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《見えない鎖》
【鬼畜 官能小説】

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〈夢見る被写体〉-9




事務室には孝明しかいなかった。
孝明は椅子に座って待っており、あの机の上には茶封筒が置かれていた。


『お疲れさん。これは花恋ちゃんの今日のギャラだよ?ちょっと開けて見てみなよ』


別にお金が欲しかった訳ではなかった。
だが、差し出された物を受け取らないのも失礼である。
渋々と手を伸ばして花恋が封筒を持つと、かなりの厚さがあるのが分かった。
少しの驚きと戸惑いを見せながら中身を引き出すと、そこには花恋が手にした事がないくらいの《お札》が入っていた。


『25万……数えてごらん?それ全部花恋ちゃんのお金だから』

「……ホントに……25万円…入ってる……」







花恋の胸の中に不安が生まれてきた。
これだけの大金をポンと渡すのだから、もしかすると実は自分は“契約させられていた”んじゃないか……と。

その強張った表情を察してか、孝明はニッコリと笑い、花恋の不安は杞憂であると告げた。


『その袋には今日の分のギャラしか入ってない。それと裕太達には紹介料金しか渡してない。つまり“可憐ちゃん”の撮影は、もう無いって事だよ。まあ契約してたら契約料と作品の売上の何パーセントかは君に渡るんだが……そんなの要らないよね?』


少しだけ安堵の色が見えた。
そして、もう一つの心配事も解消する言葉が、孝明自身の口から放たれた。


『でも裕太には「契約した」って言うんだぞ?「専属モデルになって孝明の女になったから、手出しするな」ってね?僕もそうやって《嘘》をつくから』



全ての緊張が解けたのか、花恋はポロポロと涙を溢して泣き崩れた。

もう怯えながら生活しなくてもいい。
もう恋愛を邪魔される事はない。

忘れていた嬉し涙を流す花恋の肩を、孝明は優しく叩いて励ました。


『もし、このお金を裕太が盗ろうとしたら、直ぐに俺に電話してくれよ?そんな事は俺が許さないから……フフ…花恋ちゃんも強くなりなよ。ヤラレっぱなしじゃないってトコを見せてやろうぜ?』

「ありッ…エグッ!ありがとうッ!ございます…ッ…ヒグッ…ひふ…ッ」


孝明に思いきって打ち明けて、本当に良かったと花恋は思った。
勇気を振り絞る事で現状を打開出来るんだと知れて、また生きる気力が湧いてきていた。



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