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梟が乞うた夕闇
【鬼畜 官能小説】

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 その一言で満足するつもりだったのに、気がついたら抱いて欲しいと希っていた。一度だけでいい。処女のことは一切気にする必要はない。そんな旨のことをたどたどしく吐き捨てて陽介に抱きつくと、上背のある香菜子の下腹へ、硬くなっていく股間のモノが触れ、あまりの嬉しさに身を捩って擦り付けて硬みを味わい、唇にむしゃぶりついて同じ言葉を繰り返していた。
 好きな男に抱かれると、こんなにも濡らすものなのだ。唇のみならず頬にも首筋にもキスを降らせ、誰も侵入したことのない場所を慮りつつ、指が慎重に入口を広げてくる。痛みはない。体が髄から溶けてしまいそうだった。
「ふじ……。……、……よ、陽介……」
 いつものように苗字を呼び捨てにしようとして躊躇い、怯えて名前を呼ぶと、陽介は柔らかい仄笑を見せ、
「香菜子」
 同じく名前で応えられたから、開かれていく脚の間に彼が入り込んできても、香菜子は羞恥よりも喜悦が上回って、下肢の力を抜いて素直に応じていた。
「あうっ……!」
 初めてなのに花唇が熱を帯びて潤っていることを恥じていたが、灼熱の先端が門を小突いてきて慄いた。自分以上に熱く、初めて触れる亀頭は思いのほか大きかった。こんな物が自分の体に入るなど信じられない。
「よ、陽介……、……、……んっ、あぁっ!」
 避妊具を装着した気配はなかったが、更に両足を左右に広げられ、力が込められて圧が増してくると、香菜子はそれを指摘する気は忽ち失せ、それどころか最初で最後かもしれないのなら彼の温もりを直接体に受けたいと切に思った。
「あぅ、あぁっ!!」
 亀頭が入口をくぐると、息苦しさに口を開いた。ミチッ……不思議な感覚のあと、小刻みに前後する男茎が徐々に進んできて、下腹に裂痛をもたらし始めた。「陽介ぇっ……」
 痛いと叫ぶよりも、愛していると叫ぶ方が先だった。灼き籠手のような肉棒が進むごとに香菜子の体は内部から融け爛れていった。
 ――ブラウスの中はじっとりと汗ばんでいた。薄く開いた視界へサーチライトの強い光が射し込んでくる。
 夢は終わった。そもそも、あまりの僥倖に記憶が飛んでいるのだから、そのシーン以降を再現できず、続きを見ることはできない。こんなことならば愛欲に溺れず、もっと陽介とのセックスの思い出をしっかりと胸に刻んでおけばよかったな。そう名残を惜しむ香菜子につれなく、意識は現へと引き戻されていった。
 リクライニングされた大きなチェアに身を預けているが、くの字以上に体が折り畳まれていた。その窮屈さを呻くことで軽減しようとしたが、
「んぐ……」
 聞こえてきた声はとても自分のものとは思えない無様なものだった。
 両頬にピッタリと巻かれているベルトが前歯に噛まされた異物を吐き出させることを許さなかった。セシュターは香菜子の発話を阻害するだけではなく、口端から否応にも唾液を溢れ出させている。顎から喉を伝い、ブラウスの胸元へトロトロと流れ落ちていく滴が不快だったが、拭いたくても両手はしっかりと頭の後ろで拘束されていてビクともしない。
 腕だけではなかった。スカートが取り払われた下肢はM字に折り畳まれ、限界まで左右へ開かれた上に、膝にも括られた頑丈そうなベルトでしっかりと肘掛に固定されていた。その固さは股関節の力で何とかなるものではなかった。
 ちょうど陽介に正面から貫いてもらった時と同じようなポーズを強制されている。
(そっか、だからこんな夢を見たのかな)
 自嘲することで香菜子は意図的に冷静さを取り戻していった。
 まず自分の置かれている物理的な状況を把握することができた。由々しきはこの羞しい体勢ではない。身をガッチリと拘束され、轡をかまされている、救けを求める一切の行為ができない状況。それが一番深刻だ。
 もっとも、香菜子にはこんな窮地に陥ってしまった十分の心当たりがあった。だから次にするべきことは、これから取るべき行動の優先順位付けだ。自明ではあるが、最も優先すべきは何とかしてこの肉体の拘束を解き、更なる行動の幅を広げることだ。
(んっ……)
 しかし暑い。ブラウスの布地が蒸した背肌に密着し、鬢は頬に貼り付いて鬱陶しかった。
 正面から浴びせられているサーチライトの熱のせい? ……いや違う。部屋じゅうに蒸した空気が充満している。
「――やっと起きたか」
 聞こえてきた男の声に目を細めた。だが強い光の中で見えるのは黒いシルエットのみだった。
 一人、二人……。


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