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『JUSTICE』
【青春 恋愛小説】

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『JUSTICE』-4

その日以来、電車の中で西崎によく声をかけるようになった。最初は俺が声をかけてもそっけなかったけど、そのうちちゃんと受け答えしてくれるくらいになった。相変わらずケンカも多いけど、俺のこと、少しは信用してくれてるのかな?なんて思ったりして、それがすごくうれしくて…。それに電車の中で西崎と話すのが俺の楽しみにもなっていた。我ながらおかしな感覚だと思う。そういえば香織ちゃんは信秋と付き合うことになったらしい。いつの間にそんなことになったのかはまったくわからないが…。


とにかく、そうして俺と西崎が知り合って3ヶ月ほどたったある日、俺は下校途中に見知った姿をみかけた。
(あれは…西崎?)
間違いない。西崎だ。なにやら俺と同じ高校の男と話しているみたいだ。俺は気づかれないようにそこに近付いていく。するとふたりの会話が聞こえてきた。
「なあ、もう一度俺とやり直そう?」
「やめてください先輩!私、そのつもりはありません!」
なるほど。百合子ちゃんの言ってたひどい振り方した先輩ってのはあいつだな?と直感した。男はなおも西崎をつかんで説得しようと試みている。
「なんでだよ?あのときは俺が悪かったよ。謝る、この通りだ。だから頼むって。」
「イヤッ!離してッ!」
さらに抵抗する西崎に対して、男の態度が一変した。
「こんなに頼んでるのに…そうかよ!じゃあ無理矢理でも俺のものにしてやる!」
…その瞬間、俺は地面を蹴って飛び出し、男にタックルをかましていた。不意を突かれた男の体がふっ飛んでいく。
「…!?佐藤!?なんで…?」
突然の俺の登場に、西崎はずいぶん驚いているようだ。
「よ。ずいぶんお困りみたいじゃんかよ。助けに来てやったぜ。」
ようやく立ち上がった男が叫んだ。
「お前、何しやがんだ!」
すかさず言葉を返してやる。
「何って、邪魔ですよ、邪魔。」
俺の言葉にさらに顔を歪ませるが、少し冷静さを取り戻して男が言う。
「お前には関係ないだろ。人の話にくび突っ込まないでもらいたいな。」
関係ない…か。そうでもないんだな、これが。
「関係なくないね。俺の好きな子に、妙なまねされちゃ困るからな。」
「…ッ!?」
西崎が息を飲むのがわかった。俺は続けて男に言った。
「だいたい勝手なこと言ってんじゃねぇよ!自分で散々西崎のこと傷つけておいて、今さら偉そうな口叩くな!」
すると自分の思い通りにならないことに腹をたてたのだろうか。
「あー、うぜぇなお前!黙っとけ!」
男は俺に対して激しい口調でそう叫ぶと、拳を振り上げて突っ込んできた。
「悪いが、話は終わりだ…!」
そういって俺も拳をにぎって身構える。一瞬俺と男の影が交錯した。
「ぶはっ!」
無様な声をあげて後ろに大きく吹っ飛んだ。…もちろん相手の男が。男は鼻血を流してのびてしまった。こりゃちょっとやりすぎたか?やばいなぁ。う〜ん、ここはひとまず…
「逃げるぞ!」
そう言うやいなや、俺は西崎の腕をつかんで走り出していた。


いつの間にか西崎の家の近くまで来ていたらしい。電車の中は無言だったが、そこまで来てようやく西崎が口を開いた。
「つ、強いんだね、佐藤って。」
「ん?ああ、じいちゃんにいろいろ仕込まれたからな。」
再び沈黙。お互いさっきのことを意識してうまく話ができないでいた。しかし、ついに西崎が核心に触れだした。
「…なんで、私があいつに傷つけられたって知ってるの?」
ウソをつこうかとも思ったけど、いまいちうまいウソが思いつかなかった。


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