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アンジェラ
【その他 官能小説】

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アンジェラ-2

浣腸とかローソクとかになると特にそういうのを好む女性も勿論いるが、それだけは絶対厭だという女性も多いという。本当にMの女性だって相手は恋人や夫では無い。客を相手に仕事をしているのだからいつもいつも感じている訳が無いのである。見ず知らずの人にムチを打たれたり浣腸されたりするのは怖くないかと聞いたことがあるけれども、浣腸は別に怖くはないと言う。言われてみればなるほど薬液をお尻に入れられて排泄するというだけだから何をされるか分からないという恐怖感は無いのだろう。ムチは打たれる場所によっては傷ついたりすることもあるから怖いがクラブに用意してあるムチはやたらに派手な音がするだけで痛くは無いから大したことはないらしい。それでも丁度クリトリスにヒットしたりすると一瞬気が遠くなるほど痛いこともあるらしい。
アンジェラは痛いことが大嫌いだからそんなことを聞くとMの女性を尊敬してしまいそうになる。金の為とは言え、そこまで我慢出来るというのは凄いことである。それにこのクラブだけがたまたまそうなのかも知れないが、Mの女性は優しくて外人のアンジェラに対してもなんのわだかまりも無くうち解けて話してくれる。客を相手にした時の報酬はM役の方が遙かに高いのだが、それは客の払う金もその分高いからである。
即ち、Sの客は2時間で4万円払う。これにアナル関係はオプションとして別料金が加算される。浣腸が1万円、アナル・ファックが3万円である。セックスは厳禁されているが、アナルを使えばいいということらしい。いずれにしても女性は、客の支払った料金の6割を貰うからフルコースだと8万円の6割で4万8000円になる。これに対してMの客は2時間で2万円でオプションは無い。オプションが無いというのは特別なことが出来ないというのではなく、何でも基本料金の2万円だけでやって貰えるという意味である。女性の取り分は同じ6割だから1万2000円になる。
しかしMの客は1度相手をして気に入るとずっと同じ女性を指名してくるから、長く働いていると自分の客が増える。その点Sの客は毎回別の女性を相手にしたいと思う人が多いようである。又、Mの客の中にはプレゼントを持参したりチップを弾んだりする者が多い。アンジェラも立派な身なりをした得意客から仕事を辞めて愛人になってくれないかと言われたことが何度かある。そうすれば生活が安定する訳だからだいぶ悩んだが、結局そういう話はいつも断った。 愛人になればセックスは勿論することになるだろうが、そんなことは何でも無いことである。 それよりも2人の関係が逆転してしまえば男の関心も薄れてしまうのでは無いかと思ったのである。 店にいて時間単位でしか買えないから女王様なのであって、愛人になっていつでも自分の自由に出来る女性などを女王様扱いすることなど出来るのだろうかと疑問に思った。
本当のSの女性ならばそれでもなんとかなるのかも知れないが、アンジェラは金の為にこの仕事をしているだけでSの性向など全く無いから、愛人という保護される立場とSという支配する立場との矛盾をどう解決するのか分からないのである。
 客の多くは中年以上の男が多いが、偶には若い男もいる。部屋に入るとまず名前を聞くのは単なる話のきっかけというだけで、本当は客の名前などどうでもいい。どうせ本名かどうか分からないし、本名であってもそれがどうだということも無い。

 「お名前は何といいますか?」
 「山名靖」
 「YYですね」
 「そう。君はアンジェラというんだね。何人?」
 「コロンビア人です」
 「コロンビアかあ。 コロンビアって何処にあるんだっけ?」
 「地球の反対側です」
 「地球の反対側はブラジルだと思ったけど」
 「そう。その隣です」
 「隣ってどっち隣?」
 「上です。それより早く服を脱ぎませんか?」
 「ああ、そうだな」
 「どういうのが好みですか?」
 「縛ってバイブという奴がいいんだけど」
 「それじゃそこに横になって下さい」
 「どうして?」
 「どうしてって、縛ってバイブでしょ?」
 「え? 僕が君を縛りたいんだけど」
 「それは駄目です。私はSだから」
 「そんなあ。僕は4万円払ってMの女性をリクエストしたんだよ」


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