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ケイの災難
【コメディ 恋愛小説】

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香織と亜里沙の対立-6

「本当なら麻理絵がおねーさん達の事を助けてあげなきゃいけないんだけど、麻理絵じゃおねーさん達を助けてあげられないの……。麻理絵また亜里沙おねーちゃんに頼っちゃうけどおねーさん達を助けてあげて…」
麻理絵は目に涙をためて亜里沙にお願いをしたのだった。そして亜里沙もそんな麻理絵の顔を見ては断れないらしく、目を閉じ軽くため息を吐くと麻理絵のお願いを受け入れるしかないのだった。
「…わかったわ。麻理絵にここまでお願いされたら断れないじゃない」
「ありがとう、亜里沙おねーちゃん」
しょうがないといった感じで答えた亜里沙だったが、麻理絵は笑顔で亜里沙に感謝の言葉を伝えた。
「亜里沙さん、ありがとうね。本当に感謝するわ」
「今日は麻理絵の顔を立てただけですから…。それに今回限りですからね」
亜里沙は奈津子の感謝の言葉にそっけなく返事をすると圭介を睨んだ。
「まさか貴方がケイだったなんて信じられないわ。ひょっとして貴方って女装趣味の変態?」
「変態?」この一言で圭介は悶死しそうな位のダメージを受け、思わず寝込みそうになったがなんとか堪えた。
堪えるには堪えたが、圭介に対する亜里沙の刺す様な蔑みの視線は正直かなり痛いものだったのだ。
亜里沙の精神的な責めに圭介は呆然とした状態になり、さすがに気の毒と思った香織が圭介に話しかけ気遣った。
「圭介、大丈夫!?私は圭介が変態だなんてこれっぽっちもおもってないからね」
香織は圭介の肩に手を乗せて安心させる様に言うと、今度は亜里沙を睨み声を荒げた。
「ちょっとあんた、いくらなんでも言って良い事と悪い事の区別もつかないの!?」
亜里沙は香織の思わぬ剣幕に一瞬驚いたが、すぐに冷静な表情に戻り香織を見つめた。
「本当の事を言ったまででしょ。でも、安心して良いわよ。別に彼の事を他の人に言いふらして辱める様な悪趣味な事はしないから」
「当たり前でしょ!そんな事したらただじゃ済ませないからねっ」
更に怒鳴る香織を圭介が抑えると亜里沙は「連絡先は彼に聞いて下さい」と言うと病室から出て行くと慌てた麻理絵がペコペコと頭を下げると亜里沙を追いかけた。
それからすぐに智香が病室に戻ってくると、不機嫌な顔をした香織と憔悴しきった圭介を見て心配したのだった。
その後、微妙な空気のまま圭介は一日を過ごした。

それから数日が過ぎ、奈津子と亜里沙が約束をした撮影の日、メイクを済ませた亜里沙と香織の間は一触即発状態の険悪な雰囲気だった。
正直、今にも取っ組み合いのケンカを始めそうな雰囲気の二人を友美と亜里沙の付き添いで来た麻理絵はハラハラしながら遠くから見つめており、亜里沙を呼んだ張本人の奈津子は煙草を咥えながら面白そうに眺めていた。
「まさか本当に来るとは思わなかったわ」
「私は来たくなかったけど一度約束をした事を反故にするなんていい加減な事はしたくないので…」
香織の言葉に亜里沙が不満気に答えると二人はお互いに顔を逸らした。
二人の様子を見かねたカメラマンの川上が奈津子に声をかける。
「土方さん、何とかして下さいよ。これじゃあ撮影始められないですよ」
「まあまあ、いーんじゃない。二人とも活きが良いわねぇ、これが若さってやつぅ」
大笑いする奈津子の横で困った顔でため息を吐く川上だった。
「ま、そんなにナーバスになりなさんなって。もうちょい様子を見ましょう」
川上の肩を叩きながら二人を煽ろうとする奈津子を川上は必死で止めた。
「それにしても貴女もよくあんな女装男の肩を持つわね。全く気が知れないわ」
「余計なお世話よ!圭介の事情を知らないあんたにそんな事を言われたくないわねっ」
亜里沙の言葉に香織はカッとなって反論する。
「それに自分の彼氏を扱き下ろされて黙ってられるほど私も人間出来てないもんでねっ」
「うふふ…そうね、貴女の様な粗野な性格の女性とでしたらとてもお似合いのカップルですわね」
手で口元隠しながら馬鹿にした様に笑う亜里沙の態度に香織は我慢の限界を超えてしまい完全にキレたのだった。


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