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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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禁忌の呪術-4


騎士ガルド謀叛の報告がもともと国境を守備していた守衛によって、王都トルネリカの宮廷にもたらされたのは、ガルドが国境から出てわずか1ヶ月後である。

焼き討ちされていなかった村は、ターレン王国軍の駐屯地として占領された。
占領とはいえ、ガルドは進軍のために持参していた食糧を補助部隊に、村で配布させた。
脅しではなく、懐柔する策を行った。
村人たちや、配布を行った半数の補助部隊は、ガルドが貴族階級を廃止して、ターレン王国を平民階級の王国にするという意見に賛同した。
行商人たちが戦の噂を聞きつけて、ゼルキス王国へ逃げた結果、村には生産した果実酒はあれど、食糧不足だった。

ターレン王国の国境警備をもともと任されていた守衛は、通行人が賄賂を渡せば無条件で出入りを許可してきた20人ばかりの衛兵である。
ガルドの引き返してきた1000人の兵士に対して、戦わずに王都へ逃げようとしたが、全員、途中の宿場街でガルドの手下たちに捕らえられてしまった。

王都トルネリカに伝えられた偽情報は、騎士ガルドが1000人の兵士を手土産に、ゼルキス王国に寝返ったというものであった。
残された国境の後発隊の指揮官が必要なので派遣を望む、というものであった。

シャンリーはこの時、すでに王都にはおらず、手に入れた自分の領地の街へ向かっていた。王都にいれば、ガルドの謀叛に対して、ランベール王に進言して、ガルドとの交渉に向かっていただろう。
侵略されて全てを奪われる前に、領地の割譲を提案する。そして、シャンリーはガルドに呪いをかける。

ガルドの率いる遠征軍の補給物資の輸送を任されていたのは、モルガン男爵の令嬢ソフィアであった。
そのまま国境に、宿場街にいる1000人の兵士を守備隊として1ヶ月間待機させ、その後は100人のみを衛兵として採用して、900人は解散させるという命令が下された。

「もしも、ゼルキス王国に2000人の流民を連れて行ってくれていたら、奴は英雄だったのに」

ソフィアの父親モルガン男爵は、娘にそう言っていた。
王都トルネリカの廷臣たちが持つ、遠征軍に対する認識は、

王都へ流れこんできた、2000人の困窮した流民

というものであった。

「ソフィア、餌(えさ)が少ないと言うようなら、それを持ってターレン王国から出て行けと奴らに言ってやれ」

令嬢ソフィアは、1000人分の食糧と手渡す功労金を、王都トルネリカから国境である関所までの輸送した。

貴族階級が人間ならば、平民階級は家畜ぐらいの意識の中で育てられた令嬢に対して、ガルドの手下50人は元奴隷から平民階級になり、首領のガルドは男爵よりも上の爵位の士爵だと知っているので内心では、ソフィアに対して苛立ちを感じていた。

「てめえら、俺が手をつけるまで、小娘は、お嬢様扱いにしておけ」

ガルドは辺境の拠点に先発隊は引き上げさせておき、後発隊の兵士たちにまぎれこんでいた。
ソフィアが国境の関所に来た日も、騎士としての軍装や衣服ではなく、兵士の服装で、兵士たちにまざって酒場で酒を飲んでいた。
王都トルネリカから、ソフィアが到着後5日間ほど、幌馬車が列を作って街道を食糧を運搬してきた。
1000人分の1ヶ月の食糧にしては少ない。ガルドは、10日間ほど輸送が続くものと予想していたが、半分になっている。

(モルガン、あいつ、食糧を売って、兵士に支給する金にあてやがったな!)

輸送されてきた食糧が無断で持ち出されたりしないよう、ソフィアは腰に剣を帯びて5日間、夜も見廻りを続けていた。
ガルドが、他の兵士たちよりも体つきが大きく、逞しいので、10人の衛兵候補の最初の一人に初日で選んだ。
騎士ガルドだと知らずに、毎日の見廻りに同行させている。

「ブルーノ、私が思っていたよりも、しっかり統制されているようです」

3日目の夜の見廻りの時に、ソフィアが話しかけてきた。ガルドは、ブルーノという関所の衛兵になりすましていた。
素人とごまかすには、ガルドは見た目の雰囲気で無理がある。

父親の代わりに1ヶ月で国境警備の衛兵を10人選ぶために来たこと。
運び込まれた食糧があるうちは国境で滞在が許されているが、それが尽きたら、選らばれなかった者は渡された金を持って立ち去ること。
自分の今回の任務について、ソフィアは説明した。

「食糧の配給をしっかり計算して、分配できる人は誰かいますか?」

ガルドは酒場を兵士たちの食堂代わりにして、兵士たちが食事できるようにしてはどうかと提案した。
この提案を聞いて、令嬢ソフィアは驚いてしまった。

「配給された物資を軍の人間以外の者に任せるなど。問題が起きた時、軍の人間ならば軍規に従い処罰できますが、軍のの者でなければ、処罰できません」

「それぞれ自炊するよりも、まとめて作って配るほうが無駄が少ない。それに、酒は支給されないが、食材を店が仕入れの手間や買いつけでかかる分の浮きで酒を配らせる。店は兵士たちが飲んで、踏み倒す分の金を取りそびれない。店は得があるから、ごまかす必要がない」

ガルドがソフィアの思っていたよりも整然と話すのを聞いて、さらに驚いた。兵士たちと話しているときの様子とは、まるで別人のように思えた。

「いいでしょう。ならば、問題が起きた時は、貴方が責任を取るのであれば任せます」

配給された食糧は、5日間の輸送で全部だとソフィアは知らされた。
父親が出発前にソフィアに言っていた言葉の意味を理解した。

「これだけあれば、あんたらが酒を飲みすぎなきゃ、1ヶ月なんて余裕だよ」

酒場の料理人であるかっぷくの良いおかみさんが、ガルドとソフィアに豪快な笑い声を出しながら言った。

ガルドは村を焼き討ちした時、村の女性たちに食事を作らせた。先発隊の食糧は1000人分きっちりあったので、余裕がある。


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