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良助
【青春 恋愛小説】

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2 順子-16

 「良介君、それは詳しく言うともっと不思議に感ずるよ。出生率というのを調べると何処の国・どの時代でも大体男の方がほんの少し多いんだ。ところが男の染色体はXYという組み合わせで、女の染色体はXXという組み合わせなんだが、やはりXYという異質の組み合わせはXXという同質の組み合わせより弱いらしい。それで乳幼児の死亡率というのはどうしても男の方が女より高くなるそうだ。だから少し男が余分に生まれていて丁度結果的には同じくらいの数になるんだ。そうするとまるでいろいろ考え合わせて男女同数になるように誰かが調整でもしているように思えて来るだろう?」
 「本当ですね」
 「そういう理屈では説明出来ないようなうまい仕組みがこの世には沢山あってね、それできっと神様というものがいるに違いないという考え方が出てくるんだね」
 「神様かあ」
 「田宮さんは何か宗教をお持ちなんですか?」
 「いえ、私は全く不信心で。唯、人間の体の仕組み1つ取ってみても何故こんなに精巧に出来ているんだろうと驚くような所が沢山ありますよね。建築物にしたって科学が進んで素晴らしいビルはあちこちに建っているけれども1000年も持つビルというのは考えられない。昔は鉄筋コンクリートのビルは永久建築だなどと言われたりしたんだが、50年も経つと内部はボロボロになっているらしい。しかし法隆寺なんて木造建築なのに1000年以上も寿命があったりする。その建築物が乗っかっている土だって考えると不思議な物で、元はスコップで簡単に掘り返せるような物なのに何十トン、何百トンという重さのビルを建てても平気で土は支えてくれる。水だってそうだ。大きな船を浮かべても水は潰れたりしない。そんな風に自然というものは極く身近を見ても不思議でいっぱいなんだな。そういうのを謙虚に受け止めると、神と言うかどうかは別にして何か大きな存在があって、それらの不思議を支配しているというような気分になってしまう。それを宗教感情と言っていいと思うんだが、そういう宗教感情はとても大切なもので、大事にしたいと思っている。だから特定の宗教は信じていないけれども、神を信じるかと聞かれたら私は信じると答える。まあ誤解される虞があるので、そんな質問にうっかり答えたりはしないんだけども」
 「お父さんって銀行屋で数字と経済以外に興味は無いんだと思っていたけど、随分いろいろなことを考えているのね」
 「そうだよ。まあ順子1人を相手にこんな演説ぶつ訳には行かないからね。今日は小山君が来てくれたお陰で娘にもちょっとは見直されたようだし、これからも勉強に差し障りが無ければいつでも遊びに来て下さい」
 「はい」
 「どうも有り難うございます」
 「果たし合いはしませんので、今度はどうぞラフな服装でおいで下さい。尤も私はその方が見ていて楽しいけれども」
 「はい。精々お洒落して参ります」

 「お母さんって何か病気なの?」
 「特にこれっていう病気は無いらしいけど弱いんだって。ちょっと風邪惹いても一ヶ月くらいは寝ちゃうらしい」
 「そう。それで田宮さんは?」
 「あいつは別に弱いこと無いみたい」
 「そう。それはお気の毒ねえ」
 「うん、凄い美人らしい」
 「美人薄命って昔から言うからね」
 「それじゃ姉さんは長生きするね」
 「馬鹿。だから私も長生き出来ないんだから生きてるうちに大事にしなさいって言ってるんだよ」
 「姉さんが長生き出来ない?」
 「そう。美人だから」
 「うーん。早く死んだら美人だったって認めてやる」
 「良介に認められなくてもいいんだよ」
 「じゃ認めるから早く死んで」
 「そんなこと言ってると良介より何が何でも先には死なない」

 翌日良介のクラスでは良介と田宮順子が将来結婚するらしいという噂でもちきりだった。
 「お前、田宮と結婚するんだって?」
 「田宮と結婚?」
 「なんか田宮がそんなこと言ってるらしいじゃないか」
 「へ? まさか」
 「木原と室野が言ってたぞ」
 「へえ。なんでだろう?」
 「そういう話は無いの?」
 「さあ、昨日姉さんと田宮の家に遊びに行ったけど、結婚なんて話は出なかった」
 「姉さんと遊びに行ったぁ?」
 「ああ」
 「何で?」
 「何でって、遊びに来ないかって言うから」
 「それで、どうして姉さんまで行くんだよ」
 「勘違いして」
 「勘違いして姉さんも行ったぁ? それってどういうことだよ」
 「うん大したことじゃない」
 「大したことだろ」
 「そうか?」



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