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痴漢の巣窟書店 −特急列車添乗員―
【痴漢/痴女 官能小説】

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第9話 OLの凌辱願望-2

 痴漢の手の甲が軽く尻に触れただけでも、嗣美は小さく体をのけ反らせるほどの快感を覚えた。力が抜け、思考が停滞した。
 逃げなければと、頭の片隅では思ったのだが、身体は動かなかった。彼氏との気持ちの良いセックスを妄想した事で出来上がっていた身体は、手の甲で軽く尻に触れられるという刺激だけで、動けなくなる程の快感を覚えてしまったのだ。
 それに、更なる快感を求める気持ちも、湧いてきてしまった。もう少しくらい、触られてもいいかな、と思ってしまった。彼氏とのセックスが無くなった分、もう少しここで気持ち良くなったって、許されるのではないか、と。
 嗣美はしばらく、痴漢に尻を触らせた。それは、想像以上の快感を嗣美にもたらし、嗣美の身体から益々《ますます》力を奪って行った。もうそろそろ、逃げなければ、と思った時には、全く体に力が入らなかった。ピクリとも動けず、相手の手を払いのける事すら出来無かった。
 デートを中断され、彼氏との気持ちの良いセックスへの期待を裏切られた嗣美の身体は、痴漢への油断を生み、付け込む隙を与えてしまった。嗣美が動けずにいるのを良い事に、痴漢の手は、嗣美の股間を侵略して来た。デニムのショートパンツの上から、男の指は嗣美の股間を弄《まさぐ》った。
 嗣美は感じた。腰をスィングさせ、背中をのけ反らせ、首が頭の重みを支えきれなくなり、何度もカクンカクンと傾いた。痴漢に、嗣美が感じている事が丸分かりになる位に、嗣美は反応してしまったのだ。
 痴漢が、嗣美を感じさせたことの喜びと興奮に高揚しているのは、その息遣いと手の動きのエスカレートで、嗣美にははっきりと感じられた。それを察知することは嗣美に、壮絶な羞恥の念や屈辱感や敗北感を与えた。更に、彼氏に申し訳ないような、罪悪感や背徳感、自己嫌悪等も湧き上がって来る。
 泣きたくなるような惨めな感情を胸中に噴出させながら、それでも嗣美は動けなかった。股間から突き上げる快感が、嗣美の自由を奪っていた。数分間に渡って嗣美は、快感に溺れて腰を振り、首をカクンカクンと傾けるという醜態を、その痴漢に曝し続けてしまった。痴漢を愉しませてしまった。喜ばせてしまった。支配欲を満足させてしまっただろうし、征服したという充足感を与えてしまっただろう。そう思うと、今でも悔しくてたまらない。
 同様の事が、何度かあった。濃厚なベッドシーンのある映画を友人と見た直後の電車の中でも、友人の隣で痴漢され、感じてしまった。友人にバレなかったのが幸いだったが、それも、今思い出しても恥ずかしく屈辱的な出来事だった。
 公園でいちゃつくカップルを見た直後の痴漢でも、嗣美は感じてしまった事があった。数分間に渡って、尻と股間への侵略を許し続けるという恥辱にまみれたのだった。
 今、媚薬の影響で股間に疼きを覚え、歩くだけの摩擦と衝撃だけで快感に苛まれ、ドアに体重を預けている嗣美には、痴漢に感じさせられた時の記憶が、まざまざと蘇って来ていた。その時の快感が、現実のものとして想起されている。
 嗣美が感じているのが、媚薬がもたらしている現実の快感なのか、記憶の中の快感なのか、もはや判別は難しい。それらが完全に一体化して、嗣美を苛《さいな》んでいるのだ。
 1人で特急電車の乗降ドアにもたれかかりながら、嗣美は激烈に感じていた。腰は小さくスィングしていて、首はカクンカクンと何度も傾く。背筋から尻にかけては、艶めかしく深いS字カーブを形成している。決して巨乳では無い乳房が、ボンッ、と前方に突き出されている。
 出張先から帰る途中のOLの嗣美は、スーツスタイルだ。濃いチャコールグレーのジャケットの下は、身体にフィットした感じのT−シャツだ。伸縮性に富む布地が、ぴったりと華奢《きゃしゃ》な身体に密着している。ジャケットと同色の、尻を覆っているタイトスカートも、それの立体形状を生々しく伝えるべく、腰から太腿にかけての全域に渡って密着していて、皺も弛みも全く無い。尻の右側の肉塊と左側の肉塊が、しっかり独立して浮かび上がっていて、その間にある細長い三角形の窪《くぼ》みが、尻の割れ目の所在を強調している。
 S字に曲げられた嗣美の身体は、布地越しに立体形状を誇示している乳房と尻を、更に力強く前方と後方に突き出している。右の乳房と左の乳房と、尻の右の肉塊と左の肉塊が、ボッコン、ボッコン、ボッコン、ボッコン、と力強い圧迫感を伴って飛び出しているのだ。
 決して巨乳では無いし、尻も大きな方では無い嗣美だが、いや、そんな嗣美だからこそ、深いS字カーブを作ることで乳房と尻が存在感を増している状態が、何ともエロティックな外観を形作るのだ。
 そしてその顔は、目が焦点を失い、頬は緩んで口角にも力が感じられない。恍惚《こうこつ》という言葉がぴったりな、快感に溺れている事がすっかり露呈した表情だ。だが、下唇を前歯で噛んでいる状態は、嗣美の心にある屈辱感や罪悪感や自己嫌悪を吐露している。
 痴漢に感じさせられて、悔しかった、恥かしかった、彼氏に申し訳なかった、親にも顔向けできない、そんな思考と感情が、その表情から見て取れるのだ。
 表情と、艶《なま》めかしいS字を描いた身体、ボッコン、ボッコンの乳房と尻。男に犯される為だけにある物体、涌井が見ればそう言っただろう。ここには隠しカメラが設置されていない上に、涌井は美緒を犯している真っ最中なので、嗣美の様は見てはいないが。
 嗣美は、自分では意識もしない内に、飛び切りエロティックなポーズを取り続けながら、股間の疼きに苛まれている。先ほど歩いた時に身体を駆け抜けた快感は、ようやく落ち着いて来た。しばらくじっとしていたので、さすがに股間には刺激は生じておらず、快感も覚えてはいなかった。
 だが、また一歩でも歩けば、快感が襲い掛かって来る。その事は、嗣美も悟っていた。股間が異様なまでに敏感になっているのが分かるのだ。そして、疼いている。ドアにもたれかかったまま動けない。


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