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【学園物 恋愛小説】

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想[14・再]-1

高校の頃ショートカットだった髪は鎖骨ほどまで伸び、綺麗な栗色にカラーリングされている。全くしなかった化粧も、今では大分うまく出来るようになった。大学入学と同時に始めた駅前のカフェのバイト帰り、安達主里はトントンと肩を叩かれ振り返った。
「あっ…」
そこには、当時と全く変わらない姿の相田暁寿が、これまた全く変わらない笑顔で立っていた。
「よっ、久しぶりっ!」
たくさんの人が行き交う歩道の端で、二人は立ち止まった。
「ホントだよねぇ。何ヵ月ぶりだろっ!?」
二人はまるで、久しぶりに会う友達同士のように笑い合っていたが、実際、暁寿の心臓はドクドクと激しく波打っていた。
声を掛けるか、否か、10分以上迷っていたのだから当然のことだろう。
しかし、主里から見る暁寿は当時のまま、自身有りげで凛とした好青年だったので、そんな心中を悟ることは無かった。
「んー、去年の11月からだから…10ヵ月くらいか?」
「ぇえっ!もうそんなに経つんだぁ。早いねぇ」
そう言いながら口に手を当てて笑う主里を愛しく思ってしまう中、暁寿は戸惑いも感じていた。
「大人っぽくなったな…」
つい、思っていたことが口に出てしまう。素直とでも言うのか…。もちろん、主里にははっきりと聞こえている。同い年の、しかも以前付き合っていた子に対する気持ちが、急に恥ずかしくなった暁寿は「あっ、いやぁ…その」などと誤魔化そうとしている。
しかし、主里はくすくす笑いながら「ありがと」と言って、自分の顔をペタペタ触った。
「私、大人っぽくなったかなっ!?」
昔のようにはしゃぐ主里を見ても、どうも違和感を覚えてならない。
髪のせい?化粧のせい?それも少なからずあるが…どれも違うような気がする。
「あ、あぁ。すっげぇ大人っぽくなった」
「本当!?」
きらきらと顔を輝かせながら、嬉しそうに主里は笑った。
ぎこちなく頷く。
「そっかぁ。嬉しいな」
「ところで!」
やはり、雰囲気の違う主里には昔のように接することが出来ない。喋り続けていないと、居たたまれない気持ちになる。
「その、彼氏とは順調か?」
いきなり、話題が変わったので主里は驚いた表情をしたが、ふっと柔らかな笑みを浮かべ、目線を暁寿からずらし口を開いた。
「うん、すっごい順調だよ」
その表情、その言葉。たったそれだけのことで、順調どころか、互いにどれだけ想い合っているのか、ひしひしと伝わってくる。
目の前にいるのは、暁寿が知っている主里ではない。自分と違って去年よりも、確実に大人になっている主里を見て、暁寿はなぜか寂しくなった。
「そうか…」
「で、暁寿は?今、誰か大事な人がいるの?」
暁寿は、相当プライドが高い。
「うん!一個上の、お姉さまが」
そう言いながら、恥ずかしそうに頭を書く。しかし、心の片隅で「自然に言うことが出来ただろうか」とはらはらしていた。
つい、嘘を付いてしまった。今どころか、暁寿は主里と別れてから誰とも付き合っていないのだから。
しかし、そんなことには全く気が付く様子もなく主里は「そっかぁ」と嬉しそうに笑った。
「良かったねぇ。私、暁寿の約束通り、今幸せなの。だから暁寿も…」
澄んだ瞳が暁寿を捕らえる。
「絶っっ対、幸せになってね!!」
暁寿は、胸がキュウッと締め付けられるようだった。オレが幸せになるためには、主里がいなきゃいけない…。
言ってしまおうか。正直にありのまま…。
「はぁ〜。それにしても…私も大人っぽく見えるのかぁ。暁寿は」
目の前の、大人びた彼女に…。言ってしまおう。オレの気持ちを…。


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