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マリア
【その他 官能小説】

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マリア-12

 「あの」
 「何でしょう?」
 「水田社長は今いらっしゃるんですか?」
 「さあ、多分いないと思います。滅多に来ないし、来ても直ぐ帰っちゃうから。何かご用ですか?」
 「いや、別に。いれば挨拶でもしないといけないと思って」
 「あ、別にいいですよ、そんなこと。私から言っておきますから」
 「はあ、それじゃまあ宜しく」
 「直ぐ電話しようと思ったんですけど丁度生理が始まっちゃって。社長さんは生理じゃ無い時の方がいいってことなんで終わるの待ってたんです」
 「すると生理の時も休まないというのは君のこと?」
 「はい。生理の時は稼ぎ時なんです」
 「フェラーリに乗って出勤して来るっていうのは君か」
 「厭だ。それは明日香さんのことですよ。私はこの近くだから自転車で来るんです」
 「月に300万も稼いで自転車か」
 「そんなに稼ぎませんよ。さっき言ったでしょう? 仕事には金を掛けるって。いろいろ交際費もかかるし」
 「交際費?」
 「はい。お客様の誕生日にプレゼントしたり、バレンタインデーなんて集中するから大変ですよ。50万くらい使っちゃう」
 「50万。そんなにチョコレート買うのか」
 「厭だ。今時チョコレートなんて貰ったって誰も喜ばないですよ」
 「すると下着とか?」
 「それはホワイト・デーにお返しで貰うんです。これもそうなんですよ。貴方が穿いて欲しいと思うようなセクシーな下着を贈って頂戴ねって、お客様には言うんです」
 「ほほう」
 「そうすればその下着を付けた所を見るために店に来てくれるでしょう? さて、お喋りもいいけど、やりながら話ませんか?」
 「お。どうすればいいのかな」
 「まずざっとシャワーを浴びて下さい。汚ければ私も一緒に浴びながら私の納得が行くまで洗って上げるんだけど、社長さん清潔そうだから」
 「ほう。すると汚いまま来た方が得する訳だね」
 「え? ああ、洗って欲しければいいですよ。洗って上げます」
 「いやいや、自分でやるから。ちょっと嫌みを言っただけ」
 「意地悪ね。私はいろいろすることがあるんです」

 シャワーと言っても別にシャワー・ルームがある訳では無く、部屋の片隅にシャワーがあるだけだから、小さな下着1枚になったマリアのしていることはシャワーを浴びながらでも良く見える。ベッドの脇にある小さな化粧台に向かってメーキャップし、香水をシュッシュッと振りかけている。さっきも化粧はしていたように思ったが、こちらを振り返ったマリアを見ると先ほどよりかなり濃いメーキャップになっている。

 「何か不思議そうな顔して見てますね。なんですか?」
 「いや。することがあるって何のことかと思ったら化粧しているから」
 「お化粧は嫌いですか?」
 「いや大好きだな。僕は悪趣味で、毒々しい程の化粧が好きだ」
 「そうですか。それじゃもうちょっとやりましょうか?」
 「いやそれでいいよ」
 「それじゃそこに座って下さい」

 有名な助平椅子である。前から見ると凹の字形になった風呂場用の椅子で、此処に座ると片手で性器を愛撫しながらもう一方の手をへこみから差し入れて肛門やその付近を愛撫出来るという仕組みである。近頃ではこれをホームセンターなどでも売っているのだから性の解放も来る所まで来てしまったという感じがする。黒や赤やレースの下着だって当初は娼婦専用の衣装だったのが、今は普通の主婦が当たり前のような顔で買っていくし、若い女性がバイブレーターを持っていてもそれ程驚くようなことではなくなってきた。いい時代になったと言うべきか、嘆かわしいと言うべきか悩んでしまう。
 助平椅子に座って前後に刺激を受けるとなるほどこれは気持ちいい。それから海で使うような空気の入ったビニール・マットに移るとマリアは祐司の性器をぱっくり咥えた。真っ赤な口紅を塗った唇が性器を咥えている図は確かに生々しくてショッキングである。それに男の性器を咥えれば自然に目は伏し目勝ちになるので、紫色のアイシャドウが綺麗に塗ってあるのが良く見える。何か西洋の貴婦人に奉仕されているような気分の良さだった。これが為に多分メーキャップしていたのだろう。男の心理を良く研究している。私どもでは必ずスキンを着用して頂いておりますからと水田は言っていたが、口に入れる時は着用しなくともいいらしい。独身の祐司はあっという間にガス抜きされてしまったが、マリアは飲んでしまったのか、気付かれないように吐き出したのか分からなかった。



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