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HAPPY HELLOWEEN 〜ハッピー・エロウィン〜
【学園物 官能小説】

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第4話『ハロウィン・パレード』-1

HAPPY HELLOWEEN 〜 ハッピー・エロウィン 〜

第4話『ハロウィン・パレード』


 大通りに面した立地の宿命で、街頭宣伝車にしろ緊急車両にしろ、安寧を妨げられることはしょっちゅうだ。 ハロウィンのお菓子強請(ねだ)りが一段落したと思ったら、賑やかな楽曲に合わせて、ガヤガヤ、ワイワイ、大勢の気配が近づいてくる。 3Fの寝室でカーテンを開けると、行灯や電飾を掲げた華やかなパレードが見えた。

 ハロウィン・パレード。

 私が学生の頃は――もう10年以上前になる――こういう学外行事って秋の『例大祭』しかなかったっけ……もちろん、わざわざ学外に連れ出されて恥をかかされるイベントなんて、無い方がいいに決まっているから、今の学園生には同情する。

 先頭はオーソドックスな仮装行列だ。 私の家を訪ねてきたフランケン娘やオオカミ娘が、えっちらおっちら、胸を寄せながら、或はがに股のはしたない姿で歩いている。 ホッケーマスクが開口した『ジェイソン』、鉄の爪と開瞼器を装着した『フレディ』、コミカルな道化化粧が口を拡げた『ペニーワイズ』のように、全体的に旧世紀西洋のホラー・キャラクターに扮しているようだ。 そして全員が『開口具』で口腔粘膜を露出していているところを見るに、『口を拡げる』という仮装コンセプトに基づいているんだろう。 

 第二集団は、どこを見てもオレンジ一色。 お揃いなカボチャの被り物を着け、両手を背中に組み、リンボーダンスよろしく背中を反らしたまま、一糸乱れず行進する。 肌には、蛍光ペンだろうか、カボチャ系の落書きでビッシリ埋まっていて、全身がオレンジ色に光って見えた。 というか、第二集団だけやけに明るくて、そこだけ電飾がいらないくらいだ。 

 ……というか、いくらなんでも明るすぎる。 オレンジ色に光っているというか、チラチラと輪郭が揺れるのは、もしかして全員うっすら燃えているような……。

 眼鏡をかけ直して注目する。 それぞれの落書きから小さな炎が揺蕩(たゆた)っていた。 
 あれは、確か可燃性塗料で、言い換えれば色付きの低温蝋燭だ。 融点が低いため、垂れた蝋が肌についても重度の火傷には至らない。 けれど肌上で直接燃焼すれば話は別。 滑稽なカボチャの被り物の下では、歯を食いしばった1回生の少女たちが熱に耐えているに違いない。 

「ふぅ……」

 溜息がでる。 肌の上で炎を燃やされる……重傷に至らないよう配慮はしているんだろうけれど、中々酷な設定だ。 確かに『裸に落書きされたカボチャの仮装で歩き回る』だけだと温すぎるから、それだとどうなのかなとは思うが、それにしても直火はキツイ。 去年は『貫通針』、一昨年は『縫い付け』と、毎年第二グループは鬼畜な仮装をもってくるから、今年の『火責め』だからって特に驚きはしないものの、自分が炙られる立場だったらゾッとする。

 ……いや、まあ、私だって学園生だった頃は、特に1回生の頃は毎日が地獄だったから。 汚物だって毎日食べたし……食べさせたし。 激痛がなかった日なんて無いし、泣かない日なんて思い出せないし、辛いのも苦しいのも、ぜーんぶ私も経てきたことだ。 つまり、彼女たちのパレードだって、私にとって他人事では決してない。 私は一番苦しい学園生時代を乗り越えたから、記憶が過去のものになりつつあるだけ。


 


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