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【学園物 恋愛小説】

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想[1]-1

黄色い声が体育館に響く。もちろん、その中に私の声もあったりして…。エヘヘ、私ミーハーなんで。
「キャーッ、名屋君かっこいいーっ!!」
私たちは今、バレーの決勝戦を見ている。三つある内の真ん中のコートの周りにはたくさん人が集まっている。私は丁度、審判の右斜め後ろに座っている。言うなれば特等席。真向いではΑ組の人たちが大きな声で応援していた。


今日は待ちに待った体育祭!私の永遠のアイドル、名屋 鋼吾君の運動神経をこの目で見られる、素晴らしき行事。ティーチャーたち、ナイスです。素敵な行事を作ってくれてありがとーっ!!
一人教師に感謝して、ちょっとでも試合から目を離すと
「こぉごくぅーん、ナイスアタックゥーッ」
「え?今何したの?ちょっ…あー!見てないっ!」
こういう風に名屋君のプレイを見逃してしまう。くっそぉ〜…やらかした。
が、そんな私の心中を察してくれたかのように、鋼吾君は相手のコートラインギリギリのところにアタックをブチかましてくれた。
「ちょっとちょっとちょっと!」
私は、隣で悲鳴にも似た声援を送っている『山川 未宇』の肩をバシバシ叩いた。
「今、私のために打ってくれた!」
「はぁ?あんた何言ってんの!自意識過剰もいい加減にしなっ。黙って鋼吾君のプレイ見てなさい!ギャーッ、ナイスファイトォーッ!!」
お前こそ黙ってみてろよ…なんてことは言わない。だって、私も試合に集中したいからさぁ。
私の目の前でクリティカル且つスピーディーなプレイをする名屋君…あーもー最高!!見てよ、あの爽やかに揺れる細い髪。真剣な表情の中に見え隠れする優しさ。横を向くと浮き出るセクシーな首筋。Τシャツを肩まで捲り上げ露になった上腕二頭筋。ジャンプした時にちらりと見える鍛えぬかれた腹筋。程よく焼けた肌。スポーツをしている人間特有のふくらはぎの筋肉。動くたびキュッキュッと音を立てるバスケシューズ。バレーしてんのにバスケシューズ。ぬあぁ〜っ!死ぬ、見てるだけで死ぬ!眩しい、後光が射していらっしゃる!3年Ε組、出席番号2番、安達 主里、一生あなたに着いていきます。私のアイドル、フォーリンラヴ…!


てな訳で、私のミーハー振りわかってもらえたかな?私は自他共に認めるミーハー女。そして、私の中でミーハー故の勝手なルールがある。それは『アイドルに恋をしない』!!いくら名屋君を好きになったってどうせ実るわけないんだもん。名屋君は同じ学校、同じ学年だけど、私にとってはテレビの中だけの芸能人と同じな訳で、「お話したい」とか「付き合いたい」とか「あんなことやこんなことしたい」なんて思わない。芸能人にそんなこと思っても叶わないでしょ?芸能人と同じように私は名屋君を見ている。どんなに想っても手の届かない存在。だから、私は名屋君を好きになったりしない。あくまで『ファン』なんです。簡単に言えば『LOVE』じゃなく『LIKE』です、うん。


私がミーハー解説をしている一方、試合はかなり白熱していた。相手からのサーブをΑ組の名前すら知らない人が取った。そのボールは天高く上がった。名屋君は一生懸命ボールを追い掛ける。それは私たちの頭上を軽く通り越していった。


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