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愉楽
【SM 官能小説】

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愉楽-6

最近、タクヤの様子はどうなのだ……夜の晩酌の盃を手にしながらそう言った夫の表情が少し
ずつ淫靡に歪んでいるのは間違いありませんでした。端正な顔の面影が消え、額の皺が淫蕩な
翳りを深め、形相は悩ましいほど卑屈なものになっていたのにわたくしは気がつき始めていま
した。

えっ、ええ、タクヤさんは、離れの部屋で。パソコンと向き合って難しい数式とにらめっこで
すよ、わたくしにはよくわかりません。昼間は近くの山を散策されたりすることはありますが、
と微かな戸惑いを胸の奥に秘めながら言うと、主人は顔色ひとつ変えることなく、小さく頷き
ました。わたくしの胸の中で密かな戸惑いとともに、タクヤさんに対する行為が淫猥に揺らぎ
始めました。

タクヤは、まだ女を知らないそうだ。どうしてそんなことを主人がわたくしに、わざわざ告げ
たのか、若いタクヤさんにわたくしが興味をいだいていることを密かに疑っているのだろうか
……不意の言葉にわたくしは烈しく揺らぎはじめた胸の鼓動を感じました。

考えてみれば、わしも幼少のときに事故で男の機能を失ったから、女を知らないことではタク
ヤと同じだがと、晩酌の盃を手にした主人は薄い笑みを浮かべ、わたくしの顔をのぞき込むよ
うに言いました。

そのときわたくしは返す言葉がなく、主人の視線を振り切るように盃にお酒を注いだのでござ
います。しばらく主人との会話が途切れ、気まずい沈黙が続いていたときでした。

タクヤは、ナオミを好いているのではないか……あくまでわしの感だが。なにをおしゃいます
の、二十四歳の男性が六十歳近くもなるわたくしをでしょうかと、わたくしは、何か心の中の
わだかまりを抑えるように強ばる作り笑いを頬に浮かべました。


わかってはいました。貞操帯を主人に着けられたわたくしが、けっしてタクヤさんのものを、
一線をこえて求めることができないことを。それでもわたくしは、いけないと思いながらも自
分をおさえることができませんでした。主人が家をあけるごとに夜這いのごとくタクヤさんの
部屋を訪れ、彼の寝姿にむず痒いような疼きを感じていたのでございます。

若々しい裸体は、月灯りの朧な光によって斑に染められ、巧緻で肌理の細かい肌が瑞々しく
煌めき、均整のとれた二十四歳の細まった滑らかな胴体は柔和で物静かな影を秘め、可憐で
優雅とも言え、どちらかというとわたくしを息苦しくさせるくらい禁欲的な美しさをもってい
たのです。


障子を開け放した縁側から忍び寄る月灯りが、眠り込んだタクヤさんの額や頬を流れ、白い裸
体の輪郭を幻惑的に浮かび上がらせておりました。わたくしの湿り始めた体が、ひとりでにそ
の光の中へ浮遊し、彼の肉体と同化していくような錯覚にとらわれたのでございます。

そして、ぴったりと彼の下半身の源を覆った白い下着の中には、いつものように蒼く、麗しい
翳りを含んだ、ふくらみをうかがわせ、わたくしがけっして含むことのできない純潔が潜んで
いました。

わたくしはまるでタクヤさんの肉体に呪縛され、操られるように思いきってブリーフに手をか
けました……。


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