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良助
【青春 恋愛小説】

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2 順子-17

 「昨日、小山が田宮んち遊びに行ったんだって?」
 「うん」
 「小山の姉さんも行ったんだって?」
 「うん。最高にドレスアップして綺麗だったわよ。駅で待ち合わせしたんだけど、まるでスターが歩いて来たみたいだった。目立つし、みんな見てるし」
 「ドレスアップってどんな格好?」
 「ブルーのニット・スーツで女らしくてもう最高だった。あんなに綺麗な人実際に見たのは初めて」
 「へえ、俺も見たかったな。でも何で小山の姉さんまで呼んだんだよ」
 「お父さんがたまたま雑誌の写真見てたからよ。それ私の友達のお姉さんなのよって言ったら、じゃうちに遊びに来るように言ってごらんと言うからお姉さんも招待したの」
 「へえ。俺も姉さんうちに招待してみようかな」
 「してみたら」
 「お前、良介と結婚するっていう噂があるけど本当なのか?」
 「そんな噂があるの?」
 「うん、田宮がそう言ったらしいってもっぱらの噂だぜ」
 「私が? さあ記憶に無いわね」
 「それじゃ結婚するって噂は間違いか」
 「高校生で結婚なんか出来る訳無いじゃないの」
 「だから先の話だよ」
 「先の話は分からないわ。先の話なら、私と粕谷君が結婚するっていうことだってあるかも知れないし」
 「そんな気全然無い癖に」
 「だから、先になればその気になるかも知れないし、先のことは分からないという話」
 「それじゃ暫く俺と付き合ってみるか?」
 「先になって私がもしその気になったらね」
 「チェッ、何で小山がいいんだ。俺の方がよっぽどいい男だと思うけどな」
 「何処が?」
 「顔が」
 「ああ」
 「ああって?」
 「いえ別に。でも粕谷君の顔は4〜500年時代遅れなんじゃないかと思うな」
 「何だ、それは。4〜500年は酷いな。せめて4〜5年にしてくれよ」
 「大丈夫よ。男は顔じゃないから」
 「それにしても4〜500年は酷いぜ」
 「傷ついた?」
 「ああ、ズタズタだよ」
 「じゃ室野さんに慰めて貰うといいわ。婚約しているんでしょ?」
 「ゲッ。良介から聞いたな。室野とたまたま同じ名前なんだよ。参ったな本当に。よりによって室野と同じだなんて」
 「きっと室野さんみたいに素敵な女性なんでしょうね」
 「皮肉がきついな」
 「あら、皮肉じゃ無いわ。皮肉だなんて室野さんに失礼よ」
 「ふん、そうですかい」

 良介は先生の勧めに従い5つの大学を受験した。受験日は大体どこも似たような時期に集中しているから5つ受験するというのは殆ど現実的に可能な最大数だった。下手な鉄砲も何とかという諺通り先生は沢山受験すればどれかに引っかかると思ったのだ。しかし良介はどれも全く自信が無かった。手応えを感じたものが1つも無かった。今更就職は出来ないし、どう考えても浪人することになるなと覚悟していたら名前の知られていない大学の社会福祉科という新設された所に受かっていた。発表を見に行くたびに落ちていて流石に沈んでいた良介はうちに帰って報告しながら涙を浮かべていた。

 「姉さん、本当に有り難う。お陰様でなんとか1つ引っかかりました」
 「うん、良かったね。良介おめでとう」
 「今日はささやかだけど急遽ご馳走を用意したから、お祝いしましょう」
 「有り難う。母さん」
 「田宮さんにはもう知らせたの?」
 「うん、帰る途中で電話した。本当に喜んでくれて、彼女の喜んでくれる声を聞いてたらなんか喜びがこみ上げて来ちゃって涙が出てきちゃったんだよ」
 「良かったね。落ちて泣きながらレコード聴く人もいるんだからね」
 「うん。人生最大の喜びだな。受からなきゃ受からなきゃってプレッシャーが強くて参ってたんだ」
 「そういうのを経験して段々大人になるんだよ」
 「うん。今日の姉さんは何だか女神様みたいに優しいね」
 「何言ってるの。優しいから心を鬼にして良介の尻を叩いていたのよ」
 「うん。有り難う。僕って姉さん大好きだよ。今まで減らず口ばかり言ってたけど本心じゃ無いんだ」
 「分かっているよ。20年近く一緒に暮らしてきんだから、良介のことなんか何でも分かってるんだ」
 「さあ。良介は余り魚が好きでは無いから、すき焼きにしたのよ。その代わり鯛焼きが買ってあるから、それがお頭付きの代わりなの」
 「すき焼きと鯛焼きかあ。焼いてばっかりだね」
 「まあ、お腹を壊さない程度に沢山食べて頂戴」
 


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