佐川-4
それから若菜はマギーと石山と共に第三会議室に入り、元治の証言から事件を考察する。
「しかし川口元治って、一体どうやって情報を集めたんだろうね。」
「私達で分からなかった事、良く分かってましたからね。」
「当事者なら分かってて当然って事か。」
「川口元治は本当に、3億円強奪事件の実行犯、金成和弘の関係者なんでしょうか？彼が嘘を言っていたようには見えませんでしたが。」
「それは今、警視庁で調べてる。年齢的にもし血が繋がってるなら、金成和弘の孫ぐらいね。て事は、調べでは金成和弘は未婚であったとなってるけど、子供はいた事になる。未婚だけど子供はいた…、もしかしたら妊娠したパートナーと結婚する予定だったとか、記録に残っていない事実がありそうね。今更聞き込みとか捜査の仕様がないし、調べるのは困難だけど、操作上、金成和弘の孫として考えた方が先に進むかもね。」
「金成和弘の親は国分署の警察官だったんだろう？」
「金成由紀夫巡査部長ですね。マスコミで和弘が犯人じゃないかって騒がれてからもそのまま職務を続けていた事が、一部では異動もないし辞職もしなかった事から、警察が金成由紀夫に対して何の動きもしないって事は和弘が犯人じゃないって言う自信があるからなんじゃないかと言われた理由でもあるからね。結局定年まで警察にいましたから。ごく普通の警察官として。」
「堂々と警察官を続けている姿を見せて和弘は犯人じゃないと言うアピールをしていたとも取れるな。」
「あり得ますね。しかし謎があるんです。」
「謎とは？？」
「金成和弘は何者かに消された可能性があるのは前にも話しましたが、恐らく高島謙也、もしくは白井康介によるものだと思われます。息子の死に疑問がある場合、親ならきっと調べるはずですよね？余計警察官ならその真偽を調べるのは訳ないはずです。恐らく息子が何故命を失ったかの真相を掴んだはず。しかし由紀夫が何かしらのアクションを起こした記録はないし、結局円満退職してます。」
「ん？ちょっと待て？？て事は、由紀夫は白井康介からなんらかの報酬を得ていた、とか？？」
「もしくは死んでくれた方が都合が良かった、とか？？」
「あと、由紀夫は白井康介とグルだったか。」
「何らかの利益の為に息子を売ったってか？？」
「その線が有力なんじゃないかって私は思います。今、白井康介と金成由紀夫の関係について調べて貰ってるとこです。」
「何だか憎しみのない犯行とか言ってらんなくなって来たな、3億円事件も。」
今までの概念が次第に崩れ落ちて行くような気がした。