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《見えない鎖》
【鬼畜 官能小説】

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〈夢見る被写体〉-10

『そういやまだ電話番号教えてなかったね。なんならメアドとLINE交換もしておこうか?』


いざというときの場合を考えたら、孝明との連絡口は多い方がいい。
迷わず花恋は申し出にのり、その全てを受け入れた。


『さっき裕太に電話したから、そろそろ迎えに……』


言うが早いか、事務室に裕太と裕樹が入ってきた。
泣いている花恋など眼中にないと言いたげに、完全に無視して孝明にペコリと頭を下げる。


『今日の撮影はどうでした?コイツ“使えました”かね?』


汚い物でも見るかのように、裕太は横目で花恋を見遣る。
この短いやり取りだけで、普段からの花恋への扱いが知れようというもの。


『使えるも何も最高だったよ。文句無しだ』


兄弟は安堵の色を浮かべると、当然とばかりに花恋が持っている茶封筒に手を伸ばす。
花恋はそれを奪われまいとして強く両手で握り、身体を捻って抵抗を見せる。

『ヤラレっぱなしじゃないってトコを見せてやれ』

という孝明からの“声援”に、花恋はなんとか応えようとしたのだ。


『ふざけてんじゃねえッ!!』

「……ッ!?」


その怒鳴り声は兄弟からのものではなく、孝明が発したものだった。


『裕太ぁ……今日の分の金は渡してるよなあ……あんなんじゃ『足りねえ』って言いてえのかよ……ああッ?』

『ああ…あ……』

『ち、違います…ッ…そんな事は絶対に……』


ただでさえ地声の低い孝明の怒声は、自分を庇う為のものだと分かっている花恋でさえ恐怖を抱かせる。
それが向けられている兄弟の顔は強張って固まっており、二人ともピンッと直立してしまっていた。


『俺が金のやり取りでふざけるのは嫌いだって知ってんだろうが……この金は花恋ちゃんのモンだ。お前らのモンじゃねえぞ!』

「………!!!」


ハッキリと孝明は花恋に加勢して見せた。
欲しくもなかった金とはいえど、確かにこの茶封筒の中のお金は、今日の花恋が稼いだものだ。
至極当たり前の事に違いないのだが、それすらも弁えない兄弟への一喝は頼もしい以外の言葉はなく、花恋はまるで窮地に現れたヒーローでも見るかのような眼差しを孝明に向けていた……。



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