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つまみぐい
【その他 官能小説】

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愛しいマスコット-2


 すし詰め状態の電車内は酸素が薄く、横揺れを起こすたびに果歩の思考力を削っていく。
「そろそろパンツが湿ってきたんじゃない?」
 痴漢の陰湿な声が果歩の耳に吹きかかる。だいたい五十歳くらいのおやじっぽい声だ。
「やめてください……」
 震える声で果歩は訴えたが、かれこれ五分以上も痴漢の愛撫を受けている秘部は分泌物でうるうるし始め、ショーツの生地に恥ずかしい水分を吸わせている。脚を閉じようとしても痴漢の片足が差し込まれているので閉じられず、触られ放題の可哀想な果歩。
「可愛い顔して、あそこは敏感なんだね」
 痴漢の指がクリトリスの上で小さな円を描く。その途端、果歩にしかわからない感覚が鮮烈にはじけ散った。ずっと我慢していたものが全身を走り抜けて腰から下が砕けていく。
 どうしよう、声が出ちゃう──果歩は声を漏らさないよう一瞬だけ息を止めた。痴漢の指の動きに注意を払いつつ奥歯を噛んで、卑猥な声を出しちゃいけないと自分自身に言い聞かせる。
 けれども性的な反応に対して果歩はあまりにも無力だった。痴漢の指がショーツを掻き分けて女性器に触れると、そのまま膣をほじくり返しながら難なく挿入を果たし、痴漢行為に免疫のない果歩はとうとう猫撫で声を発してしまう。
「あん……」
 若い女の子のただならない声──それを聞きつけた乗客のほとんどは素知らぬ振りをしていたが、中には声の発信源を特定しようとする乗客もいて、果歩は顔を伏せて赤面する。
「しっ。声が大きいよ」
 何故か痴漢の注意が飛んでくる。あなたのせいでしょ、と思いながらも果歩は反論できない。痴漢の指の侵入を許した下半身の穴がくちゅくちゅと音を立ててどんどん熱く火照ってくる。
「ああ……、んん……」
 くやしいけれど果歩は痴漢されて快感をおぼえていた。いつの間にか痴漢の指を二本も飲み込んでいたことに気付いた時には、どうか誰にも見つかりませんようにと朦朧とする意識の中で祈った。
 やがて、闇雲に出し入れされる指の動きに同調するように果歩の体も静かに上り詰めた。誰が見ているかわからないこの危なっかしい状況で、とりあえず快感の余韻に浸った。
 吐息をつき、太ももをつたう分泌液を拭うためにバッグからハンカチを取り出したいところだが身動きが取れないので仕方なくあきらめた。
 それから駅に着くまでの二十分ものあいだ、果歩は体をしつこく触られ続けた。その結果、車両の床をちょっとだけ汚してしまい、果歩自身は目眩がするほどのオーガズムを味わって頬が紅潮している。
 寝起きはとても気分が良かったのに、痴漢に遭ったおかげで今は体調が優れない。でも会社は休めないし、こんな中途半端な気持ちのままできちんと業務をこなせるだろうか。いやそんなことよりも、最低な痴漢を野放しにしておいて良いのだろうか。
 答えの出ない自問自答に前方不注意になりながら電車を降りると、ふと、すぐ後ろで誰かの怒鳴り声が聞こえた。男性が二人、掴み合いの喧嘩をしている。
「やってねえよ!」
「嘘をつくな。俺は見てたんだぞ」
「知らねえって!」
「だったら彼女に直接訊いてやる」
 若いビジネスマン風の青年が、中年のサラリーマンの手を引いて果歩のいる方向へずかずかとやって来る。いずれも果歩の知らない顔だが、中年のサラリーマンの声には聞き覚えがあった。
「すみません」
 と、ビジネスマンの彼の真剣な眼差しが果歩の胸を射る。なかなかの好青年だ。
「は、はい……」
 急に声をかけられた果歩は消え入りそうな声で返事をした。するとビジネスマンの彼は中年サラリーマンの腕をねじりながら果歩に訊いた。
「あなたさっき、この人に体を触られてましたよね?」
「えっ?」
「痴漢に遭ってましたよね?」
「えっと……」
 大勢の乗客の前で痴漢被害の有無を問われ、果歩は恥ずかしくなった。同時に、痴漢をぎゃふんと言わせる絶好のチャンスだとも思った。ただ、目の前のサラリーマンがほんとうに先ほどの痴漢なのかどうか、声だけでは情報量が少なすぎて判断がつかないのも事実だ。
「どうなんです?」
 ビジネスマンの彼が答えを迫ってくる。そもそも注目の的になるのが苦手な果歩はそれでも勇気を振り絞り、中年サラリーマンの脂ぎった顔を睨み付けてこう言った。
「こ、この人、痴漢です……」


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