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《見えない鎖》
【鬼畜 官能小説】

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〈蜉蝣の飛翔〉-5


――――――――――――




「……………」


帰りたくないと思っていても、花恋が帰る場所は“あの家”しかない。
せめてもの抵抗でもないが、帰宅の時間を何時もより遅くしていた。

夕食の準備の為に、母親は午後六時には帰宅する。
それに合わせて自分も一緒に帰ろうというものだ。


時間潰しをしようとブラついて自転車を漕いでいると、ふと気が付いた時には川の畔に花恋は辿り着いていた。
父親の営む工場より一キロほど上流の、子供の頃に幼なじみと遊んだ浅瀬が見える場所だ。
ここは柳の木や葦も生える昔ながらの風景を残しており、野鳥の囀ずりもあちらこちらから聞こえている。


{コポン……}


水面に銀色の魚体が踊る。それは体長20センチくらいのウグイと呼ばれる魚だ。
見れば川面のあちこちには白い羽虫が飛んでおり、どうやらウグイはそれを捕食しているようだった。


(あ……そういや昔、あの虫を餌にして琢磨が釣りをしてたっけ……)


琢磨とは、小学生の時に親しかった同級生で、よくこの川に来ては釣りをしていた。
そして花恋も敦子や由紀と一緒に、琢磨の釣っている様を見ていたものだった………。




『これ、蜉蝣(かげろう)って言うんだ。コイツ餌にするとよく釣れるんだぜ?』


琢磨は、パタパタと飛んでいる小さなトンボのような蜉蝣を捕まえては竿を振り、だいたい一振り目でウグイを釣り上げた。
他には体の側面が緑色に輝くオイカワという魚も、よく釣り上げていた。


『コイツさ、成虫になって直ぐに卵産んでさ、そのまんま死んじまうんだ。蝉より寿命が短いんだぜ?』


琢磨の指差す方向では、無数に群れる蜉蝣達が、躍り上がるウグイやオイカワに命を奪われていた……………。



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