都トルネリカを制圧して、自分が王になろうとガルドが考えているとしても、ガルドが王になってから呪いで命を握ればいいと考えて、シャンリーはあえて、王都トルネリカの貴族たちに、指示を出さなかった。

ソフィアは兵士たちとは離れて、宿屋の一番良い部屋で宿泊していた。食事も兵士たちとは別で、宿屋の部屋で済ましている。兵士たちの女遊びについての話を聞かれる心配がなかった。
ガルドや兵士の話を聞いている酒場の女主人のおかみさんも、貴族令嬢のソフィアとは、身分を気にして必要以上に話すことがなかった。

後日、ガルドの隣で、ソフィアが兵士たちと同じように酒場で食事をするようになった。おかみさんはガルドの愛人だとソフィアのことを思うようになり、やっと打ち解けて、あれこれソフィアにも気さくに話しかけるようになった。

ガルドがターレン王国の国境の関所で兵士を鍛えている間、辺境の駐屯地で待機している兵士たちは、蛇神のしもべの影響を受け始めていた。

神馬がいる村以外では、淫らな夢に悩まされ、次第に心が蝕まれていく。
聖騎士ミレイユ自身は、魔剣ノクティスの加護で心が蝕まれることはない。ゼルキス王国にも異変が起きていないか聖騎士ミレイユは気になり、ニアキス丘陵へ森を抜けて出て、ゼルキス王国を目指して移動していた。
ガルドの遠征軍を聖騎士ミレイユは、時期がずれて見かけてはいなかった。
もしと、敵軍の軍勢を見かけていたとしても、騎士団の隊長たちを連れて攻め込むために、ゼルキス王国へ帰還する選択をしていただろう。

深夜、宿屋の裏口で、ソフィアの部屋の鍵を、ガルドは宿屋の主人から受け取った。ガルドは貴族の爵位としては士爵であり、ソフィアの父親のモルガン男爵よりも身分は上である。謀叛の重罪人として爵位を剥奪するには、捕らえて形式上は裁いた記録を残さなければ、爵位を剥奪できない。
また、ガルド謀叛の情報は、王の廷臣のごく一部の者たちしか知らず、隠蔽されていた。情報が流れたら、地方領主たちは宮廷の議会が行った政策について、必ず追及してくるだけでなく、暴動を起こしかねない。
モルガン男爵がガルドが国内に潜伏していると知っていれば、娘のソフィアにガルドを殺すか捕らえるように命じていただろう。
ガルドは、ゼルキス王国に寝返ったことになっている。
ソフィアの部屋にガルドは侵入した。

「私を殺しに来たのですか?」


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