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プリンセスゲーム
【ファンタジー 官能小説】

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プリンセス・ゲーム-4



3年が過ぎました。
首回りや胸にフリルのついたブラウスを着て、クラシックな乗馬ズボンをはいた娘がサージです、大きなダッフルバックを両手に抱えて、小舟に放り込みます。
太陽に透けると黄金色に光る髪をポニーテールにして、元気に揺らしています。
わたくしはというと、その後ろを、黒いシフォンのロングドレスという、お嬢様風の格好で、ここまで歩いてきました。
荒れ地を長距離歩くには場違いな高いヒールのサンダルがよれて、足首をねんざしそうになります。
実際には鍛えているのでそんなことはありません。ただ、特注の細くて長いヒールは武器にはなってくれますが、柔らかい地面には杭となってしまいます。
「今日は風が強い、大丈夫ですかい」船頭が言います。
沖を見ても少し白い波が見えるくらいでした。
「どうってことない、出して」
広い水面に出た途端、後悔しました。風にあおられて船がなかなか進みません、さらに向かってくる波に翻弄されて、船が大きくゆすぶられます。しぶきに全身が濡れます。
「大丈夫? 顔が白いよ」サージがのぞき込みました。
今日まで自分が船に弱いなんて思ったことがありませんでした。
「引き返しますか」船頭が心配して言います。
「いいえ」わたくしのことでそんなことはできません。
「ゆっくり行ってくれますか。 あなたは帰れる?」
「いいや、今日はむこう岸に泊まりやすよ」 船賃はたっぷり渡してありますが、それで出るような笑顔ではありませんでした。
サージは私たちに比べて、強くも早くも注意深くもありません。でも人を惹きつける力はだれよりもありました。
王となるものに求められるものはそれでした。ひとりの者が国を建てるなんてことはできません。個人がいくら強くても所詮一人です。何人かに一度にかかってこられれば負けます。
しかし、良い策士と良い将軍を集められる者は国を支配できるのです。≪サージが女王となってくれればいいのに≫ 不敬なことを考えてしまいます。
王室魔術院は頭脳ですが古くなって、動脈硬化を起こしてきていました。
王室警護隊は力ですが、魔術院を従えさせようとしています。
そして、図書館という組織があります。これは魔女やウイッチを束ね、黒魔術集団に立ち向かうためのものですが、魔術院が弱い今、警護隊は、日和見的なこの組織を抱き込んで用心棒のように使っていました。
それができたら、やがてクーデターとなるかもしれません。
議会はがん細胞のように国を蝕みます。王権派を排除し、議会派の一員である公爵の男をサージの婚約者にさせようとしています。
圧力に負けた父王からの一方的な婚約発表は今の時代にはあまりそぐいません。
それで大学からプリンセスが呼び戻されました。一度正式に顔を合わせておいて、お見合いという形にしたいのです。
既に姉姫の婚約者は議会派の人間でした。結婚式の日にサージの正式な婚約も発表したいのでしょう。
そうなったら彼らは内部から王家を操ろうとするでしょう。そして議会派は人民派と改名し、次は予算を引き締め、軍を掌握しようとするのです。
それらをなんとか押さえているのが王室魔術院でした。
今は軍と議会の両者が微妙に結託して、まずは魔術院の牙を抜こうとしていました。敵の敵は味方というやつです。
そして図書館が魔術院からの呪いの防波堤となりました。


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