第3話『フランケン娘の電気ショック』-2
「わあ♪ もっと艶々になって、よかったですね〜」
髪を梳くように唾をまぶしたところで、巨乳娘が嬉しそうに話しかける。
「くっさくて、バカっぽくて、とってもお似合いになりました〜。 もっと塗ってあげますから〜もっと無様に恥ずかしい汁を垂れ流して、締まりの悪いチチマンコに溜めましょうね〜♪」
「うぅ……ぶふぅ……」
そういう間にも、タラリ、タラリ、溢れた鼻水が口許から糸をひき、涎と一緒に乳房へ垂れた。 慌ててツギハギ娘は乳房を強く掴み、寄せてあげて作った谷間に受け止める。
――と、ここで私はハッとした。 少女たちの一部始終に見入ってしまい、ついお菓子が疎かになっていたからだ。 フランケンシュタインがモチーフなら、さしずめ木の実代わりに『ナッツ』でも上げればいいだろう。 確か台所にマカデミアナッツがあったような……。
私がお菓子を取りに行こうとした矢先。
「あの〜やっぱりこんなコスプレじゃダメでしょうか〜……」
巨乳娘がシュンとした様子で私に尋ねた。
「えーと……」
『そういうわけじゃなくて、どんなお菓子にしようか考えていただけ』と答えようとしたものの、巨乳娘は問わず語りにポソポソと呟いて、
「あたしとしましても、簡単にお菓子が頂けるとは思っていませんでしたから、納得するしかないですよね〜……大体、寮で先輩の陰口をして、問い詰めたら『いってません』なんて嘘をつくようなコが、お菓子、貰えるわけないんですよ〜」
傍らのツギハギ娘を小突く。
「ふぶっ……うぅぅ」
一瞬よろめくも、すぐに体制を立て直して、ツギハギ娘は頷いた。
「だからいったこっちゃないんですよ〜。 貴方が嘘つきだってこと、いくら取り繕ってもみんなバレちゃってるんですから〜。 監視カメラの位置を全部把握するなんて、あたし達には出来っこないのに、ちょっぴり過信しすぎちゃいましたね〜」
なにやら私にはチンプンカンプンだが、巨乳娘はツギハギ娘に含むところがあるんだろうか?
「悪い事はしちゃだめ。 特に嘘はダメって、あたし、ちゃんと教えてあげましたよねぇ?」
「うぅ、うぶぅ」
コクコク、コクリ。 ツギハギ娘はボールギャクで呂律が回っていなかったが、瞳で雄弁に慈悲を乞うている。 ただ、頷いた拍子にポタリ、こぼれた涎を受け損なって地面に零れたことを、
「あら〜またやっちゃいましたか〜……えい」
巨乳娘は見逃さなかった。 ポチリ。 巨乳娘が手中のリモコンを操作して、
「ぶぎぃぃぃぃぃっ!!」
ビクンッ、ツギハギ娘が痙攣する。 上半身がバネ仕掛けの玩具よろしく跳ねたかとおもうと、ガクリ、糸が切れた操り人形みたいに崩れ落ちそうに。 どうにか膝が地面につく間際で堪えたものの、ビクンビクン、腰から下が小刻みに震えた。
「ふぐっ、ぜひっ、かっ、は……ッ」
「残念ですけど〜涎で玄関を汚しちゃいましたから、これって充分『トリート』ですよ〜。 『トリート』しちゃったからには〜もうお菓子はいただけません〜」
「う、うぶぅ……!」
「そんな目をしてもダメです〜。 これで連続8軒お菓子をいただけなかったわけですけど、次こそちゃんと貰えるように……頑張りましょうね♪」
「ふぶっ、ふぁう、ふぁふっ」
「そんな顔したってダメ。 10軒でも20軒でも、いっぱいお菓子を貰えるまで寮に帰れませんよ〜」
「ふうぅぅぅ〜ッ!」
ニッコリ微笑む巨乳娘。 一方ツギハギ娘は、ブンブン、首を激しく左右にふる。 とはいえ手加減はしているとみえ、今度は涎は零れなかった。
「それでは〜大変失礼いたしました〜。 ほらほら〜テキパキ動きなさいね〜。 次はおむかいさんにいきますからね〜。 いうこときかないと、本日4回目の50ボルトしちゃいますよ〜♪」
「……うぶ」
巨乳娘がリモコンを突きつけると、観念したようにツギハギ娘が大人しくなる。 そのままクルリ、私に背中を向けると、2人はお菓子を受け取ることなく立ち去った。 本当に、振り返ることもなく立ち去ってしまった。
……いや、決してお菓子をあげないつもりじゃなかったんだけど。 タイミングを失ったというか、端からお菓子を貰うつもりがなかったような……ていうか貴方たち、私のうちに何しにきたの?
なんというか、さっきの私、完全に蚊帳の外だったなぁ……。
釈然としないままドアを閉める。 どうせまたすぐにノックされるんだろうけど、夜は貴重な休憩時間で、少しでも身体とメンタルを休めたい。
すぅ〜……。
大きく深呼吸し、両手を組んで真上に伸ばす。 まあ、こういうお客もたまにはいるということで、あんまり気にしないようにしよう、そうしよう。