第7章 嫉妬-3
麻里奈が連れて行ってくれたレストランは『precious』と言うこじんまりとしたレストランであった。店構えからしてアットホームな雰囲気をしている可愛らしいレストランだ。これも派手なイメージのある麻里奈にしては意外であった。
店の中に入るとカウンターの向こうの店長らしき人の良さそうなオジさんが麻里奈を見て行った。
「よう、麻里奈ちゃん、久しぶり！」
「どうもです♪」
仲がいいようだ。店長は貴之を見てニヤッと笑いながら言った。
「おっ！年下の彼氏？？」
麻里奈は珍しく慌てて否定する。
「まだ付き合ってないからっ！！友達よ、友達っ！」
「まだって事はそのうち付き合うって事？てか今日いただきますって感じか？♪」
「もう！デリカシーなさ過ぎ！！」
「良く言われる♪ま、せっかくのイブ、ゆっくりしてってよ。」
「はーい。」
麻里奈と貴之はサンタコスをしたウェイトレスに案内され予約席についた。貴之は店の中を見渡す。手作りっぽいクリスマス風の飾り付けに暖かみを感じた。
「いいお店ですね。」
麻里奈は嬉しそうに笑う。
「でしょ？？」
「はい！良く雑誌に載ってる高級でお洒落過ぎるとこより全然いいです！」
「良かったー、気に入ってくれて。ご飯も美味しいんだから。」
「楽しみっす！」
店の雰囲気のおかげだろうか、貴之の緊張は解れて行った。
高校生だからお酒はダメと言われて、あのハロウィンパーティーの時には飲ませたじゃんと思いながら、ノンアルシャンパンで乾杯をして話しているうちに料理が来る。
貴之はチーズハンバーグを頼んだ。麻里奈も同じだ。ステーキでもいいと言われたが、写真付きのメニューを見て麻里奈のオススメでもあったし、1番美味そうに感じたのでチーズハンバーグに決めた。
「美味い！！」
一口食べただけで病みつきになりそうだ。特にチーズが美味い。夢中で食べる貴之を和かに見つめながら麻里奈も食べた。
「あー、超美味かったです！」
「でしょ！！」
「はい。お店の雰囲気も最高です！何か色々考えて勝手に緊張してたのが馬鹿みたいっす。」
「そーそー、大事なのは上っ面じゃなくて中身なのよ♪ま、私は上っ面も中身も最高だけどね♪あと…」
麻里奈は貴之に顔を寄せてソッと言った。
「カ・ラ・ダも、ねっ♪」
「！？」
思わず赤面してしまった貴之。確かに最高だ。もはや麻里奈の体に病みつきである。本当のディナーは私だと言わんばかりの麻里奈に貴之はドキドキしてしまった。
麻里奈はニコッと笑い椅子に背中をつけた。
「あ、想像しちゃった？♪」
「い、いや…」
「えー？それとも貴之君が気になるのはあのサンタコス？？」
「えっ…？」
「だってさっきからウェイトレスの事をチラチラ見てるじゃ〜ん。」
「あ…（ば、バレてた…。）す、すみません…」
最近コスプレばかり見ていたせいか、ついついコスプレが気になりサンタコスのウェイトレスをチラチラ見ていた貴之だった。
麻里奈は一瞬、それに嫉妬したかのような表情を浮かべると思い立ったかのように言った。
「じゃあ今からドンキ行ってサンタコス買っちゃおうかなー。しょうがないなー、今日は麻里奈サンタが貴之坊やを楽しませてあげる♪」
「えっ！？」
「ンフッ、じゃ、行こっか♪」
麻里奈はその前にトイレに行くと言い席を外し、戻って来るとコートを着て貴之と腕を組んで出口に歩く。
「マスター、ご馳走様♪また来るね？」
「ああ、また彼氏と一瞬に来な！」
「だーかーらー、」
「アハハ！またね。」
麻里奈はマスターに舌を出して店を出た。
「あ、あれ…お金は…？」
「あ、いいの。私の奢り♪」
「す、すみません…（いつ払ったんだ！？もしかしてトイレに行った時…？）」
貴之は大人なマナーと言うものを学ばせて貰った。それが普通なのかどうかは分からないが、貴之の知らない事を教えてくれたような気がした。
「サンタコスでしたら貴之君、燃えちゃうんじゃないのぉ？♪」
「え…？わ、分かんないっすけど…燃えちゃうかも…」
「楽しみぃ♪麻里奈サンタはいっぱいプレゼント持ってるからね？ンフッ♪」
「！？」
いつものスケベな麻里奈だ。そんな麻里奈に小さい頃サンタを信じていた時に、一体どんなプレゼントをくれるのだろうと胸をワクワクさせた時のように貴之は胸を膨らませていたのであった。