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たんぽぽは風に揺れて
【兄妹相姦 官能小説】

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たんぽぽは風に揺れて-6

(6)

 『一人暮らしをすればいい』
両親に憤懣をぶちまけたのは本心でもある。さんざん心をかき乱された本音ではあった。隣室から伝わってくる息遣いを実感するのは嬉しい。だが、その歓びがまたいつ、突然なくなるのか。
(またきっと、男を連れてくる)
三度嫉妬の苦渋を味わうなら離れていたほうがいい。……
その思いはたしかにあった。辛い想いは感情を煽り、噴出の勢いを増す。しかし、そんな時の興奮は虚しさを伴ってくるのだった。


 さすがに二度目の破綻ともなると志麻子も少しはしおらしく見えた。
「また戻ってきちゃった……」
顔を合わせた時、言ったものである。その時ふと見せた悲しそうな陰りのある笑みが俺の胸に小さな痛みをもたらした。その痛みは、どう表現したらいいだろう。鈍く、湿っぽく、じわっと微かな熱を含んだ微妙な『痛み』であった。
(志麻子は、疲れている……)
同時にそう感じた。その想いが胸を締め付けたのだと、その夜寝床で思い至った。
 節操のない女、無教養、あばずれ……。家を出てゆく志麻子に無言の罵声を浴びせた日々。声を出していないのになぜか喉が嗄れてしまっていた。絞り出すような妹に対する想いがあったからである。
(愛おしい……)
叫びとなっていた。
 強がりも見せなかったのは、おそらく自らの後悔を隠す気力もなかったのかもしれない。深い思慮もなく走り続けた時間の虚しさに思い至ったのだろうか。

 いつしか静かに志麻子を見つめる自分に気が付いた。
「おはよう……」
朝、顔を合わせると小さな声で挨拶するようになった。ここ数年は俺を避けるように目を逸らせたりしたものだ。
「おはよう」
ぎこちなく応えると恥ずかしそうに笑みを見せた。思えば挨拶を交わすなど久しくなかったことである。
(気持ちのいいものだ……)
 志麻子は変わった……。そのことが俺の感情を温かくしていったのだと思う。
 少しして彼女がコンビニでアルバイトを始めたことを母親から聞いた。
「駅前のR。早番とか遅番とかあるらしいよ」
早い日は6時前に出かけるという。そういえば朝、顔を見ないことがあった。
「あの子なりに頑張ってるんだから、お前もあまり悪く言わないで。お金貯めて介護の資格をとるって言ってる。勉強してるみたいだよ」
心地よい風を感じ、俺の心はさらに優しくなった。

 志麻子が変わったのは生活面だけではない。
(26になる……)
その肉体は服の上からでもわかるほどしっとりと濡れた色香に包まれていた。腰回り、太もも、胸は大きくはないが形の良い膨らみをみせていた。ほどよい肉が全身を被い、熟した女体の魅力に俺は悶え苦しんだ。彼女を見つめるやさしい眼差しと相反するような情欲の激しさは決して矛盾しないと俺は思っていた。情は心であり、肉体と一体のものである。心の欲は肉体とともにうごめくのだ。
(志麻子を愛している……)
そばにいるだけでいい。どこへも行かないでくれ。……愛は時に身勝手に流れていくこともある。

「志麻子は?」
出勤前、俺は母親に訊くようになった。早番か遅番か確かめるためだった。
「まだ寝てるよ」
遅番は昼過ぎに出かけるらしい。帰りは10時頃になる。
(遅番……)
志麻子の部屋を訪れる日だった。早めに帰宅すると食事もそこそこに女臭漂う部屋に行き、ひと時の恍惚に浸る。まずは灯りを点けず、暗闇の中に満ちているにおいを吸い込み、志麻子を追う。
(大人の……志麻子……)
そう感じるのは成熟した女体に圧倒されているからだろうが、たしかに違った。そう思う。短大を受験する頃のにおいはどうだったか。……体内を吹き抜けるような鮮烈さを感じた気がするが、よく憶えていないのは今の彼女の濃厚なにおいに溶かされてしまったものか。
(とろみのある、におい……)
大人になった志麻子から滲み出た『女』が部屋に籠っていた。

 陶酔の中、灯りを点ける。パジャマはきちんと畳んで枕の上に置いてある。そして大きな熊のぬいぐるみ。顔だけ出して布団をかけてある。抱いて寝ているのだろうか、抱き枕のように。
(志麻子……)
パジャマをそっと抱き、枕に顔を押し当てる。濃密な女のにおいが広がった。
(たまらない!)
怒張したペニスを引き出して握った。木のように硬い。扱けばあっという間に突き上げてしまう。堪えた。扱くのを控えた。志麻子に向かって射精するのだ。大切にしたい。溜まりに溜まった限界の時、全身で放出することに決めていた。
(辛い……)
昂奮の途切れない毎日、苦しかったが絶頂の最大値を求めながら抑制した。
 志麻子は俺の心の拠り所になっていた。
 

 
 


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