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アンジェラ
【その他 官能小説】

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アンジェラ-1

 コロンビア人のアンジェラは六本木のSMクラブでSの女王役をしている。黒人と白人の混血で、顔も体も信じられない程素晴らしい。そのままミスユニバースになっていたとしても不思議では無いくらいなのに性を売り物にしないと金を稼げないのが悲しい現実である。しかしSの女王だって単に裸に近い格好になってムチを振るえばいいという程簡単なものでは無い。それなりにテクニックがあるし、会話で雰囲気を高めていくのも大切な要素だからアンジェラもそれなりに努力して来たのだ。女王らしい言葉遣いなんてなかなか日常の生活の中では学べないし、そもそも日常の会話だって日本語は外国人には難しいのである。勿論アンジェラには日本人にない利点もあった。日本人には無いボリュームのある体つきはSの女王としてはやはり恵まれたものであると言わなければならないし、外人特有の顔もこの世界では好まれた。SMの世界では日本人形のような顔よりもやはり外人顔の方が適しているのである。
 普段は大体皮の衣装を付けているが客の好みによってはラテックスの衣装にしたり或いはボディコンのワンピースを着たり殆ど裸になってしまうこともある。セックスそれ自体は厳禁されているのでやらないし、それを求める客も殆どいない。値段が高いから客は完全なSM愛好者ばかりでセックス自体には余り関心が無いのである。
 ハイヒールやブーツは必需品で、それらは実用にもなるから沢山持っている。馴染みになった客がこれを履いて欲しいと言ってプレゼントしてくれることも多い。衣装は所属しているクラブに多数揃えてあるが、アンジェラの場合は殆ど自前の物である。日本人の標準的体型に合わせてあるクラブの服はサイズが合わないし、やはり他人の着た服は厭なのである。ボディコンのワンピースなどは余程のミニだって街着として使えるし、皮やラテックスの物でもデザインによっては外で着ることも出来る。そんな訳で自分で服を買う時にはどうしても仕事にも使えるような物を選んでしまうことになる。だからアンジェラは、普段からSの女王のような出で立ちになっている。人目を引く変わった服でもいつも着ていればそれが普通になって気にならなくってしまうのである。
 クラブには勿論M専門の女性も多数いる。彼女達はSの客に買われる訳だが、Sの客というのは必ずしもSM愛好者とは言えない者が多い。男には誰しもちょっと女を縛ってセックスしてみたいとか言葉の上だけでも女を奴隷扱いしてみたいなどという欲望が多かれ少なかれあるので、言ってみれば素人の客を相手にすることになる。だから女の体を縛るということだけとってみても慣れていない者が多くてやっかいである。慣れない者が縛るとやたらに痛いのだそうだ。長時間縛られたままでいる訳だから縛り方が下手だと後で痺れてしまって治るまで時間がかかったりする。その上殆どの客はセックスをしたがる。
Sの女王は客がやって欲しいと言うことを客にやってやるだけだが、Mの女性は客がやりたいことをやられる訳だから大変である。本当にM傾向のある女性もいるし金のためにやっている人もいるが、たとえ本物のMの女性だって何でもかんでも責められることが好きだという訳ではない。アンジェラも実際やってみて客の好みが実に多様であることに驚いたものである。縛った体を更に壁のフックなどにくくりつけて身動き出来ないようにされることを好む男もいれば、グルグルに縛られた体を蓑虫のようにくねくね動かして悶えたいという男もいる。言葉遣いも粗野で下品な言葉を使われると興奮する男もいれば、上品な言葉で優雅にいたぶって貰いたいという男もいる。
男のMがそうであるなら女のMだって多種多様な好みがあるに違いない。縛られるのが好きな女性だっていろいろ好みがある。実際、同じクラブで働く真正のM女に聞いてみたら、肌が見えなくなってしまうくらいとにかくグルグル沢山縛られて身動き出来なくなってしまうのを好む女性もいれば、綺麗に縛られてうっとり鏡をみていたいという女性もいるのだという。ムチで打たれるなどということになるともっと難しい注文があって、始めは軽く打って気分が乗って来たら強くというのが基本だそうだが、素人の客は始めから強く打つ人が多いらしい。しかしこれも始めから強烈にバシバシ打って欲しいという女性もいるのだそうだ。


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