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良助
【青春 恋愛小説】

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2 順子-13

 「お父さん、高校生くらいの年頃の男の子で、姉さんとか妹と出歩くのが好きだっていう子はちょっとおかしいよ。そういう子がいるのは私も知ってるけど、それはシスター・コンプレックスだと思うわ」
 「うーん。確かにそうかも知れないね。自分の姉や妹を恋人代わりにする精神は余り健全なものでは無いね」
 「でも良介が私を嫌うのは少し行きすぎよ」
 「別に嫌ってない。敬遠してるだけ」
 「敬遠か。それは良かったね」
 「はい。それが姉と弟の正しいあり方だと僕は思います」
 「偉そうに。幼稚園で泣かされてる良介をいつも私が迎えに行って仇取ってやったのを忘れているね」
 「えー? そんなことあったの?」
 「あったよ、毎日だよ。小学校の帰りに毎日幼稚園に寄って迎えに行ってたんだから」
 「ああ、やっぱり姉弟っていいもんだわね。私って1人っ子だから羨ましい」
 「それは小さい時の話。大きくなると煩わしいだけなんだ」
 「そうやって憎まれ口きくのも1人っ子だと出来ないのよ」
 「それじゃ僕の代わりに好きなだけ憎まれ口きいてやっていいよ」
 「まさか。でもこんな綺麗なお姉さんがいたら素敵ね」
 「それじゃいつでもうちに遊びに来て下さい。但し良介は受験勉強で忙しいらしいから私の部屋に直行して下さいね」
 「ちっとも忙しくないよ」
 「忙しいの」
 「勉強は暇な時にやる主義だから」
 「そんなこと言ってるから駄目なんだって分からないの?」
 「はいはい。唯の冗談です」
 「全く。頭が良くて勉強しないなら分かるけど、頭が悪い癖に勉強しないんだからどうしようも無い」
 「いや。頭がいいというのは結構なことかも知れないけど、私は必ずしもそう思いません。私の勤めている銀行には国立大学を出た頭のいい若者が毎年沢山入って来ますけども、そういう人達を見ていると頭がいいというのは必ずしもそんなに褒められたものでは無いという気がします。頭がいいというよりも私どもが求めているのは人間としての総合力と言ったらいいか、性格とか行動力とかそういったすべてを総合しての能力を求めているんですけど、最近の教育は学力重視が行きすぎていてペーパー・テストの点数に現れないものは何も評価しないで切り捨てているという欠点があるように私は思いますね」
 「そうですかあ」
 「そうですかあじゃ無い。良介はまず大学に入るのが先決。人間の総合力を磨くのはそれからの話」
 「はいはい。並行して磨くっていうのはどうかな?」
 「駄目」
 「良介君、総合力というのは別に遊ぶことで磨かれる訳では無いんだ。自分で問題を見つけだす能力と言うか、常識に疑問を持つことの出来る柔軟な考え方をすると言うか、そういったことで磨かれていくものなんだよ。例えば、銀行という大きな組織には何事にもシステムがあってそのシステムに従って動いて行くのが尤も効率的で誤りが少ないんだ。高度に完成されたシステムというのはそういうものなんだ。しかし全てのシステムは時代の産物なんだね。例えば現在のようにコンピューターが発達してくるとそれ以前のコンピューターが無かった時代のシステムをそのまま利用していていいものか。勿論コンピューター化されたことを前提にシステムは変化して行ってるんだが、もっと根本的に全く違う観点から新しいシステムを組み立てるということを試みてもいいし、若い人はコンピューター社会に育っているんだから僕らとは全然違った考えを持っているのでは無いかと期待するんだが、実際には時代が変わったんだからシステムも根本的に変える必要があるんじゃないかと疑問を持つのは大抵私らのような年寄りなんだ。結局点数で表せないものを切り捨てていってしまう現在の教育の在り方が創造力とか柔軟な思考とかいったものを育てるのに不向きなんだね。記憶力と理解力と応用力だけの教育なんだ」
 「はあ」
 「ふんふん」
 「ふんふんじゃないの。良介何処まで理解出来てるの?」
 「半分くらい」
 「何が半分なんだか」


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