僕は14角形-23
その日は何事もなく終了した。信じられないことに。
帰り支度を済ませたのに、綿星が見つからない。仕方なく、ひとりで廊下を歩き階段を降りた。「なるべく人に会いませんように」言葉という物は唱えるとそれが実際に起こる。下駄履きの所に真っ赤な緋鯉が立っていた。大きく掌を叩いて
「おみごと！」と叫ぶ。
「叫ぶんじゃねえよ、ばれたらどうすんだよ」
「そのしゃべり方の方がよっぽど危ないわよ。しっかし、綿星の力は凄いもんだね」
「僕もそのことには驚いているんですけど」
学校中が僕のことを女子と判断しているのに、そもそも草冠と姫乃はなぜその圏外なのだろう。それも謎のひとつだ。
僕はサンダルに履き替え、ちょっとふらついていると、背後から姫乃が語りかけた。
「今度の休みにはブティック巡りしよう。なあに、お金の心配はいらないよ。あたしといちごが出すから。女の子はね、服が多すぎるって事はないのよ」
僕はちょっとだけ振り返り、前を向いて家路を急いだ。