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《見えない鎖》
【鬼畜 官能小説】

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〈夢見る被写体〉-11

『それとな、今日付けで花恋ちゃんは“俺の女”になったからな。契約交わして専属モデルになったんだから勝手な真似すんなよ』

(や…やった…!)


決定的な言葉が孝明の口から発せられた瞬間、花恋は飛び上がって喜びたくなった。
兄弟の唖然とした表情が愉快で堪らず、もっと驚かせてやろうと花恋も話す。


「これから私に変なコトしようとしたら、直ぐに孝明さんに言っちゃうんだから。もう甘く見ないでよね」

『……な…!?』


花恋は孝明に駆け寄り、大胆にも腕に抱きついて見せた。
裕太は信じられないといった表情で見ているだけだし、裕樹は何か言いたげだが何も言えず、ポカンと開いた口をカクカクと動かしているだけだ。


(やっと…やっとこれで……)


“悩み事”は消える寸前まできた。
恐れられている男の《女》になった今、あの腰抜けの兄弟など恐れるに足らぬ存在にまで堕ちた。

しかし、これからが〈本番〉である。

孝明の元から離れ、一人で兄弟と対峙した時が最後の試練だからだ。


『わ…分かりました。じゃあこれからは孝明さんの女として接しますよ』

『ほら、そろそろ帰るぞ。孝明さんにちゃんと挨拶してな』


離れがたいと思っても、いつまでもこの事務室には居られなかった。
花恋はペコリと頭を下げると、しっかりと茶封筒を握りしめて孝明から離れた。


「孝明さん、じゃあまた」


万感の思いを込めたシンプルな挨拶に、孝明は笑顔で応えた。

初対面の時に感じた嫌悪感が何だったのかと思うくらい、花恋の中で藤盛孝明という男性の存在は大きくなっていた。


(孝明さん……私、頑張るから……)


ドアはパタンと閉められた。
廊下の突き当たりにあるエレベーターに再び乗り、そして冷えた空気が澱んでいる地下駐車場に下りる。
その間中、兄弟は一言も発しなかったし、ミニバンに乗り込んで発車してからも、沈黙は続いたままだった。


『………』

「………」


居心地の悪い沈黙が続いたまま、ミニバンは自宅に辿り着いた。

時刻は夕方に迫り風は少し涼しく、それは初秋の訪れを告げている。
一つの季節が過ぎていくのを感じながら、花恋は自分も「変わらなければ」という思いを新たにしていた。






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