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『JUSTICE』
【青春 恋愛小説】

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『JUSTICE』-1

ガタンゴトン…

俺は佐藤正義(まさよし)。曲がったことが大嫌いでちょっと短気な高校生だ。
俺は今通学のために電車に乗っている最中なんだが…通勤ラッシュの電車ってやつは乗ってるだけでイライラする。後ろから押されるし、足踏まれるし、暑いし、空気薄いし、おっさんの背広から過齢臭がするし…まぁみんな悪気があってやってるわけじゃないし、しょうがないんだけど、とにかくすげー疲れる。当然、まだまだ社会の厳しさを知らない、血気盛んなガキである俺のイライラも溜るわけだ。さらに、満員電車ってやつは、俺が嫌いな部類の人間がうろついてやがる。そんなやつを見つけた日には俺のイライラは最高潮。まぁそのときはそいつに責任とってもらうわけだが。で、例によって今日はそんなやつを見つけちまった。
(ありゃあ、触ってるよな…。)
そう…痴漢だ。
(俺に見つかったことを後悔するんだな。今日が貴様の命日だ、クックック…)
俺は頭の中でサイケな笑いをたてながら、駅での乗り降りで人が減っている隙にその痴漢の背後まで忍び寄る。どうやら被害をうけてるのは俺が通う高校とご近所の高島女子学園(略して高女)の生徒らしい。ちなみに俺の高校は男子校だ。女の子は後ろから見ても肩を震わせて怯えているのがわかる。
(かわいそうに、震えてんじゃねぇか。)
痴漢野郎のほうはそれにも構わず鼻息も荒く…って様子だ。まったくムカつくぜ。…さて、それじゃあそろそろ終わらせてやるか。
「げへ、怖がらなくてもだいじょ…」
「おい…」
周りには聞こえない程度の声で、ドスを聞かせて野郎に囁く。
「ヒッ…!」
瞬間、野郎の動きが止まった。
「朝からずいぶん鼻息荒いですなぁ、おい。お前さん、これ以上続けたらどうなるかわかってるかな…?」
野郎は焦ったように頷いている。
「痴漢ってさ、罪重いんだよね。社会から抹殺されるし。行き先、決まったね。」
俺は狭い隙間をうまく利用して、泣きそうな顔をしている野郎の脇腹に2、3発ボディーブローをかましてやった。本当は電車に乗るのがトラウマになるくらいボッコボコにしてやりたいんだが、こっちまで社会的に抹殺されかねないのでさすがにそれは無理だ。
「もし次やったら…こんなもんじゃあすまないかもなぁ。わかったら、とっとと失せな。」
野郎は苦痛に体をねじ曲げながら頷くと、駅に着いた途端に一目散に逃げていった。
(ワッハハハ!いいきみだ!スカッとしたぜ!)
と、まぁここまではよくあること。ところが、いつもはすかさずくるはずの「ありがとうございます」が今日はない。別に礼言ってもらうためにやってるわけじゃないけど、なんとなく釈然としなかった俺は駅で降りた女の子に声をかけた。
「おいおい。助けてもらったのに、礼のひとつもないわけ?」
すると、そいつは俺をキッとにらんで
「ふん、男なんてみんな同じでしょ!下心で助けたくせに、恩着せがましいこと言わないでっ!」
と言うとさっさといってしまった。呆然とする俺。だがすぐに怒りがフツフツと沸き起こってきた。
「な、な、なんだあのオンナァァァ!」
駅のホームに俺の怒声がむなしく響きわたった。


「ギャハハハハ!なんだそれ、ケッサクだな!ヒャハハハ!」
俺のいつもつるんでる親友、村田信秋に今朝の話をしたリアクションがこれだ。まぁこいつはいつもこんなだが。
「だぁ!笑い事じゃねーっつーの!」
俺が信秋にくってかかると、もう一人の親友、矢上龍一が真顔で口を開いた。
「佐藤、よっぽどヤラシイ目でその子を見てたんだね。…プフッ」
「そんな冗談を真顔で言うな!っていうか笑ってんじゃねぇ!笑えねぇよ!」
まったく、こいつら人事だと思いやがって…まぁ人事なんだけど。


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