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【学園物 恋愛小説】

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想[14・再]-2

「全然変わってないね」
なぜか暁寿はその言葉にぴくんと反応してしまった。「オレは、おまえがいなくなったその日から何も変われないでいる」という言葉を、ぐっと飲み込んだ。言ってはいけないような気がした。いや、今の暁寿には言えなかった。
主里が大人っぽく見えたのは、髪のせいでも、化粧のせいでもない。主里の心が、確実に大人になってるんだ。あの違和感は、オレ自身が子供っぽく思えたんだ…。
そして、自分自身に問い掛ける。

変わらないといけないんじゃないのか…?

「オレ、全然変わってない?」
「うん、変わってない。髪型とか全然っ」
「変わんなきゃ、ダメかなぁ」
「それなりにね…」
「そうか…」
暁寿は、少し考えてから主里に気付かれないよう、ケータイを取出し、左手に収めた。
「オレさ、これから髪切り行くわ。イメチェンて奴?だから、またいつか…」
「いいじゃん。それじゃあ…またね」
主里は暁寿に軽く手を振ると、背を向け歩きだした。振り返らず、立ち止まることもなく真直ぐに…。
主里の後ろ姿が見えなくなると、暁寿はケータイを開き電話帳から『安達主里』を削除した。
「まじでお姉さま狙ってみっかなぁ」
そう小さく呟くと、主里が歩いていった方向とは逆にある、行きつけの美容室へ向かった。





主里は、背中に視線を感じながらも、絶対に振り向かないと誓った。
昔から変わらない、暁寿が嘘を吐くときの癖。それに気付かないフリをするのは、結構神経を使った。もう少しで「嘘だぁ〜」と言ってしまいそうだったが、何とか堪えた。主里にはなぜ暁寿が嘘を言ったのか分からなかったが、何となく触れない方がいいのでは、と思っていた。


今の主里に出来る精一杯の想いやり。

「絶対幸せになって…」

もう一度口に出して呟く。


数メートル先から、歩いてくる想い人に向かって、主里は手を振りながら駆けていった。


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