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特命捜査対策室長 上原若菜
【レイプ 官能小説】

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同時多発テロ-7

「私も行きます。」
エリサはそう言った。若菜から離れるのが怖いわけではない。あの緊迫した中とは言え和典を見捨てて自分だけ逃げて来た事への罪悪感と後悔の念がエリサの足を動かすのであった。
「無理しなくていいわよ?」
「無理してでも…行きたいんです。」
若菜はエリサの気持ちを察した。和典を心配する気持ちが溢れている。自分の知らない間に2人の色んな意味での絆は強くなったんだな、そう思いフッと笑った。
「じゃあ行きましょ。」
「ハイ。」
足早に歩く若菜に遅れまいとエリサはまだ恐怖感が抜けきらない足を必死で前へ前へと動かしついて行った。

現場に近づくにつれ張り詰めた緊迫感と被害の大きさに若菜は圧倒されてしまいそうであった。東京刑務所や風俗店での爆発とは桁違いの破滅的な状況だ。現場は緊急で駆けつけた近隣の署員が警備しているようであったが、警察が静止しなくても誰も崩れ落ちた警視庁ビルに近づこうとする者はいなかった。何度も訪れた警視庁への道もまるで違う世界に入り込んだかのように変わり果てていた。もはや瓦礫で道もない。道を歩くと言うよりも瓦礫を踏み分けて若菜は警備をしている署員に警察手帳を見せる。署員はすぐにそれが上原若菜だと言う事に気付いた。
「誰か生存者は?」
「崩壊してからは不明です。ただ救出されたと言う情報も入ってません。この状況では閉じ込められた者がいても救出するのはかなり困難かと。」
「かもね。」
今まで警視庁に入る前、一度上を見上げてから入館していた若菜。しかし目の前にはまるで上からゴジラに踏みつけられたかのように瓦礫の山が目の前にあるだけだ。いざ現場に来てみると残酷な光景が脳裏に焼きつく。

粉塵が舞い視界を遮る。ぼやけた視界の向こうにオレンジ色の炎と黒煙が見える。蒸し風呂のような暑さに額から汗が滲む。そして焦げ臭い匂いはガソリンの匂いに紛れ生物が焼けたかのような恐ろしい匂いが鼻につき吐き気も感じる。前方の瓦礫の中にはまるでマネキン人形のパーツのような物が幾つも転がっている。あっちにも、こっちにも、埃に塗れたどす黒い血痕とともに。今まで若菜は何人もの死の瞬間を体験してきたが、これはそれらの死とは全く種類の違う死であった。苦しい、そして悲しい、そして怖い。周囲には救出作業や人々の混乱する声で騒騒しかったが、若菜の耳には何も届かなかった。若菜は悲痛な叫び声すら出せない程にテロへの恐怖と憎しみに襲われたのであった。

「酷い…」
若菜の頬に一筋の涙がゆっくりと流れた。


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