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愉楽
【SM 官能小説】

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愉楽-13

………


わたくしはあの夜、夢を見ていただけでした。いや、《わたくしのあの夜の異常な行為》がほ
んとうに現実であったのか、夢であったのか、記憶は定かではありませんでした。幻覚から醒
めるように我に返ったとき、わたくしは警察の取り調べ室にいたのでございます。

驚いたことに、夢はわたくしの幻覚ではなくて現実であり、わたくしの行為そのものであった
のでございます。蝋燭の炎で炙られた男性器はタクヤさんのものではなく、主人のものであり、
蝋燭を手にしていたのは夫ではなくわたくしだったのでございます。まったく身に覚えのない
ことでした。偶然、家を訪れた配達人が部屋の様子を不審に思い、わたくしと夫を見つけ、警
察に通報したとのことでした。

警察で事情聴取を受けながらも、わたくしは、どうして自分がそんな残酷なことをしてしまっ
たのかわかりませんでした。
幸い夫のものの火傷は軽く命に別状はありませんでしたが、あまりに猟奇的な事件であったた
め、わたくしに対する事情聴取は精神科医を交えて行われましたが、何よりも、柱に裸で縛り
つけ、性器を蝋燭の炎で焼くことをわたくしに命じたのが、リョウキチ自身であることを彼が
告白したことから、わたくしは傷害に問われることはありませんでしたが、精神鑑定の結果、
あの療養所の精神科病棟に入院することになったのでございます。

主人はなぜ、あのようなことをわたくしにさせたのか……わたくしは、ますます自分と主人の
関係がわからなくなりました。あえて言うならば、性愛を絶たれたわたくしたち夫婦に残され
た性の手段は、夫にとっても、わたくしにとっても、知らないうちに心身に滲み入った狂気に
よって美化された、耽溺の妄想であったのかもしれません。



わたくしが療養所に入院しているあいだ、夫はしばらく東京で暮らしておりましたが、病を
患い、わたくしが療養所を退院したその日に亡くなりました。タクヤさんとは、その後、会う
機会がなく、聞くところによると結婚してイギリスへ留学されたということでした。


実は、最近になって、亡くなった主人の遺品を整理しておりましたら、茶封筒の中から色褪せ
た写真が数枚出てきました。その写真を手にしたわたくしの指が微かに震えました。
写真は、全裸のタクヤさんを撮ったものでした。タクヤさんはずっと若く、おそらく高校生く
らいの年齢でしょうか、裏書された年月日から、あきらかにわたくしたちが結婚する以前のも
のでした。

いったい、なぜ、こんなものを主人が隠し持っていたのか……。タクヤさんの瑞々しい肉体の
写真と、なによりもタクヤさんの局部をはっきりと捉えた写真、そして全裸の主人とタクヤさ
んが寄り添っている写真……ふたりがどういう関係であったのか、少なからず察することがで
きるものでした。男色という言葉が脳裏をかけめぐりながらも、女形として舞台で舞う夫の姿
が交錯し、暗澹とした混乱がわたくしを襲い、眩暈さえ起こすほどでした。



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