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愉楽
【SM 官能小説】

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愉楽-12

そのころから夫婦のあいだがしだいに疎遠になるような空気を感じ始めました。

もしかしたら夫が指だけでわたくしの肉体を弄りまわすという淫靡な性戯と、そして突きつけ
られた夫の性器に対する飽くなき奉仕によって、わたくしは肉欲の放恣(ほうし)な物憂さに
まどろみ、夫から強いられる卑しい隷属とタクヤさんに対する愛おしい恋慕という、相反する
呪縛にますます心身を濡らしていったのでございます。

かさかさと渇いた黄土色の皮膚に覆われた夫の裸の股間に、異様に白みを帯びて垂れ下がった
性器、わたくしはただそれだけを《夫との性戯の対象》として与えられ、これから老いていか
なければならないか……そう考えながらも、わたくしにはまだタクヤさんの瑞々しいもので
充たされたいという、かなわぬ欲望が燻りつづけていました。

そして、わたくしは、これまで生きてきた六十年近い歳月のなかで、初めて性欲の烈しい渇き
に堕ちていき、それが精神の変調をもたらしていたことにわたくしは気がつくことなく、男性
器への異常な執着は、まるで自分の身体全体が白い陶器のような殻に封じ込まれ、自らのすべ
てが極彩色の性器と孵化していく悪夢となり、醜い夫の性器と麗しく照り映えたタクヤさんの
性器が薄ら笑いをなげかけながら白い殻を透かしてわたくしを覗いているという怨恨となって
いきました。



どれくらいわたくしは深く眠っていたのでしょうか……耳をすませば、すべての音が消え、微
かな呼吸だけが闇の中から聞こえてきました。濡れた生ぬるい藻のような空気が頬を撫で、静
寂が溶けきった真っ暗な闇が仄かな灯りを含んだとき、光を放つ白い像が朧に浮かあがりまし
た。

柱に縛りつけられた裸体……それはタクヤさんでした。うなだれたように深い眠りについてい
るような彼は、まるで甘美な夢を見ているようにいつもの美しい顔をしていました。柱を背に
後ろ手に縛られた彼の股間の純潔は萎えているというのにいつものように端麗な輪郭を保ち、
鈴口はまるでわたくしを愛おしく見つめるように可憐に潤んでいました。でもいったいわたく
しはどこから彼を見ていたのかはわかりません。遠くから見ているようなでもあり、すぐ手が
届くくらい近くのようでもあり……。

不意にタクヤさんの前で揺らいだ男の黒い影……男はわたくしの夫でした。血の気がうせたよ
うな恍惚とした、蒼白の顔をした主人は全裸でタクヤさんの前に亡霊のように佇み、縛られた
タクヤさんの裸体を無機質な視線で舐めまわすと、ゆっくりと跪き、彼の股間に顔を埋めまし
た。

かさかさと渇いた紫色の夫の唇が蠢き、血の気のない舌がだらりと伸びると、タクヤのものを
しゃぶり始めたのでございます。夫はタクヤさんのものをわたくしから奪い取ろうとしている
かのように、そして、けっして自分が得られることのない漲る純潔を吸い取ろうとしているか
のように、長い時間をかけて執拗にしゃぶり続けました。


そして、青々しく、弓のように屹立したタクヤさんの純潔に満足したように唇を離し、ゆっく
りと立ち上がると、極太の蝋燭を手にし、火をつけたのでございます。それは、まるで鬼気に
憑りつかれたようなし主人の形相でした。

主人は、タクヤさんの太腿の付け根に瑞々しく屹立した純潔にゆっくりと蝋燭の炎を近づけ、
産毛のように生えわたる陰毛がちりちりと焼けるのもかまわず、ぬるりとした陰袋を炙り始め
たのでございます。わたくしは胸が張り裂けるような気持でした。タクヤさんは眠っていると
いうのに炎の熱さに額に汗を滲ませ、無意識に純潔の竿を微かに蠢かせ、亀頭のえらを粘らせ
ながら悶えるような嗚咽を洩らしました。 

まさに狂気の顔をした夫の姿でした。蝋燭の炎に照らされたタクヤさんの肉幹に血管がうっす
らと浮かび上がり、血の流れがゆらりと炎を揺らがせ、すべすべとした睾丸は火に刺激される
ように垂れ袋の中で滑るように苦しげに蠢き、その彼の姿を楽しむかのように主人は、のけ反
るように喘ぎはじめたタクヤさんの純潔を根元から少しずつ淫猥に炙り、じりじりと包皮を焦
がしていくのでした。

その憧憬を見ていたわたくしは全身がゆさぶられるような息苦しさに見舞われると同時に、な
ぜか少しずつ烈しい苦痛と、酩酊をともなった情欲の深い幻惑に堕ちていったのでした……。



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