女教師ケイの放課後-14
僕は慌てて寝たふりをした。
誰かが、のぞきこんできた。
目蓋の隙間を影がよぎる。僕は必死にまつ毛が震えるのをこらえた。
「どうだ、起きてるか?」
「だ、大丈夫。呑気に寝てる」
板倉と五月だった。会話の内容から、僕を見下ろしているのが五月らしい。
助かった。洞察力の優れた板倉のほうだったら、僕の狸寝入りは見破られていたろう。
「じゃ、邪魔されないかな」
「あれだけ飲ませたんだ。すぐには起きねえよ」
何をされるんだ?僕は不安で一杯だった。
起きているのがばれれば、彼らが襲い掛かってくるような気がした。
足音が動く。
僕は緊張で身を硬くした。
幸運なことに気配は遠のいていく。
安堵のあまり、ため息を漏らしそうになって慌ててそれを押さえた。
そして注意深く、薄目を開ける。
(あっ)
板倉と五月が開いた襖のあいだに消えていくのがみえた。
隣にはケイがいるはずだった。
格安な宿泊料金とはいえ急だったため、部費が下りないと言っていた。
そのため、二間つづきの同じ部屋に寝泊まりすることになったのだ。
板倉と五月の忍び笑いが、奥から聞こえてくる。
僕は反転してうつぶせになると、腹と膝を使って前進した。
激しい運動に手足に食い込む紐状のものが、わずかながら緩んだ。どうやら、浴衣の帯らしかった。
多少の痛みこそあったが、僕は敷居のところまで芋虫のように這って進んだ。
室内に目をやると、闇のなかを光の輪が蠢いていた。懐中電灯のようだ。
明かりが布団の膨らみを照らしていた。そこにケイがいるらしい。
板倉と五月がはさみ込むように立っている。